ライブドア、ニッポン放送、フジテレビ(9)
新たな動きが出ました。ニッポン放送がフジテレビに新株引受権を発行することにより、フジテレビがニッポン放送を子会社化(するかも)このニュースの解説ですよね?ハイ、わかりました。以下、どうぞ!あ、一連のライブドアの件で24日朝8時の日テレ「情報ツウ」に出演させていただくことになりました。お暇な方はどうぞ~。今回の件、簡単に言うと、「フジテレビによるライブドアに対する脅し、ユスリみたいなものです」新株予約権とは、将来、株式を購入することができる権利(オプション)です。今回のスキームは- フジテレビはニッポン放送株式1株を5,950円で買う権利を購入できる- オプションを全部行使すると、フジテレビは最大でニッポン放送株式4,720万株を購入できる- このオプションを購入するために、フジテレビはニッポン放送に対して156億円を支払うどういうことかというと、現在の発行済み株式数は3,280万株です。堀江氏はこの半分、約1,640万株を買い取ることで、ニッポン放送株式の51%を取得し、連結子会社にしようとしています。現在堀江氏は約1,300万株程度を既に買取済なので、あと数百万株で目的達成です。しかし、今回のニッポン放送-フジテレビのスキームが実現すると、発行済み株式数が最大で3,280万株+4,720万株=8,000万株になるわけです。すると、例え堀江氏が1,640株を購入したとしても、瞬間的に51%を保有できたとしても、最終的には1,640万株÷8,000万株=20.5%にしかならないのです。つまり連結子会社にできなくなります。なお、このスキームは本日のニッポン放送取締役会では決議されましたが、フジテレビがそのオプションを購入するかどうかの決定は3月2日以降、つまり、現在進行中のニッポン放送に対する公開買付が終了し、その結果を見てから行うのです。つまり、ライブドアがフジテレビの公開買付に応じてきた場合は今回のスキームは実行しない、一方で、ライブドアが公開買付に応じてきた場合は、今回のスキームを実行します、と言っています。つまり、フジテレビは「ライブドアさん、ニッポン放送株式の買付を進めるのは全然結構ですよ。ただし、最終的には我々がオプションを行使するとあなたの持分は20.5%にしかなりませんよ。それでも買付進めますか?20.5%なんて中途半端な持分だと何の意味もないので、今回のフジテレビが実施している公開買付に応募してしまいなさいよ」と言っている訳です。確かに800億円を投資して、最終的には20.5%しか保有できず、事業シナジーも創出できないとライブドアは非常に困ります。それであれば800億円を別の投資に使うでしょう。ライブドアがそういう苦しい状況になるだろう、という予想のもと今回フジテレビはこの奇策を用いたわけです。で、困ったライブドアが公開買付に応じてくれればバンザイです。フジテレビの公開買付価格は5,950円です。ライブドアは一株6,050円以上で買っているので、ライブドアを困らせて、しかも損をさせてライブドアの持分を買い取ろう、というのがフジテレビの目算です。したたかですね。さて、今回の件、違法行為だ!という声も上がっていますが、合法か違法か、と言う意味では「新株引受権を発行する」ということ事態は合法です。ただし、その目的が「経営権取得のため」だけである場合は、違法とされる可能性もあります。既存のニッポン放送株主から見た場合、株主価値を無視したスキームで、コーポレートガバナンスが完全に欠如しています。どういうことかといいますと取締役は株主価値を最大化するために「株主に雇われて」いるのです。その取締役が株主価値を無視した行為をすることはコーポレートガバナンスの崩壊につながります。したがって、「株主価値を著しく棄損した」という理由でライブドアはニッポン放送・フジテレビを訴えることができます。いわゆる株主代表訴訟です。堀江氏が勝つ可能性、十分にあると思います。流れを追って説明すると、- 新株引受権の発行は取締役会だけで決定できる(株主総会を開かなくて良い)- 株主総会を開かなくていいので、堀江氏40%もの持分を持っていながら拒否権を発動できない- 一方、取締役会というのは株主価値の最大化を目指す機関であるので、40%もの持分を有する株主の意向に反する決議をするのはコーポレートガバナンスの観点からは非常によくない- つまり、今回の新株引受権の発行を決議したニッポン放送の取締役の皆様は、ご自身の保身のために今回の防衛作を取ったと言われても反論の予知が薄い- しかもニッポン放送は取締役が26人もいるので、自分たちの保身のためである可能性は低くない- それはつまり、ニッポン放送取締役による、ニッポン放送という会社を私物化することにつながるため、株主にとっては不利となる- 株主にとって不利となる行為をする取締役会を株主は訴えてもおかしくないまたフジテレビのやり方ですが、ニッポン放送を買収したいのならば正々堂々とライブドアとオークションを行って戦うべきですね。つまり、今の5,950円では必要株数を買収できないと思うならば、その価格を引き上げ、誰の目にも明らかに「フジの条件の方がライブドアの条件よりもいいので、フジテレビに株を売ります」と既存のニッポン放送株主に思わせればいいのです。では、どうしてフジテレビはそれを行わずに、新株引受権の買取に158億円も支払うのか。これは「ライブドアには一文たりとも儲けさせない」という強い思いがフジにあるからですね。例えば、普通にオークションを行って、フジテレビがライブドアよりも高い価格(たとえば6,550円)でニッポン放送を競り落としたとしましょう。で、それにライブドアも応じてきて、ライブドア保有のニッポン放送株式を売却したとします。すると、フジテレビはニッポン放送株式の50%以上を保有できますが、一方でライブドアは一株あたり500円儲けることができます。つまり約50億円の儲けです。この儲けはフジテレビにとって、とにかくシャクに触るのです。ので、市場で買い付ける価格を引き上げて、ライブドアに儲けさせるよりは、158億円をグループ会社であるニッポン放送に支払って、買付価格を5,950円にしたままでニッポン放送を買収しようという作戦です。よくできたスキームですが、これがもし可能となるならば、日本の株式市場、何でもありになってしまいますね。コーポレートガバナンスが完全に欠如します。執行役員制度の導入など、ここ数年日本の市場はコーポレートガバナンスの導入に躍起になっていました。もし、今回のフジテレビの件が認められると日本市場、日本企業は5年~10年ぐらい逆戻りしてしまいますね。また、新株引受権の行使によって新たに発行できる株式数は4,720万株、今の発行済み株式数が3,280万株ですが、これは以上です。上場企業ではありえないです。通常は新株引受権によって発行される株式数は、発行済み株式数の最大10~20%程度におさえるのがセオリーです。やはりやりすぎですかね。。長くなりましたが、今日のニュースの概要です。普通に公開買付価格でオークションをすべきだったと思いますがね。。。何かご質問があればいつでもどうぞ~