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June 8, 2022
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みなさん、こんばんは。俳優のフレッド・ウォードが亡くなりましたね。今日から9日間シュテファン・ツヴァイク作品を紹介します。

聖伝 (ルリユール叢書)
Die Legende der dritten Taube :Die Augen des ewigen Bruders
(ルリユール叢書)
シュテファン・ツヴァイク/著
宇和川雄/訳 籠碧/訳

「永遠の兄の目Die Augen des ewigen Bruders」(籠碧 訳)はまるで中島敦の「名人伝」のような作品だ。「名人伝」は弓の名手が究極の名手を目指した所、弓すら忘れてしまい数多の名人たちをかえって驚嘆させる話だ。

 ビルヴァーガーの王が弟に背かれ、絶体絶命の危機に陥った。その時王は「刀剣の雷」と異名を持つ勇敢な戦士ヴィラ―タに助けを求める。劣勢の中ヴィラ―タは敵軍を蹴散らす。しかしある逆賊の顔を見てヴィラ―タは目の前が真っ暗になる。なんと兄だった。血を分けた兄を殺してしまったヴィラ―タは、軍人を止めたいと王に願い出る。ならば人を斬らない職業にと王が勧めたのは裁判官だった。裁判官として優秀だったヴィラ―タは「正義の源泉」と呼ばれ一度も誤った判決を下したことがなかった。ところがヴィラ―タはある被告から
あんたは他人の言葉から、どうやって真実を知ろうっていうんだ?

と言われ、自分の判断に疑いを持ち始める。死刑判決で人の命を奪う事の出来る職業もまたヴィラ―タは辞退し、家族と離れ隠者として暮らす。ところが彼を慕ってやってくる人が後を絶たず「孤独の星」と呼ばれたヴィラ―タが選んだのは…。

 解説者が「ポジションの移動があるたびかっこいい異名を手に入れている」と称するヴィラ―タは、つまりは何をやっても優秀なのである。だから人の注目を集め、影響力も大きい。彼の行為の中には、意図したわけでなくても悪い結果をもたらす事もある。そもそも社会で生きている限り、誰にも影響を与えず生きていくことはできない。それなのに「一切の悪と関わりたくない、一切の悪事を為したくない」と願うならば究極の方法は何もしない=無為と同義である。最初は謙遜だと思い、忠臣ヴィラ―タの願いを聞いていた王が、途中で態度を変えたのは、ヴィラ―タを傲慢だと感じたのではないか。一切の悪を引き受けずに、社会生活を営むというなら、汚れ役は他の誰かが引き受ける事になる。

「第三の鳩の伝説Die Legende der dritten Taube」(籠碧 訳)は聖書に登場する第三の鳩が主人公だ。え、そんなのいた?と思う人はノアの箱舟を読み返すべし。ノアは三回鳩を飛ばしている。一度目は鴉と一緒に飛ばして鳩だけが戻ってきたので「地上がまだなく、鳩が降り立つ場所がなかった」とノアが考える二度目は鳩がオリーブの葉を口に咥えて戻ってきたので大洪水が終わった事を知る。そして三度目に飛ばした鳩が戻ってこなかったことで、ようやくノアは上陸を決断する。三度目の鳩は大洪水を経て浄化された地に住むはずが、途中で争いが起こり、今度は安住の地を失ってしまう。第一次大戦中は反戦活動を行い、第二次大戦中はロンドンへの亡命を皮切りに世界を巡り、妻と共に自殺したツヴァイクは、つまりはオリーヴの葉を置き損ねた第三の鳩である。

 さて、二つ哀しい話が続いた後の残りの二つは希望がキーワードだ。「バベルの塔Der Turm zu Babel」(宇和川雄訳)は、こちらも有名な、神が起こって人間の作った塔を壊したら皆ばらばらの言葉を話し始めた塔の事だ。ストーリーはそのままだが、いつか再びバベルの塔が築かれることを期待して終わる。

 「埋められた燭台Der begrabene Leuchter」(宇和川雄 訳)本編のいわゆる聖伝=聖人伝説の聖人たちは、少しも幸せになっていないが、本編の主人公ベンヤミンもその一人だ。ローマ人の侵攻によって居場所を失ったユダヤ人たちのもとに、聖燭台=メノラーが奪われた知らせが届く。メノラー奪還を目指す長老たちの旅に同行した当時7歳のベンヤミンは、燭台に手を伸ばした時に混乱した民衆に巻き込まれ腕を折ってしまう。その後結婚し家族も増えるがベンヤミンは“最後にメノラーに触った人”として注目を集め、奪還する者として期待される。やがて絶好の機会がやってくるが。偶々何もわからない子供の時にメノラーの証人として呼ばれただけのベンヤミンが、一度の出会いによってその後の人生を支配されてしまう様は選ばれし者の宿命であり、他方から見れば悲劇でもある。しかしメノラーが現世の誰かに所有される形にならなかったことで「いつか誰かによって世に出る」という希望が残る終わり方になっている。

 ところで貴方、聖人になってみたい?


聖伝 / 原タイトル:Die Legende der dritten Taube 原タイトル:Die Augen des ewigen Brudersほか[本/雑誌] (ルリユール叢書) / シュテファン・ツヴァイク/著 宇和川雄/訳 籠碧/訳​​ネオウィング 楽天市場店






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最終更新日  June 8, 2022 12:00:23 AM
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