カテゴリ:弁護士としての経験から
福岡で5歳児が母親から食事も与えられず餓死したされる保護責任者遺棄事件が起訴されました。
報道によればですが、この事件は母親のママ友が母親を洗脳同然の精神状態に置いたことが一因とみられているようです。 福岡の事件の真相解明は捜査・司法に任せるとしますが、報道されている「洗脳」には、個人的によく似ていることの心当たりがないでもないのです。 特に宗教団体の偉い人やカウンセラー・地域の名士という訳でもない、「近所のママ友」「学生時代の友人」と言ったような人々に洗脳されて言いなりになっている・あるいはいたのかな?大丈夫かな?と考える件は、実は私自身も色々な相談や依頼・場合によっては訴訟の相手方についても何度か遭遇したことがあります。 単に「騙されている」なら理解できるのですが、言われるがままに金銭を納付したり、どう考えても不合理な行動に走ったりというもはや崇拝の域に入っているとしか思えない例がたまに目に入るのです。 そしてどんどん生活が苦しくなって債務整理の依頼に来たり、問題のある行為を指示の下にやらかして法的責任を追及されて弁護士も関わる…ということがあるのです。 もちろん、その人の言っていることが本当なのか、という問題は常に残ります。 自分がやらかしたことを覆い隠すために、第三者の洗脳行為をでっちあげて、そいつのせいにする…ということだって考えられます。 しかしながら、でっち上げても何の意味もないケース、それどころか弁護士による救済を拒否してしまうレベルで第三者による洗脳の類が継続してしまうという根深いケースも見られます。 洗脳が疑われる件は何件かありましたが、個人的に一番戦慄したのは、子連れで借金まみれ状態になってしまったAさんの件でした。 Aさんは、相続が絡んでいてAさん自身だけでなくAさんの未成年のお子さんも借金の山という状態の上、相続放棄の熟慮期間も経過済みという厄介な状態です。 しかも、返済の当てにしていた金銭はBさんに預け、Bさんがその金銭を返してくれないというのです。(もっと複雑なのですがこれ以上の詳細は守秘します) 多額の請求書に困って債務整理のために相談に来て、お子さんともども破産するか、一か八か熟慮期間経過後の相続放棄をかけてみるか、Bさんから金を取り返すか、法的手段しかないという状態と思われ、受任すべく準備を進めていました。 そこまではよかったのですが、本番の依頼に入る直前になって突然Aさんから「破産もその他の法的手続も一切やめる」と言い出したのです。 法的手段以外に状況脱出の方法があるとは到底考えられない中どうしたのか聞くと、「Bさんからいいことないよって言われた」ということでした。 無論、Bさんへの責任追及だって考えてはいた中だったので、Bさんが責任追及を逃れようとAさんに圧力をかけている可能性が疑われます。(金銭返還請求はもちろん、破産でもBさんの責任追及はありえる) なによりもAさんだけでなくお子さんの将来に関わることも考え、こちらもAさんをかなり強硬に説得しました。 破産以外にもいろいろ手は考えられるし、依頼にも法テラスの援助制度を使えば金銭はほとんどかからない、まず依頼してほしいというプラス方面を示したのはもちろんです。 「せめてお子さんだけでも。お子さんが借金まみれになるのを放置するのは児童虐待にもなりかねない。頼む弁護士は自分でなくてもいいから弁護士に頼むべきだ」と恫喝じみたことまで言いました。 (この言については、「言うべきではない」という批判的なご意見もあろうと思います。) しかし、結局Aさんは「Bさんが言うから子どもも含めて全部やめる」の一点張り。 弁護士としても依頼すらしていただけないのではなす術がありません。 いっそ児童虐待で児童相談所への通告さえ考えたのですが、児童虐待の定義に「児童の財産をきちんと管理しないこと(経済的虐待)」は含まれているとは言えず(児童虐待防止法2条)、下手な通告はこちらが守秘義務違反になりかねません。 結局私は手を引かざるを得ず、それきりになってしまいました。 私の説得がまずかったんだろうか。 でも本人が弁護士である私の法的意見より完全なトーシロのBさん(しかも変な説明を弄するというより「いいことないよ」の一言で押し切ってしまう)を未だに信じ切る状態で、どうすればよかったんだろう。 かなり前の件ですが今でも考えてしまう件です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021年03月31日 23時00分05秒
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