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碁法の谷の庵にて

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2018年05月22日
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というわけで,風の精ルーラとしての特権?を用いて「地の精」「水の精」「火の精」に来ていただき,座談会方式で殺到型不法行為に関してあれこれと考えてみたことを開陳します。

風の精・・・私。なのになぜか若い女性風。思考開示役。CV.野水伊織。
水の精・・・しっとりした女性の声。議事進行役。水入りをさせる役。CV.川澄綾子。
地の精・・・落ち着いているが胡散臭いおっさん声で知識提示役。CV.三木眞一郎。
火の精・・・血気盛んな男性。疑問役&かき乱し役。CV.梶裕貴。

もちろん作者の人格を無理やり分けていますので知識不足及びご都合な流れに持って行ってる可能性は否定しようがありません。
アルファ碁みたいにレベルの高い自己対戦なんて無理です。
使える知識をいくつか提示しているとは思いますが、結論は「うーん,難しいねー」でしかないので,結局何が言いたいんだ!!となることは請け合います。



1,はじめに



風「というわけで,今回お付き合いしてもらっちゃったのは,不特定多数人がよってたかって不法行為が行われる,殺到型不法行為をいかに扱うか,ということなのよね。」
火「殺到型不法行為なんてお前の造語じゃねーのかよ。」
風「オリジナルだけど,脳内に浮かんだ言葉だもん,出来の良しあしなんて知らないわ。ただ,原告の弁護士の一人からは分かりやすいと言われていたし,一言で表す分には悪くなさそうだからこのまま使おうかと思って。
  もしかしたら,日本の実務における重要な概念の命名者になったりして?」

地「嬉しいのか?」
風「こんなことで,歴史に名を残したくはなかったなぁ~(シンゴジ風)」
火「いきなりジジイ声になって誤魔化すなよ!!」
地「複雑な気分だと理解しておこう。」

2,きっかけと議題



水「やはり,先日の懲戒請求が殺到した事件に関連してのことなのでしょうか。手短に「今回の件」と呼びましょう。」
風「きっかけはそうなるわね。」
火「今回の件については,弁護士自治とか,いわゆる「ネトウヨ」と呼ばれる人々に関係した批判だっていろいろあるだろ?」
風「もちろん知ってる。
  けれど,それを絡めると議論がおかしな方向に引きずり回されそうだし,他にも論点が多数ある訴訟だから,今回はその点は触れないでもらいたいかな?
  あ,もちろん重要な題材なので引き合いに出すのは全然OK。」

火「お前さ,光市母子殺害事件懲戒請求騒動…長いから光市の件と言うぜ。光市の件追い回してたじゃねーか。今回もその延長じゃねーのか?」
風「もちろん懲戒請求の在り方という視点からも関心はあるんだけど…それは今回はなし。殺到型不法行為の扱いは今後の実務において非常に重要になる可能性があると思うし。」
水「今回の件の帰趨は,単なる懲戒請求の殺到という事態に対する法的判断を離れるということでしょうか?」
風「そう。インターネットでは,不特定多数の人々が,特定人に集中攻撃をする例が増えているわよね。有名な所ではスマイリーキクチさんが受けた誹謗中傷の例(スマイリーキクチ事件)なんかがそうね。」
地「スマイリーキクチ事件は,民事でスマイリーキクチ氏は提訴したりはしなかったはずだが。」
風「もちろん自分の事件をどう扱うかはスマイリーキクチさんの自由で,私が口を出すのは無礼なことだわ。
  だけど,民事で提訴することも当然考えられた案件ではあるし,そうなっていればスマイリーキクチ事件も似たような問題に直面した可能性は高いと思うの。」


3,共同不法行為の成否?


