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July 17, 2024
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みなさんこんばんは。 アメリカ大統領選挙に向けた共和党大会が開幕し、トランプ前大統領が銃撃事件以来初めて、公の場に姿を現しました。トランプ氏は正式に大統領候補に指名されました。今日は実際に湖の底に沈んだ村をモチーフに書かれた小説を紹介します。

この村にとどまる​
Resto Qui
新潮クレスト・ブックス
マルコ・バルツァーノ

表紙の写真は、観光地の写真にしては、少し変わっている。どう見ても湖の真ん中に教会の鐘楼が―それも半分だけあり、そこに行くためには、船に乗らなければならない。そして、おそらく鐘楼の下半分は水底なので見に行けない。観光資源としては、中途半端である。

 それでもこの建物が残る意義はある。かつてその教会に通った人たちがいて、暮らしていたことを、決して忘れないために
 
 小説は、湖の底に沈んだクロン村に住んだトリーナという女性が書いた書簡体の形をとった作品である。書簡というのだから宛先はあるが、決して相手に届けられることがない。従って読むこともない。その点を分かった上で書かれているため、トリーナの内面吐露の要素が強い。そして、クロン村が沈むまでの人々の静かなる闘いの記録でもある。

 北イタリアチロル地方は、もともとオーストリア=ハンガリー二重帝国領だったため、住民の大半はドイツ語を話していた。しかしムッソリーニの台頭によりイタリア語を強制され、ヒトラーの移住政策によって村は分断された。日本からすれば、日独伊三国同盟などと歴史の授業で習っているため、同盟国側でなぜ対立するのか?どちらも喋ればいいじゃないかと訝る。しかし、そう簡単なものではないらしい。

 イタリアの諸地域から、イタリア語話者を移住させる計画が立ち上がる。母語を愛し、言葉の力を信じるトリーナは、地下で子どもたちにドイツ語を教えていた。ヒトラーの介入により、ドイツ国の領土への移住か、とどまってイタリアに同化するかの選択を迫られる。イタリアかドイツかの選択を迫られ、村が分断された。この辺りは、基地問題で分断される沖縄を彷彿とさせる。そしてトリーナ自身も思いがけない別れを経験する。

 本編は
「あなたは何も知りません。けれども私の娘なのだから、知っていることもいろいろあるでしょう。」

で始まる。手紙の相手は、生き別れた娘マリカだ。なぜ生き別れることになったのか。
「いいえ、あなたには、私たちがすごしたあの闇のなかの日々を知る資格はありません。私たちがいったいどれほどあなたの名前を叫んだかも、自分たちがこれまでしてきたことは間違いだったのだと幾度となく思い知らされてきたことも、知る資格はない。」
のように、最愛の娘なのに、どこか突き放したような口調なのはなぜか。次第に二つの理由が明らかになってゆく。

 村人たちに更に苦難がふりかかる。ダム建設は最初、元の湖より五メートル水位が上昇するだけの計画だった。ところが、二転三転するうちに、水位上昇が二十一メートルと変更された。国からの一方的な通告で、反対する者は残り、語る場所がなくなれば、いつかそこに村があったことすら、忘れ去られてしまう。それは自分の歴史の一部がなくなるのと同じことだ。だからトリーナは言葉を残すことを選ぶ。
「事実にしろ、物語にしろ、空想にしろ、大切なのは言葉を渇望し、人生が複雑に入り組んだとき、あるいは逆に空っぽになったときのために、しっかりと身につけておくこと。言葉こそが私を救ってくれるのだと信じていました。」

そして前へと進む。
「母が言っていたように、私たちに許されているのは前に進むことだけ。だから私たちお眼は前についている。でなければ神は、眼を両脇につけたことでしょう。魚のように。」

 数々の涙と苦しみを後ろに置いて、でも、決してなかったことにせずに。

 イタリア文学の最高峰、ストレーガ賞候補作。


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最終更新日  July 17, 2024 06:09:22 AM
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