カテゴリ:弁護士としての経験から
探偵業界で、DV加害者やストーカーに探偵が使われてしまうという問題が報じられ、探偵業界が頭を痛めているという報がありました。
2020年11月28日 09時07分 DV被害者、逃げたら「探偵に後をつけられるように…」加害者の依頼、見極めに苦慮する業界 しかし、刑事弁護の世界でも、これに近い問題は起こります。 刑事弁護は、国選弁護ならば依頼者は国ですので、別に何の問題もありません。 警察に逮捕された本人から「弁護してください」と依頼が来ることもあります。 本人からの依頼であればこれも問題は全くありません。 問題は第三者から「〇〇が逮捕されたので弁護に行ってあげてほしい」と言うような依頼が来て逮捕された被疑者に面会に行く…というのです。 別に逮捕された人以外が「〇〇の弁護を依頼してほしい」ということそれ自体は、特に問題はないのです。 もちろん、頼みに来たのが事件そのものと無関係な家族や友人ならばさほどの問題はありません。 ところが、中には逮捕された当人の未だに逮捕されていない共犯者、あるいは法律上共犯者とは言えないまでも事件について知っていたりする組織犯罪関係者などが友人を名乗って(友人であること自体は嘘でもなかったりする)依頼してくると言うこともあります。 組織犯罪関係者の場合、被疑者当人が面会禁止になっていたり、面会は可能であるにしても横で警察官が立ち会うため、自由に話せません。 一方、逮捕されている被疑者に圧力をかけて「黒幕のことを話すなよ」と言いたいケースもあったり、そこまでできなくとも被疑者が何と言っているのか知りたいケースも多いのです。 そこで、事情を知らない弁護士に「友人」を名乗って弁護を依頼し、て何と言っているのか聞き出してしまう…ということは、残念ながらあり得るのです。 事情を知らず使われた…だけならばともかく、中には事情を知ってて圧力をかけるようなことを言う弁護士もいるという黒い噂も聞きます。 流石にばれたら一発で業務停止以上の懲戒どころか強要罪などで刑事処罰さえ考えられる行為だと思うのですが、弁護士に認められた秘密交通権でなかなかバレないのも確かです。 私自身も、以前依頼者をロクに検証しなかった弁護士のせいでひどい目に遭ったことがあります。 私が弁護を担当していた被疑者に誰に頼まれたかすら伝えず(詳細は伏せますが、状況からして依頼者が共犯者の類であることは間違いない)に面会に来ただけでなく、先に国選弁護で活動していた私の弁護活動を滅茶苦茶にかき回して去っていったことがありました。 おそらく、彼とて私の弁護の邪魔をしようとか、弁護に名を借りて被疑者を困らせようと思ったのではなく、「逮捕されている人のために頑張ろう!」という職務熱心さと「依頼者はどんな人なんだ!?」と言う点に意識が向かない脇の甘さが合わさってとんでもないことをやってしまったのであろうと思います。 とはいえ、刑事弁護で超有名な法律事務所の弁護士だったので「あの事務所は、依頼者を警戒する必要があることは教えていないのか?」と言う点では呆れかえりましたが… むろん、第三者からの弁護依頼を受けることそのものは別に禁止されていませんし、逮捕・勾留されている被疑者にとっては外にいる第三者からの助けがあると分かることは非常に心強いことでしょう。 第三者からの弁護依頼を否定する必要は全くありませんし、依頼者が誰であれ被疑者のために最善を尽くすという姿勢は正しいことです。 そして、依頼した第三者が何者なのかについて調査するのが難しいのは探偵業界に限らず弁護士も同様です。一刻を争う場合もある以上、調べるために時間を費やせず(費やしたところで調べる方法も少ないですし…)に騙されてしまったというケースもあるでしょう。 しかしながら、弁護人業界が刑事弁護のために認められている権利を悪用されることに対して脇が甘ければ、せっかく刑事弁護のために認められた弁護人の諸権利が縮小し、本当の意味で困っている人の弁護活動にまで重大な枷がはめられてしまうという最悪の事態を招くことにもなるでしょう。 例えばリンク先の記事では 「調査にあたり対象者の個人情報を書いてもらうと、「自分の妻」と言いながら名前以外の情報を書けなかったり」 というような例が分かりやすく怪しいケースとして紹介されています。 第三者からの刑事弁護依頼を受けた弁護士も、限界はあるでしょうが、依頼者についてその場でも調査できる事情はいくつかあるはずです。 「依頼者と被疑者の関係はどんななの?(依頼料を出すだけの関係か?)」 と言ったように、悪質な依頼者に利用されないよう注意し、また見抜けなかった場合であっても被害を最小限にとどめるといった努力も、また必要であろうと考えます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020年11月28日 14時26分55秒
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