映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさんこんばんは。藤井聡太六冠(竜王・王位・叡王・棋王・王将・棋聖)が渡辺名人に勝利し、20歳10カ月の史上最年少で名人奪取。七冠も羽生善治九段に続き史上2人目だそうです。すごいですね。
YA小説を紹介します。

彼女のためにぼくができること (YA Step!)​
Stayng Fat for Sarah Byrnes
クリス・クラッチャー
あかね書房


海外小説紹介小冊子BOOKMARKが20号で一旦終了とのことです。多くの海外小説を紹介頂きありがとうございました。本作は1号で紹介されていました。

　原題がStayng Fat for Sarah Byrnes＝「サラ・バーンズのためにボクはデブでいる」なのでどう訳すのかなぁと思っていたら、物語の意図をうまく汲んだ訳になっていた。確かに彼女のためにできることをやろうとエディが奮闘する物語である。

　幼少時代から太っていることをからかわれ続けて、何を考えているかわからないキャラをまとうことで自分を守ってきたエリック・カルフーンは、3歳の時に顔と手に大やけどを負いながら、支配欲に凝り固まった父親のせいでろくな手術も治療も受けさせてもらえなかったサラ・バーンズと大親友。お互い子供達の社会でOutcast＝はぐれ者だったのだ。ところがエリックが水泳部のコーチであるレムリー先生に才能を見出された事から体もスリムになり、普通の高校生活を送れるようになってくると、クラスメイトにも受け入れられるようになる。しかしサラ・バーンズとの距離が開くことを怖れたエリックは、どか食いをして太った体形を維持しようとする。これが原題の謂れとなる。

　エリックが無理な努力をしてまで守ろうとするサラは、さて守らなければいけないようなか弱い女の子かというと、手を差し伸べそうなら、その手をぴしゃりとはたかれそうだ。性格がきついというより、誰も信じられず長い間過ごしてきたらそうなる。映画『万引き家族』のように、家族が最大の敵となった場合、子供達はどうすればよいのだろうか。

　高校でディベートクラスを担当する教師シンシア・レムリー先生がフラットで行動力もあってとにかくステキな大人の代表格である。中絶や宗教といったデリケートなテーマで紛糾する教室を冷静なかじ取りで仕切り、嫌われ者だからといって話し合いから排除しない。事なかれ主義の副校長モーツにはそりゃ睨まれるだろう。エリックの母親の恋人カーヴァ―・ミドルトンは、一件女性にまめな優しい男に見えるが、実は壮絶な過去を背負っていて、命の危機にさらされたエリックに思いがけない手を差し伸べる。エリックの親友スティーヴの父親ジョン・エラビーは、女性の聖職者就任を擁護するリベラル派で、息子を何かと目の敵にする副校長とも堂々渡り合ってくれる。同じ大人の前だからとごまかしたりしない。

　典型的な子供が嫌う偽善者の大人達も登場するが、反対に誠実に向き合おうとする大人達のキャラクターもバランスよく配置されている。



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