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みなさんこんばんは。ノーベル賞作家の大江健三郎さんが亡くなりましたね。今日もドストエフスキー作品を紹介します。

白痴 3
フョードル・ミハイロヴィチ ドストエフスキー
亀山 郁夫訳
光文社古典新訳文庫

無邪気な公爵(聖なる愚者とも言う)の言葉から、アグラーヤが彼を好きだと察知したさすが母親エリザヴェータ夫人が「エパンチン家に帰りましょう！」と彼を連れ帰る…といういい引きだったのに、なぜか本巻冒頭は
「わが国には実務的な人間がいない、という嘆きがしきりに聞こえてくる。たとえば政治家と呼ばれる人々はたくさんいるし、将軍と名の付く人々も同じくたくさんいる。支配人といわれる人間なら、どれほど需要があろうと、たちどころに好きな数だけ探しあてられる。ところが、実務的な人間がいない。少なくとも、そういう人材の欠落を、だれもが嘆いているのである。」

ロシアの公務員使えない！論が展開される。
「わが国の乳母たちにおいてさえ、将軍の地位はロシア人にとって究極の幸せと思われており、それゆえ、平安ですばらしく幸福な人生の、きわめてわかりやすい国民的理想なのだった。そして事実、中程度の成績で試験をパスし、三十年間も勤めあげれば、最後はだれしもが将軍となり、そこそこの金を銀行に貯めることができるのである。こうしてロシア人は、ほとんど努力らしい努力もせずに、最後は、事務的かつ実務的な人間という称号を得てきた。じっさい、わが国において将軍になり上がれなかった人物というのは、オリジナルな人間、別の言い方をすれば、穏やかならざる人間だけである。」

　この後公爵はエパンチン家の面々とコンサートに出かけるが、ナスターシヤと再会。ナスターシヤはアグラーヤにプロポーズしていたラドムスキーの伯父に対して思わせぶりな事をいって、またもや通りすがりに去る。こんなんばっかり。ナスターシヤあなた大事にされてないヒロインだってもっと抗議した方がいいよ。

　通常ラブストーリーなら
ロゴ―ジン→ナスターシヤ（多分相愛）ムイシキン公爵
の間でどろどろの愛憎劇が繰り広げられるのに、本作は公爵のあまりの善人っぷりにヒロイン・ナスターシヤが「こんな善人を私と結婚して不幸にしてはいけない！」と引く。若い勢いで駆け落ちを持ちかけられるアグラーヤと逆ならよかったのに。巷で言われているような悪女ではなかったナスターシヤの善意を、これまた片思い中のロゴ―ジンだけが理解して、理解しないムイシキンと二人の関係によけいにイラつく悪循環。あれ、もしかして月9？実際のぶつかりあいがないのに恋愛模様がもつれていく。そこに自殺したくて告白までした結核のイポリートの自殺未遂、レベージェフの「金なくなった！」騒ぎ(それほんとどうでもええわ！)とかサブプロットが絡んでいく。

2009年に英国ガーディアン紙が発表した、「英ガーディアン紙が選ぶ必読小説1000冊」選出。

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