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みなさん、こんばんは。俳優のフレッド・ウォードが亡くなりましたね。今日もシュテファン・ツヴァイク作品を紹介します。
メリー・スチュアート Maria Stuart シュテファン・ツヴァイク みすず書房 エリザベス女王が姉の死によってやっと女王になれたのとは対照的に、メリー・スチュアートは生後6日でスコットランドの女王となる。ラッキー!と言いたいところだが、メリーの生涯を俯瞰すると、まるでいいカードを最初に全部切ってしまったようなものだ。 父ジェームズ五世は31歳で戦争に敗れ臨終の床にあった時に予言めいた言葉を遺している。 「一人の女性から王冠がわれわれの頭上に来た。一人の女性とともに、この王冠は去っていくのだろう」 エリザベスにはウォルシンガム、セシル、レスターなどの家臣がいた。ではメリーを取り巻く貴族達はどうだったのか。フランス大使によれば 「金銭と利得とがスコットランド貴族の耳をそばただせるただ一つの魔女の声なのです。彼らに彼らの主君たちに対する義務、名誉、正義、徳、気高い行為といったものを説いたりすれば、彼らはきっと吹きだすことでしょう」 というとんでもない輩である。 「あるときは彼らは、数年のあいだ徒党を組んで反目し合い、あるときは団結して第三者にたち向かうために、もったいぶった証書で、つかのまの誠実を誓いあい、つねに彼らは一味徒党を組むが、内心ではだれがだれの味方というわけでもなく、たとえどんな姻戚関係があろうと、各人は他人を仮借なくそねみ、敵視することに変わりはない。異教的で野蛮なものが、彼らのあらあらしい魂のなかでそっくりそのまま生きのびている」 仲間同士でもまとまっていない。ならば簡単に倒せるかと思いきや 「スコットランド王がひとたび、支配者となって法律と秩序とをこの国に強制することを実際に断行しようとすれば、彼が血気にまかせて貴族たちの高慢さと強奪欲とに対抗しようと試みようものならば!そうすればたちまち、いつもは敵意を持ち合っているこのならずものどもが、兄弟のように団結し、彼らの支配者を無力にしようとする。そして、剣で成功しないときには、暗殺者の短刀が確実にこの務めを果たすのである。」 というどうにも読めないアウトレイジの集団なのだ。とてもじゃないが、エリザベスの下なら一枚岩になれるイングランドとは戦えない。 フランスの女王からあっという間に未亡人、そしてスコットランドへの帰還と、良いカードを使い果たしながらメリーは終焉の地に向かってゆく。 「スコットランドのために生き、かつ、死んだのではなくて、ただひたすらにスコットランド女王でありつづけようとして生き、かつ、死んだ」 メリーと、土台が盤石でなかった故に ただひたすらにイングランド女王でありつづけようとするために、イングランドのために生き、かつ、死んだエリザベス。ツヴァイクは、エリザベスのみをよき為政者とするのではなく、メリーの美点を挙げつつ、そもそもの出発点の違いが二人の運命を分けたと断じている。 メリ-・スチュア-ト 下巻 /新潮社/シュテファン・ツヴァイク/シュテファン・ツヴァイク、高橋禎二/新潮文庫【中古】afbブックスエーツー商品センター お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
June 9, 2022 12:00:22 AM
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