映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさん、こんばんは。
『週刊少年サンデー』（小学館）で連載されていた漫画『うる星やつら』（作者：高橋留美子）が、2022年にフジテレビの深夜アニメ枠“ノイタミナ”でテレビアニメ化されることが決定したそうです。テレビアニメ放送は1986年3月以来、36年ぶりで懐かしいですね。

さて今日はパンデミック下で働く看護師たちの物語を紹介します。

星のせいにして
The pull of the stars
エマ・ドナヒュー
河出書房新社


新型コロナウイルスのパンデミックの影響下に置かれて2年が経つ。世論はロックダウン（都市封鎖）やワクチン接種など政府が推奨する対策を巡って湧いた。しかし世界の国家が正体不明の病気に悩まされたのはこれが初めてではない。新型コロナウイルスは第一次世界大戦末期のスペイン風邪とよく比較される。
　
　スペイン風邪と呼ばれるが、そもそもこの名称が間違っている。発症はアメリカだが、当時戦争中だったため病気も秘密にされた。公表した国の名前が偶々ついただけである。

　1918年、アイルランド・ダブリンも、スペイン風邪のパンデミックと世界大戦で疲弊しきっていた。薬より何より人と病床が足りず、栄養も足りていない妊婦と胎児の致死率は高い。かてて加えてスペイン風邪だ。街の病院に設けられた〈産科/発熱〉病室には、スペイン風邪に罹患した妊婦が隔離されていた。孤軍奮闘する看護師のジュリア・パワーのもとへやってきたのは、ボランティアのブライディ・スウィーニーと、テロリストと疑われる医師のキャスリーン・リン。彼女達の三日間に焦点を当てて物語は綴られた。

　このうち実在の人間はキャスリーン・リンのみで、まともな医師も彼女のみだ。手術となればベテラン看護師のジュリアよりも新任医師の意見が通ってしまうため、ある妊婦などは恥骨をのこぎりで真っ二つに切断する手術をやらされそうになる。また、ブライディ自身は架空の人物だが、彼女がいたことがある施設として名を挙げるマグダレン洗濯所は実在の場所で、映画「マグダレンの祈り」でも取り上げられている。

　全4章に分かれ、タイトルは【赤】【茶】【青】【黒】、スペイン風邪の重症度を表している。舌が真っ黒になったらもう助からない。交代制ではあるものの碌に休憩も取れない業務、手伝いに来るのは看護の事も何も知らない少女、言うことを聞かない患者。心身ともに疲弊するジュリアは家に帰っても休まらない。戦争後遺症で別人になって帰ってきた弟ティムと向き合って生きなければならないからだ。ああもう何もかも捨てて楽になりたい！と天に向かって叫びたくなるところだが、ジュリアは挫けない。正統派ヒロインでなく、偏見や見えていない所がある設定にしている点が良い。他の登場人物との出会いにより補完され、より弱い者への眼差し、愛おしみに突き動かされて、更に強くなっていく姿に、より読者が共感しやすいからだ。

　邦題＆原題の意味は、是非本書を読んでお確かめを。

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