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テーマ:イギリス生活(54)
カテゴリ:政治
2016年6/23の国民投票でEU(欧州連合)離脱が決定し、本来なら本年3/29に離脱している筈だったが、離脱協定案が英国議会で何度採決しても認められず離脱が延び延びになり、合意なき離脱の危機にさらされていたがこの度EU側のお情けで、半年猶予されて10月末までに英国議会で離脱協定案が可決されれば晴れて合意離脱が確定する。 そもそもなぜ英国はEUを離脱しようとしたのであろうか? 昨日の朝日新聞朝刊に慶応大教授の細谷雄一氏が「英国の混乱 失政の帰結」という一文を寄稿していた。それによると1980年代以降の英国政治は3つの要因で大きく変貌した。第一は政治のイデオロギー化で、サッチャー首相は、非民主的な官僚組織が支配するEC(EUの前身で欧州共同対)は硬直的で時代に逆行する組織だとして党内の親欧州派を排除して、保守党は次第に欧州懐疑派が支配するイデオロギー政党へと変わっていき、一部の議員は経済的な合理性を無視して原理主義的にEU離脱を求めるようになった。 第二の要因は、新自由主義の浸透による経済格差の拡大と中道政治の空洞化である。低所得者層は生活が困窮した原因がサッチャー首相以下の歴代の政権による政策やグローバル化によってではなく、EUによって引き起こされたと考えて不満の矛先をEUに向けていった。 第三の要因は政治エリートに対する国民の信頼性の失墜である。金融危機後の財政緊縮政策の際、増税により貧困層がより一層苦しむ中で税金の一部が大規模な金融機関に流れていたのを知ってエリートは嘘をつき、自己利益しか考えていないとして失望や怒りが広がった。英国議会やEUの指導者は信用できない。国民の声が直接政治に反映されるべきだとの不満が国民投票実施とその結果に帰結したものと思われる。悲劇的なことにEU離脱によって深刻な損害を被るのは怒りの声を上げて離脱を求めた低所得者層である。と細谷氏は述べている。 その通りで離脱によっていいことは何もない。サッチャー以後の30年間で自らの経済生活よりもイデオロギーを重視し、政治家不信の中から離脱問題が浮上してきたが、もう一度現実をよくみつめよく考えてもらいたいと思う。あと6か月の間に冷静に自国、他国のことを考えて議論し、離脱破棄なり、離脱合意案に賛成するなりして襟を正して新たなスタートを切ってもらいたいと思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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