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碁法の谷の庵にて

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2018年12月07日
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弁護士法72条は,弁護士・弁護士法人ではない者※1が報酬目的で法律事件について鑑定・代理・仲裁・和解その他の法律事務の取り扱いをすることや、その周旋を業とすることを禁止しています。
 また,権利を譲り受けて自ら当事者となって権利の実行をすることも禁止しています。
弁護士法73条、※2)



 具体的に禁止されている行為はなかなかぴんと来ないかもしれませんが…具体例を挙げますと…

①法律相談などの法律的知識の提供
②代理人になること。裁判の代理人でなくとも、代理人と名乗らなくても実質代理人なら禁止
③仲裁(当事者双方の合意の下で裁判官的なことをする)をすること。
④お互いを取り持って和解させること
⑤弁済を受け取ること
⑥債権を取り立てること
⑦弁護士を紹介して紹介された弁護士から報酬を受け取ること

と言ったあたりが典型でしょうか。

 このように弁護士でなければやってはいけない行為を弁護士以外の者が業とすることを総称して「非弁」といいます。
 これらに反した場合は、最高懲役2年,罰金300万円の刑事処罰が待っていることになります。(弁護士法77条



 弁護士は,全員が弁護士会・日弁連に登録されていて、ある程度の監督があります。
 例えばおよそ取れもしない金銭を「取れるよ」といって依頼料を貪ったり、明らかにおかしな法律事務を行ったならば、その弁護士は依頼者から金返せと言われるだけではすみません。
 弁護士会から懲戒処分を受け,場合によっては弁護士ですらいられないと言うことにもなります。
 
 ところが、弁護士会や日弁連も弁護士でない者を懲戒処分する権限はありません。
 そうすると、非弁護士がどんなインチキで金を貪ったり、依頼者に大損をさせても、誰も監督しないと言うことになってしまいます。
 特に弁護士を必要とする人たちは社会的弱者が多く、例え質の低すぎる非弁による損害があった場合であっても社会的弱者側からの責任追及は非常に困難になりやすくなります。被害に遭ったことにも気付かないことすら珍しくありません。
 弁護士が公的資格であり,非弁が刑罰をもって禁止されるのは,そういうあまりにも質の低い弁護活動から一般の人々を守る必要があるためでもあります。
 

 これに対して、非弁規制は競争を妨げ、問題があるという批判的な意見も上がっています。
 実際,弁護士法以外の法律で司法書士や税理士などと言った隣接士業などに一部解放されている業務もあります。
 弁護士だって万能超人ではなく間違ったアドバイスをするケースもないとは言えませんし、弁護士であるかどうか,という形式的な点だけで区切ってよいのか、というのは「立法論としては一理くらいはあるかな」と私は思っています。
 
 しかし,現状において弁護士法の規定に従わずに非弁行為を行う者は、資格を持っていない以外の点でも問題がある場合が多いです。
 「仮に弁護士が全く同じことをやったら、こいつ本当に弁護士か?と言われて当たり前」というケースの方が圧倒的に多いです。


 私自身も、「弁護士らしき仕事をしている弁護士じゃない人の関連する相談」を受けることがありますが…

 
弁護士資格を持たない「●●コンサルタント」「××アドバイザー」から珍妙なアドバイスを受けてそれに従い,それでにっちもさっちもいかなくなってから弁護士の所に相談に来ても、「もう手遅れの可能性が高い」と回答せざるを得ない。


「自分たちに頼めばお金が取れます」という弁護士でない業者。案の定いつまでたってもお金は取れず,話が違うと詰め寄ると「私たち弁護士じゃないんで…」と開き直る。消費者被害と見て何とか責任追及しようと弁護士の側で国民生活センターに照会すると、そんな相談が日本中から殺到していたりする。


 
 正直こんな事態、珍しくもなんともないです。
 相談に来てくれている人は、「自分は被害者だ」という自覚がある場合が多いからまだ弁護士に相談に来てくれ,場合によっては法的に対応がとれますが,「それで仕方なかったのだろう」と思い、弁護士にも消費生活センターにも相談に来ていない人たちは目に入らないので,被害者の暗数は数えきれないほどになるでしょう。
 来ている人でさえ、家族に言われて渋々来ているような人もいるくらいです。

 そして彼らは資格がなく質が低い、でもその分安いか、というと別にそうでもありません。
 きちんとした有資格者も日本司法支援センター(法テラス)による月々5000~10000円程度の分割払いが使える弁護士も多い(弁護士費用が不安なら、法律事務所に問い合わせる際に「法テラス使えますか?」と聞いてみるとよいでしょう)のですが,非弁は法テラスが使えないので,「弁護士より高い非弁などごく普通」です。
 こと非弁に関しては、安物買いの銭失いどころか高物買いの銭失いさえ珍しいことではないのです。



 弁護士は,「自分たちに依頼すれば回収確実」なんて言葉を使いません。
 言って依頼するように言えば職務基本規程に反しますし,仮に弁護士会がそれを禁止しなかったとしても,消費者契約法上の断定的判断の提供(消費者契約法4条1項2号)で契約取消の理由にもなるでしょう。
 非弁はそんなルールなど最初から学ぶ気もなく,儲けるためなら何が悪いんだ程度の問題意識しか持っていない上、最悪一部負けたとしてもそんくらい必要経費感覚で臨んでいるため,ルールに忠実な弁護士と比べて広告や依頼者への訴求力という点でアドバンテージを取っています。
 弁護士は本来のルールで、非弁は全選手が手を使っていいサッカーで戦っているようなもので、「ルールに従っているために自信なさそうな弁護士」より、「ルール無視なので自信満々な非弁」が頼れるように見えてしまうのは、仕方のないことなのかもしれません。
 しかし,そんな自信満々さにつられる心こそが、非弁の狙う心の隙間なのです。
 

 皆さんは法律的に困ったら訳の分からない「コンサルタント」「アドバイザー」などに頼むのではなく,必ず弁護士を頼るようにしてください。
 とりあえず法律的な相談でなく弁護士以外に頼んだ方がいい相談であったとしても,それを見極めるためだけでも弁護士に相談に来ていただくのが一番安全です。
 非弁は犯罪ですが、非弁に頼んだ人は処罰の対象にはなりませんから,相談に来たからと言ってあなたが逮捕される可能性はありません(この点は最判昭和43年12月24日で明示されています)。
 むしろ、弁護士が入ると刑事処罰を恐れて自ら金銭を払う非弁業者もいるくらいですから,その意味でも「非弁被害に遭った?」と思うなら一度相談に行くことは無駄ではないはずです。



 また、周囲の御友人なども、どこかで仕入れた知識を与えるのではなく、「とりあえず弁護士に相談にいこうよ」と勧めるようにしてください。
 例え善意であっても、間違ったアドバイスをしてしまうと助けるつもりの本人を突き落とし、非弁と同じ被害に遭わせる結果になってしまいます。
 



 なお,非弁に関しては深澤諭史弁護士のこちらのブログが詳しいです。
 大体この記事に書いてあることの大半はこのブログ記事に書いてあることを一記事にまとめ直したものだと思って頂いて差支えありません。
 もっと詳しく知りたいとか、この記事本当なのかな?と疑問に思われた方は、深澤弁護士のブログをお読みになっていただければと思います。





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最終更新日  2018年12月07日 15時16分07秒
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