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カテゴリ:海外の絵本・童話・児童書・ティーンズ小説
みなさんこんばんは。横浜市のみなとみらい地区に音楽専用の大規模なアリーナ「Kアリーナ横浜」が新たに完成しました。今日から3日間ヤングケアラーを扱った作品を紹介します。
アンナは、いつか蝶のように羽ばたく The Surprising Power of A Good Dumpling ウェイ・チム アストラハウス 16歳のアンナは、今日もベッドから起きてこない母親のかわりに13歳の妹と5歳の弟の面倒をみている。父親は自身が経営する中華料理店にかかりきりで母親を顧みることはない。 本書は二重の意味で珍しい。まず、中国人が主役のYA小説というのが想像できなかった。更に、ヤングケアラーを主人公に据えているのも初めてだった。というより、世界で金持ち第二位の国なんだから、お手伝いさんでも何でも雇えるのでは?と最初に思った。しかし本編の舞台は中国本土ではなかった。アンナの家族はオーストラリアに移住したのだ。 普通ヤングケアラーとは、他に面倒を見る大人がいない時に、子供が保護者の世話をするものだが、アンナには父がいる。しかし、中国を出て外国で店を営む父には、経営者として山ほど悩まなければならない事があった。本編では、アンナが相談しようとすると父が機先を制して彼女に用事を頼んだり、病院で「こんな事は何でもない事なんだ」と言い張ったりする場面が描かれ、両親と言えど、大人を決して善人ばかりにはしていない。 ウェイ・チムは中国からの移民の人々と話した際に、精神疾患を不名誉・恥と捉える文化の相違を知って本作を思いついた。中国に限らず、アジアコミュニティでは、精神疾患の話題はタブーとされてきた。少し前の日本でも同様の捉え方をしていたはずだ。座敷牢のような所に入れられ、家族親戚には、いない者とされていた。 平成の世でも同じだった。知り合いに二人精神疾患がいて、一人は通院を続けながら一人暮らししているが、もう一人は父親が亡くなるまで家に閉じ込められていた(親は守っていたというが)ため、治療が遅れ、もう病院から出られない。本編でも父親が必死に妻は何でもないと力説する件があった。愛情自体を否定するつもりはないが、当事者が意見を言えないならば、やはり治療は早めに行うべきである。 勉強も卒業後の人生も、考える事がいっぱいで、本当なら将来について思いを馳せ、楽しくて仕方がないはずなのに、アンナは友達と遊びに行く事も出来ない。母親が嫌がるためにバイトもできない。家という牢獄に閉じ込められているようなものだ。妹はだいぶわかっているが、弟はまだ母親の突然の変化を受け入れることができず、その仲立ちもしなくてはならない。本来第三者に助けを求める段階にきているが、海外にいてさえ上記の“恥の文化”が邪魔をする。 恋愛要素も交えつつ、家族も父の仕事も大好きなアンナが、失敗しながら精神疾患の母や家族とどう向き合っていくかを学んでゆく過程を描く。時に乗り越えるのが難しい感情に囚われることがあっても、助けの手を差し伸べてくれる人達がいる。精神疾患が一朝一夕で“治る”ものではないだけに、王道のハッピーエンドにはならないが、いつか最初と最後のモノローグに登場する人の言葉が、しかるべき人たちに届くことを信じてやまない。 アンナは、いつか 蝶のように羽ばたく [ ウェイ・チム ]楽天ブックス お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
October 28, 2023 12:00:24 AM
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