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みなさん、こんばんは。首相長男と関わったばかりに東北新社は社長交代ですよ。やれやれ。
今日はサマセット・モームの小説の下巻を紹介します。

人間の絆　下巻
Of Human Bondage
サマセット・モーム
新潮文庫
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　上巻ラストでフィリップは、惚れていた女給ミルドレッドから「他の人と結婚する」と言われ奈落に突き落とされる。医学校に通っていたフィリップは担当した患者アセルニー一家に暖かく迎えられる。ところが彼の元から去ったはずのミルドレッドが再び彼の前に現れる。

　下巻の表紙はボタン、帽子、鋏、香水。全て女性＝ミルドレッドに関するものだ。本編のメインは上巻でも少し登場したミルドレッドとフィリップの別れてはまたくっつく悪縁ループ。他につきあっていた女性ノラがいたにもかかわらず、フィリップはミルドレッドを見捨てられない。

「おそらく彼女は、ミルドレッドとともにあるよりも、はるかに彼を幸福にしてくれる女に相違ない。要するに、彼女は、彼を愛しているのだが、ミルドレッドにいたっては、彼の援助を感謝している、ただそれだけにすぎないのだった。」

そうだ、そうなんだよフィリップ。そこまでわかってるならミルドレッドとは距離を取るべきだ！なのに

「だが、結局するところ、大事な点は、愛されるということよりは、愛するということなのだ。そして彼は、ほとんど心を傾けて、ミルドレッドを愛し求めているのだった。」

ああ、男版だめんずだ、これ。
そしてミルドレッドは、フィリップの健気な想いに応えてくれるような女性ではない。

「彼にしてみれば、彼女のためにいろいろしてやることが、そのまま嬉しいのであり、女の方ではまた、誰か他人が喜んでしてくれるらしいことは、何ひとつ、自ら手を下してしようなどとは、決してしなかった。」

　体のいいミツグ君扱いされていたフィリップは、またもや他の男に気を移した彼女に捨てられる。今度こそ目が覚めたフィリップはノラを訪ねるが、彼女は他の男性と結婚していた。

　もうこれで登場しないかと思いきや、再びミルドレッドは彼の前に現れる。さすがに恋愛感情が引いたフィリップは彼女と子供を住まわせるが決して手を出さない。すると今度はミルドレッドが他人にフィリップと自分は夫婦だと言いふらす。

　物語なのだから、さっさと勧善懲悪、因果応報の枠におさめてしまえばいいものの、ミルドレッドは何度も彼の前に現れる。自分の事しか考えないとんでもない女性ながら、ミルドレッドが魅力的なのも事実だ。どうしても彼女を振り払えないフィリップは、若い日のモームだったのかもしれない。

　この後大転落を経験したフィリップが達した「人生とは何ぞや？」の答えは山あり谷ありの人生を歩んできた者には一語一語が沁みるものとなろう。

2009年に英国ガーディアン紙が発表した、「英ガーディアン紙が選ぶ必読小説1000冊」選出。


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