映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさんこんばんは。フランス南部で開催されていた第76回カンヌ国際映画祭の授賞式が２７日夜（日本時間２８日未明）開かれ、ビム・ベンダース監督の「パーフェクトデイズ」で主演した役所広司さん（67）が男優賞に輝きました。是枝裕和監督の「怪物」の坂元裕二さん（56）も脚本賞を受賞しました。すごいですね。辛い過去を克服するためエベレスト登頂を目指した女性のノンフィクションを紹介します。


夜明けまえ、山の影で　エベレストに挑んだシスターフッドの物語
In The Shqdow　Of The Mountain
シルヴィア・ヴァスケス=ラヴァド
双葉社

性暴力は人と場所と時代を択ばない。今回の著者はペルー生まれだ。ペルーというと『コンドルは飛んでいく』のイメージが強い。暮らしているのはインディオ、ナスカの地上絵、マチュピチュ、クスコなど観光地が沢山ある。

　性的虐待は被害者が声をあげにくい。成人であってもそうなのに、幼少期の、まだ性を知らないうちにいたずらされていた時の記憶がずっと積み重なっている女性の場合はもっと難しい。大人が「秘密にしておきなさい」と言うのだから、子供は従う。やがて思春期になってどうして秘密にしておかなければならないかわかった時にはもう遅い。著者の場合は、両親の曖昧な言動が性的虐待を助長させた。加害者は父親が雇った使用人で、母親は自分と同じ貧しい生まれのその男性を「信頼できる人」と言っていた。母親には他に見るべき小さい子供がいて、著者の様子が変わったことに気づけておらず、自身も夫からDVを受けていた。

　悩み苦しみは吐き出すことですっきりするが、性被害はたいがい家族に信じてもらえない。著者の場合も同様だった。苦しみから抜け出す方法として著者が選んだのは、同じ性暴力サバイバーの女性たちとエベレストを歩く旅だった。エベレストは別名チョモランマとも言う。チョモランマは母の意だ。実際の母親には抱きしめてもらえなかった女性達は、物言わぬ母に抱きしめてもらうことを願ったのだろうか。いや、抱擁というより、登頂記を読むと、やはり挑戦の意味合いが強い。自身の精神を到底適いそうにない存在にぶつけにいった印象を持った。

​
夜明けまえ、山の影で　エベレストに挑んだシスターフッドの物語 [ シルヴィア・ヴァスケス=ラヴァド ]​​楽天ブックス​