3-1 問題意識



水「今回の件で損害賠償請求した弁護士に批判的な弁護士は弁護士自治の問題も指摘しているけれど,これは今日の議題では棚上げということになっていました。
  そうすると,今回問題になっている意見の一つが過大な損害賠償額請求であるということですね。」

地「今回の件を例にとると,懲戒請求を不法行為として弁護士側からの損害賠償請求が認められている件はおおむね損害額が30万円から100万円の範囲に収まっている。
  ところが,今回の件は懲戒請求の件数が900件以上にもわたるようだ。
  光市の件の一審では,およそ600件の懲戒請求殺到について,300万円の請求額に対して200万円の請求が認められている。
  これが二審だと90万円になった。最高裁では受忍限度論でゼロということになった。
  光市の件で懲戒請求の件数には原告の弁護士4人の間で微妙な差異もあったようだが、一審・二審とも特に区別せず全員に同額の請求が認められている。懲戒請求殺到以外の損害まで込みで最大200万円だから,懲戒請求だけで見たらもっと落ちただろうが。
  同じように考えるならば,今回の懲戒請求殺到の認容額はどんなに高く見ても500万程度,1000万に届くことはありえないとみるのが素直だろうな。」

水「もちろん,光市の件は懲戒請求の扇動者への訴訟で,今回の件は懲戒請求者当人への訴訟という違いがありますから,その点は意識する必要がありますけれどね。
  前例のあまりない件で光市の件は最高裁では破棄されている訳ですから,先例としての価値も微妙な所がありますし。」

風「もっとも,目ぼしい例が見当たらない以上,それしか頼るものがないと言ってもいい。
  そこで一部の弁護士が主張しているのが,「一部の懲戒請求者と既に和解しているのだから相当程度の被害弁償を受けているはずだ。もう被害は填補されているのにさらに訴訟を起こすのか。
  仮に既存の和解金のみでは認容額に足りないとしても,個々人に全額を認めたら損害賠償額も数億になる。どうあがいても1000万にもならないような件なのに、桁を一つ,二つ上回る総額の請求は不適切なのではないか」ということが言われているの。
  弁護士として損害賠償額をある程度乗せ気味にして請求するのは普通のことだけど,それにも限度があるのはその通りだと思う。
  交通事故で億単位の賠償を認める例もあるけど,だからって100億請求したら例え依頼者に頼まれて印紙代とかについて十分説明しているのだとしても首をかしげてしまう。
  SLAPP訴訟がどうこう,みたいな言い分まで立ち入ることは今日はしないけれど。」

火「おめーの考えはどうなんだよ。」
風「私個人としては,今回の件はやはり全体として数百万円の賠償を懲戒請求者個人で連帯責任で負わせるのが「落としどころ」と思ったわ。調停や和解の席上で提案するならそれが前提になると思う。
  そういう意味では,批判者に基本的な考え方は近いわね。
  ただ,その落としどころに持って行くには,共同不法行為や損害論の点からも検討すべき点が多いように思えて。
  私だって一介の弁護士だもん。私一人の見解で実務を動かせるような権力も学識もない。落としどころについての感覚が正しいかどうかも批判されれば自信はないわ。
  幸運にも懲戒請求されたことはないから,私も損害の実態を体感できないし。」

水「感覚的な落としどころ論は水掛け論になるので水入りとしまして,共同不法行為が成立するのかどうか。そこに話を移しましょう。」


3-2 風の精ルーラの見解変更?



3-2-1 振り込め詐欺案件の共同不法行為性



火「おめー,光市の件のときは個別の懲戒請求者の間でも共同不法行為が成立するって意見だったよな?」
風「そうね。多数の懲戒請求が殺到したこと全体を損害と見て全体でまとめる代わりに全体で連帯責任を問えると思ったのよ。」
地「光市の件では,弁護団は,先導役である橋下氏を提訴する形をとった。結果として,橋下氏への請求は棄却されたが,個別懲戒請求者への請求の当否については棚上げとなってしまった。
  まあ実際,今回の件でも一般市民を提訴するのは弱い者いじめだという意見もあるようだし,光市の時も橋下氏は一般市民を提訴しなかったのはよかったと言っていた。
  懲戒請求者を提訴していれば勝訴した可能性を手放した面は否定できないが,社会的な評価という一点では,光市弁護団のとった作戦は成功したと言えるのかもしれない。」

水「それがなぜ,今回見解変更を?」
風「私個人が妥当だと思う見解と裁判所の判断するであろう見解が違っている可能性があることに気づいた,と捉えてほしいかな。妥当だと思う見解は今でも変わっていない。
  私が判例検索して見つけたのが東京地判平成28年3月23日判例時報2318号40頁。」

