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テーマ:「愛」・「命」(2783)
カテゴリ:読書
朝ドラ「はね駒(こんま)」の再放送を衛星放送で朝7時半から観ている。りんの兄嘉助は東京や横浜で何をしているか分からない困った頼りない男だったが、満州事変になり、戦争の様子を活動写真に撮るために結婚したばかりのみどりを内地に残して満州に渡った。みどりには子供も生まれ、嘉助の帰りを待っていた矢先嘉助が流れ弾に当たって死んだという通知が届く。みどりの心中いかばかりかと憂える。
今読んでいる「昭和風雲録」の著者満田巌さんも北支派遣3908部隊の千葉隊、河南省への行軍中発病して一か月後戦病死した。知らせを受けた未亡人満田道子さんは動転して深く悲しみ多くの短歌を詠んだ。 出征する時連隊を追いかけた時、 駆けて行きし、背なに叫びし、吾が声を聴きしか夫よ今に問いたき 遺骨が帰ってきた時 鬼女のごと夫のみ骨のひとひらを喰みて若かりき戦はるけく いくら何でも骨を噛んだり喰べたりするのは尋常ではない。しかし朝日花壇の選者五島美代子さんは「女性は夫思いの一念が昂揚すると鬼にも蛇にもなるのである」と評している。 あまりのことに後を追おうとしたときの歌 追わむとして乱るるとおき公報の記憶の中のカンナ咲きいる 満田さんは心から夫巌さんを愛していたのだと思う。夫恋しさの歌は自らが死ぬまで一生歌い続けていた。もし元気でその後も一緒に暮らしたら喧嘩したり憎しみ合うこともあったかもしれないが、一瞬の間に遠い所に行ってしまったので懐かしさ愛おしさがそのまま彼女の中に残り一生続いたものと思われる。 愛には肉体的愛とプラトニックな愛があると言われるが満田さんの夫に対する気持ちはプラトニックなものを超えた鬼気迫るものを感ずるものもあった。 夫亡き後はそれまで住んでいた愛媛県西条市を離れ、夫の生家の兵庫県揖保郡揖保川町でそれまで一度もしたことがなかった畑仕事に精出して年老いるまで夫の両親を助けたとのことである。子供の成長は勿論楽しみで励みになったが生きても死んでも夫一筋に生きた一人の女性、昔はこのような愛もあったのかなと思った。 畑仕事に関する歌2つ 若き日もい征きし夫も還らねど打つ山畑に野びる下萌ゆ 畑仕事早くしまいて背なの児にバス見せに行く冬の影法師 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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