おしゃれの幸福論
ヴァンテーヌ時代から大好きだった光野桃さんの最新著書をようやく読みました。40代から50代、ある日突然、手持ちの洋服が似合わなくなる。そんな誰もが経験することをベースに、クローゼットの整理、心の整理と話は進む。おしゃれだけではなく、考えさせられる本でした。おしゃれの幸福論心に残ったのは、著書(31ページより)加齢することは外見的には確かにがっくりすることも多いが、経験の充実や、苦労によって磨かれた内面や、生きる痛みを知ったひとだけが持ち得る優しさなどを思えば、まさしく実りの季節といえる。けれど、今の時代はそこにはほとんど焦点が当たらず、外見ばかりが取りざたされる。熟女ブーム、美魔女、そして相変わらずの若さ礼賛という風潮の中で、年を重ねていくことが苦しみにしかならない、恐怖にしかならないなどということは、人間の生き方として間違っていると思わないではいられない。彼女は、暮らしていたイタリアで若さは何もしなくてもそこにある、誰でももともと持っているもの。でも歳を重ねた美しさは、その人の努力や歩んできた道のりが育んだ宝石のような果実。だからこそ貴く、称賛されるべきものという言葉を聞いて感銘をうけた。イタリアでは、ひとも物も古いものを大切にし、そこに価値を見出す文化がある。女の価値は若さではなく成熟にある、と伝統的に社会が承認している。一方、日本では新しいものやコトに価値を見出せない。成熟した社会ではない証拠なんだと思います。