地「かいつまんで説明すると,いわゆる振り込め詐欺の件だ。振り込め詐欺の件と呼ぼう。
  元締め(訴外B)がいたんだが,元締めに口座を提供してしまった人たちがいて,その口座に元締めは振り込め詐欺で被害金を振り込ませた。
  元締めは見つからなかったようだが,口座なら名義人が分かる。それでバレてしまった口座を提供してしまった者たちが振り込め詐欺を幇助したとして振り込め詐欺被害者に提訴された事案だ。
  裁判所は,口座提供者各人に不法行為の成立を認めたが,口座提供者各人の間での共同不法行為の成立は認めなかった。」
  共同不法行為に関する判示部分を抜粋すると,以下のようになる。


この点,原告は,(中略)被告らが,各自で自己名義の口座を提供することで訴外Bによる本件詐欺全体を幇助していたのであるから,本件詐欺全体について共同不法行為が成立すると主張する。
しかしながら,本件詐欺は,訴外Bが原告を欺罔して,被告ら名義の口座に順次振込みを行わせたというものであるところ,被告らが過失により訴外Bの故意による本件詐欺の実行を容易にしている範囲は,被告ら名義の口座に個々に原告が振り込んだ金額の限度である。
確かに,原告が欺罔され続け,複数回にわたって振込みを行ったため,被告ら名義の口座を含む多数の口座が本件詐欺に用いられることとなったが,本件詐欺は,原告の各振込みについて個々に見れば,各振込み毎に完結しているのであるから,個々の被告らの過失による幇助は,被告らの個々の口座が用いられた振込みの限度で訴外Bの行為と関連共同性を有するにとどまり,本件詐欺の全体について共同不法行為が成立するものと認めることはできない。


風「元締めと被告との間の共同不法行為については振り込め詐欺の件では争点にならなかったわ。元締めは被告になってないからね。
  けれど,末端同士といういわば横の関係では,共同不法行為にはならない,という判断がされている。その理由は,実行を容易にした範囲は各人の口座に振り込んだ金額の限度にとどまること,振り込みを個々に見れば,各振込ごとに完結していること。
  この件は過失による幇助事案で一部の被告は出廷すらしなかったようだけれど,それでも単独不法行為成立,共同不法行為は不成立という判断が動いていない。
  この件は元締めがいるから,末端―元締め―末端という形でのつながりがあるはずの件なんだけど,それでも共同不法行為にはならない。
  口座提供者は金がなくておいしいバイトの甘言に飛びついてしまったような人も多いし,口座のお金は元締めに払戻された可能性が高い。そうすると,連帯責任を問えないと空手形リスクは高くなる。
  それでもこの程度の共同性では共同不法行為にはならないわけ。」

地「振り込め詐欺の件は過失による幇助にすぎないという点では今回の件と違いはある。判決文には現れていないが,口座を送った人間も元締めに騙された被害者的な地位にあることが考慮された可能性もあるかもしれない。
  この件は、詐欺被害者側に7割もの過失相殺が認められているんだ。元締めと訴訟していたなら、1割の過失相殺だって認められるとは思えないからな。
  裁判所は「被害者同士の食い合い」と見た可能性は極めて高いと考えるね。共同不法行為否定の見解も,その辺りを慮った救済的な解釈とも取れなくはない。
  だが,所詮それは単なる推測の域を出ない実質論だ。
  判決文からの裁判所の判断枠組みに注目すれば,裁判所が大事にしたのは「個々に見れば,各振込ごとに完結している」という視点だな。
  今回の件に引き直せば,「個々に見れば,各懲戒請求ごとに完結している」と言えるか,言えないかになる。」

風「懲戒請求は一つ一つの手続として完結する物だと思うの。一件でも不法行為になることは確立した裁判所の解釈といえる。
  例えば綱紀委員会で審査しないことになったとして,懲戒請求者が例えば日弁連に異議を申し立てるかどうかは個別的な判断になる。主張立証だって個々人で行うことが可能になる。
  全て完全コピーの懲戒請求とは限らず,自分なりの労作を書いた人がいるかもしれない。光市の件でもあったと聞いているし。
  あるいは,一人くらい気骨溢れる人が徹底的に懲戒理由ありと争ったかもしれない。
  いないのかもしれないけど,そのことが「個別に完結しているかどうか」を分けて共同不法行為の成否に影響するのか,というと影響しないんじゃないかと思うのだけど。」

