ファーレ立川アート作品の第66回目掲載です。
引用文に詳しいことが書いてあるが、最初この文章を読んだ時に即座に浮かんだのが、メキシコ・ククルカンのピラミッドの降臨現象と考えられている"踊るヘビ(大蛇)"。日本でも何度かテレビ放映されたのでご記憶の方も多いだろう。
秋分の日の前後になるとククルカンのピラミッドの北側の階段側面では古代マヤの人々が作った仕掛けが現れるらしい。太陽の光が差し込むと、ピラミッドの段の陰が階段側面の壁に映り、まるで羽毛の生えたヘビのように見えるというのだ。マヤの人々にとってヘビは最も重要な神であるとされ、その神が階段をあがっていくという神聖な現象を自然の摂理を利用してうまく築きあげた仕掛けで一種の光りのいたずらといっていいかもしれない。
個人的には、このように主義主張を永続的に表現する手法・仕掛け・いたずらの所作には面白みを感じてしまうので、ぜい一度夏至の火の正午に見てみたいものだと思う。年に一度しか見られないとか、季節限定の仕掛けには叡智が結集されているので、密かに思いを馳せるのも一興かも。
以下全文引用
コアシティ立川の南東の角の歩道上に、石でできた車止めがあります。車止めの上部は斜めに切り落とされており、そこに鏡面仕上されたステンレスの銘板が貼られています。銘板には、見慣れぬ文字でなにやら言葉が刻まれています。
ここで、後を振り向いてみてください。コアシティ立川の建物に、日本語で「私は太陽を待つ」と書かれたステンレスの銘板が取付けられていることに気づくはずです。
このふたつの銘板は、カナダのレベッカ・ベルモアさんの作品です。ベルモアさんの先祖はフランス人なので、ベルモアさんはフランス系カナダ人としての教育を受けてきました。しかし、ベルモアさんのおじいさんとおばあさんにはカナダの先住民・オジブワ族アニシナベの人がいます。中でもおばあさんはカナダの近代化をかたくなにこばみ続け、アニシナベ語だけを話すため、カナダ人として教育を受け英語とフランス語を話すベルモアさんと言葉が通じません。ベルモアさんは、このような事態から、自分の民族的背景であるアニシナベの文化的要素を表現に取り入れたアート活動をはじめました。
ファーレ立川の作品は、夏至の日の正午になると車止めに取付けられた銘板が太陽光線を反射し、ビルに取付けられた銘板を照らすようになっています。車止めには、アニシナベの文字で「私は太陽を待つ」という言葉が書かれています。ふたつの世界が、夏至の日の太陽という自然現象を通してひびき合っています。この異なった世界がひびき合うというコンセプトは、ファーレ立川のアート計画全体とも共通しています。
〈一人の人間として、私たちは絶えず他者を理解しようと努力している。一つの考えについて個々人の間にはっきりした相互理解が生まれる時、それは輝ける瞬間だ〉。
これが作品のコンセプトである。 レベッカ・ベルモア 作者コメントより
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