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みなさんこんばんは。建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞を受賞した建築家、磯崎新さんが亡くなりましたね。今日から4日間探検記を紹介します。今日はエベレスト北壁登頂に成功したハインリッヒ・ハラ―の探検記を紹介します。
石器時代への旅 (世界探検全集) Ich Komme aus der Steinzeit ハインリヒ・ハラー 河出書房新社 「私は文明を見すて、西暦一九六二年から飛び出して、いわば紀元前三万年、ないし五万年に求められる時代に舞い戻って、さ迷い歩き、そしていま、ふたたび立ち帰ったのである。」 こう書いたからと言って、筆者がタイムスリップしてきたわけではない。本書はSF小説ではないのだ。タイトルに銘打っているように“探検”の物語である。書き手はハインリッヒ・ハラ―。登山に興味がない人でも、アイガー北壁初登攀を成し遂げた人物として、或いは『セブン・イヤーズ・イン・チベット』でブラピが演じた人物として知っているかもしれない。冒険家は、いわゆる記録を取るだけで、文章はあまりうまくないのかと思っていたら、刻々と変わる気象や出来事について克明に描かれていた。 名だたる不可能を可能にしてきたハラ―が目指したのは「赤道直下にある氷の峰-カルスステンツ・ピラミッド登頂」「現在も石斧を使っているパプア族の秘密の場所をつきとめる」「北部ホーランディアからニューギニアを南北に縦断して南岸メラウケに出る」の三つである。いずれか一つ成功するのも難しいのに、やってのけてしまうのは、彼の能力ももちろんだが、ついてまわる運も必ずあったに違いない。 というのは、こういう探検行には地元民の協力が欠かせない。ハラ―が協力を要請したのは比較的温和と言われるダニ族だが、ダニ族とアスマット族の研究を行っていたアメリカ人の有名人-マイケル・ロックフェラー(ロックフェラー財閥の一員)-が、消息を絶った事件がちょうど同時期である。本書にもロックフェラーについて第二章で言及され、「落命した」「死んだ」とさらっと書かれている。第三章で宣教師から詳細を聞いたらしいが内容は書かれていない。手記があらかじめ第三者に公開することを想定して書いたからだろう。本文には食人族がいることも書かれているが、直接ロックフェラーの死と結びつけると、何かと差しさわりがあったため、ハラ―が、そうした記述に留まらざるを得ないことは想像に難くない。現在に至るまでの大方の彼の辿った運命は『人喰い―ロックフェラー失踪事件』に書かれた通りであろう。選択を間違えれば、ハラ―もそうなっていたかもしれない。未知の世界に行く探検は、これまでの常識が通用しない世界に行くことだ。常識を押し通したいならば冒険などできない。「金の代わりに子安貝を渡して働いてもらえるからラッキー」くらいの常識の違いなら可愛いものだが、根幹の考え方が違っていた場合、自分が獲物としてロックオンされる危険性もある。 また、ハラ―はこの探検行で滝から落ち重症を負っている。すると怪我=悪霊たちの仕業だと信じたダニ族がポーターを拒否する事態に。それを迷信と無碍に退けていては、こうした場所への探検は成り立たない。探検家にはコミュニケーション力が欠かせない。 「探検家の唯一の財産は、何かを成し遂げると共に、必ず無事に戻ってくることだ。しかし 私は、他人の落ち穂を拾うより、まず第一に自分の体験を選びたいと思う。この体験ということも、多くの場合、次のようなものである。つまり、人はあることを企てるが、それに到達したときには、それが終極の目的ではなく、どうしても通らなければならない途中駅にすぎなかったことがわかり、さらにそこから、次の、長いあいだ隠されていた新しい目的にむかって出発する。」 冒険を終えても、すぐ次の冒険を目標に据えてしまうようなハラ―にとっては、“戻る”ままにしておくことがなかなか難しいだろう。 石器時代への旅 (世界探検全集) [ ハインリヒ・ハラー ]楽天ブックス お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
April 21, 2023 08:41:00 PM
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