地「殺到型不法行為ということで今回は懲戒請求が問題になったが,ある者は脅迫電話,ある者は脅迫状,ある者は刑事虚偽告訴,ある者はニセの出前注文という具合に,バラバラな不法行為でよってたかってくるケースもある。
  今回の件も,おそらく関連しているのだろうが弁護士の事務所に脅迫まがいの電話をかけた者がいたという話だ。それら全てについて包括して共同不法行為を認めるのか?」

水「懲戒請求の殺到」どころか「懲戒請求・脅迫状・無言電話・ニセの電話注文なども含めた包括的な嫌がらせ」を一個の損害として全てについて共同不法行為ということも考えられる訳ですね。
  ここについて明確な線引きが出来る見解はあるのでしょうか?」

風「さあ?批判する弁護士にも明確な線を持ってあてはめをしている人はいなかったように思うわ。というか、批判する弁護士で判例を自己の有利に引用している弁護士自体がほとんどいないようなものだったし。判例に書いてもいないことを書いてあると強弁してた弁護士もいたけど。」

3-2-2 報道による名誉毀損案件の共同不法行為性



火「名誉毀損はどうだ?報道でこぞって名誉を毀損されて報道各社に裁判を起こした人がいただろ?」
風「三浦和義氏で有名なロス疑惑のことかしら。
  確かに報道がこぞって特定人の名誉を毀損した場合,ある種の殺到型不法行為かもしれないわね。この場合,害された名誉は1個にすぎない。それでも,各新聞社に共同不法行為が成立するって判断はされていないわよね?」

地「三浦和義氏が各新聞社に損害賠償請求を行っているが,「共同不法行為で余所の報道各社から賠償を受け取ったこと」を理由に賠償額を減額されたという話はみつからなかったな。
  どうやら同一の配信記事に基づいて同一の記事を報道したことが共同不法行為になること,そのうちの一部が三浦氏と和解して履行したことを前提に不法行為責任の被害填補に当たるということを主張した例もあったようだぞ。東京高判平成8年5月20日判タ945号130頁だ」

風「今回の件とかなり近い主張ね。配信サービスの抗弁で有名な判例だと思っていたけど,そんなところも判断されていたのね。」
地「東京高裁の判断はこうだ。」

「一つの報道機関が異なる地域に人の名誉を毀損する内容の同一の(ないしは同一内容の)記事を報道することは、一個の不法行為と評価することができるが、同一の配信記事に基づくとはいっても、別の報道機関が独自の責任で報道することは、それぞれ別個の行為であり、報道する地域が異なり、その報道の受け手(読者)が異なるとすれば、その報道内容が実質的に同一であったとしても、それは、それぞれ別個に損害が発生する人の名誉を毀損する行為であって、およそそのうちの一の報道機関がその報道によって発生した損害を賠償したからといって、他の報道機関が自らした報道によって生じた損害について責任を免れる筋合いはない。
(東京高判平成8年5月20日判タ945号130頁)


地「共同不法行為が成立しないという判断かはちょっと微妙な感もあるが、どっちみちお仲間による賠償は無意味という判断だろうな。同一記事、同一人物が対象、同一事項、元締めというべき配信会社がいるから、ほかに同様の記事を流すことも予想は出来た可能性も高い。けれども、それでも仲間による賠償を損害の填補とは認めていないわけだ。
  ただ,ロス疑惑関係では既に逮捕・勾留されていたので既に評価が落ちていることを加味して慰謝料額を導いている例自体はある(東京高判平成4年3月20日判例時報1417号67頁)。今回の件も,懲戒請求を既に多数受けていたことを理由に金額を落とす,程度のことはあり得ると思うが。」

風「実際先に逮捕・勾留されていたことで被害の何割が落ちたか,って言うのが分かれば適正な金額を導くヒントにはなりそうだけど,判決文読んだって分からない。多分当の裁判官もそんな細かくは考えてないわよ…」
火「結局やってみないと分からないってことか…」

3-2-3 元締めの有無と共同不法行為の成否の影響



水「今回の件にやや議論が集中しすぎた気はしますが,今回の件は,「元締めがいる」と思われる件です。しかし,殺到型不法行為全体に目を向けると,「元締めが見つからない」ではなく,「最初から元締めがいない」件も考えられるのではないですか?」
風「殺到型不法行為全体として考えれば,元締めのいない件も考慮しなければいけないわよね。
  twitter上などで特定されて,職場に無言電話をかけたり,解雇を求めたり,脅迫状を送付したり。けれど,それが何者かの扇動ではなくまるで同時多発的に行われている場合,それが共同不法行為になるかというのも一つ問題として考えられるわね。

地「何らかの原因で彼らに情報を与えてしまった者がいたとしても,それを「元締め」とは言えないだろうな。単なる善意で情報を提供したら騙された,という人もいるかもしれない。
  そもそも,どんな組織構成かなんて,加害者全員に自白剤打って尋問しても,本人たちも分からないだろう。誰かが嘘をついている訳でもないのに謎の組織が出来上がっていくことはよくある。組織犯罪の全容解明がいかに難しいかは,法律家なら常識だ。」

火「元締めがいる件ですら共同不法行為にならないのだとすれば,元締めがいない件では共同不法行為なんか検討する余地さえないんじゃないか?」
風「末端→元締め→末端の順次共同みたいな解釈は,振り込め詐欺の件では取らなかった。ただ,元締めの有無が決定打になるかというとそうでもない気はするかな。同時多発だから共同不法行為にならないということだとすると,交通事故と医療過誤の競合事例で共同不法行為を認めるのが難しくなる可能性がある。」

3-2-4 罪数論と似てる?



水「刑法の罪数論に近いものが感じられますね?。被害者から繰り返し金を受け取る詐欺を併合罪と受け取るか,全体として総額を受け取った一罪と受け取るかといった具合です。
  いわゆるかすがい現象のように,事件が付け加えられることでより処断刑が下がるというような矛盾した現象も起こったり、かすがいに当たる罪をあえて抜くことで罪を重くするような起訴がされた例もあるのですが、裁判所はそれを訴因説をとる以上やむを得ないものとして解釈を殊更こねくったりはしていませんよね?民事訴訟は刑事以上に当事者主義ですから、パラレルに考えるならば、当事者の法律構成に全体論を提示して口出しをする、というのは奇妙なことのようにも思えます。」

火「それは日本の処断刑が幅広く、明らかに無茶な主文を書かざるを得ない事態がそうないことが大きいんじゃねぇか?無茶な主文しか書けないなら、裁判所もある程度頑張って理論化した可能性は高いと思うぞ。」
地「とはいえ,被害者の救済を目的としていない刑法の罪数論を被害者の救済を目的とする不法行為法に持ち込むことは無理があると見るのが穏当なんじゃないか。」
風「裁判官の間で罪数キングと言われた罪数の大家が,他の裁判官がこぞって首を傾げる罪数を主張して案の定最高裁で否定された,なんて話も聞いたことがある。
  つまり、たとえ持ち込むことが出来たとしても,問題が解決するとは思えない。」

地「共同不法行為の成立には,客観的関連共同性が必要性だと言われているが,客観的関連共同という概念自体が私には訳が分からない。
  せいぜい「通謀がなくても共同不法行為になりえることが明確になった」程度でしかなく,個別の事案で共同不法行為が成立するかは判例の集積に,身も蓋もない言い方をすれば「共同不法行為責任を負わせるのが妥当か」という問題に投げられたと思えるな。
  だからこそ,振り込め詐欺の件で7割の過失相殺が認められたという事実が意味を持ってくるわけだ。」

風「もっとも,今回の件で過失相殺の類で損害額を調整するのはほぼ無理ではないかと思うけれど。」

(続きも書いてますが続くかはわかりません)





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最終更新日  2018年05月22日 23時23分16秒
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