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テーマ:父親の役割(33)
カテゴリ:教育
居間でひっそりと咲いているカランコエ
朝ドラ「おちょやん」ではどうしょうもない父親が描かれているが、普段はおとなしいが酒を飲むと暴れたり妻や子供に物を投げつけたり暴力を振るう父親の話はよく聞くし多くの文学作品にも描かれている。彼らにも子供に対する愛情はあるのだと思うがその愛情の示し方が下手なのかもしれない。宮本輝の「灯台からの響き」には酒乱の夫からの暴力から逃れて母子、祖母で暮らしていて離婚申請をしても応じてくれない父親の話も出てくるが、本書の主人公である中華そば屋の主人康平の父親の話には感銘を受けた。康平は些細なことで父親の反対を押し切って高校を中退してしまい父親の中華そば屋を手伝うことになったが3年間無視され続けたとのことである。 乾燥したメンマを湯で戻すとき少しズルをして早めに味をつけようとしたら寸胴鍋の中のスープのみ見ていたはずの父から「まだ早い」と叱られた。「俺が何かを聴いても必要な事しか答えてくれず具体的なことは何も教えてくれなかったくせに底意地が悪い」と腹を立てて「じゃあ自分でやりなよ」と帰ってしまったこともあった。ある時無視を続ける父親に思いを致してみた。「ひょっとしたら無視を続ける方が無視されるよりはるかに強靭な精神力と包容力と慈愛を必要とするのではあるまいか」「俺を根底から鍛えようとしているのだ」と気が付き1日も欠かさなかった厨房掃除をさらに丁寧に心を込めて行うようにした。そしたら10日位経った頃乾燥メンマを戻していた俺に「康平、明日から麵茹でと湯切りはお前の仕事だぞ」そして「これまで済まなかったな」と付け加えた。以来親父の味に近ずくべく努力してそれと同じ味を作れるようになった。 康平は妻に死なれ2年間中華そば屋を閉めていたが感ずるところあって再開することになり友人を集めての準備のための試食会を行った時今は亡き父親と全く同じ味の中華そばを作ることが出来て父親に対して強い感謝の思いが湧いてきて涙した場面が出てくる。 幸せな親子だったと思う。無視され続けていた時、「馬鹿にすんじゃねいよ、くそおやじ!!」とさっさとどんぶり投げつけて辞める子供の方が圧倒的に多いと思う。しかし無視を続ける父親の心情を考えてみた息子は偉いと思った。本書では息子が思った通りの「息子を鍛えよう」という慈愛からでた行為だったからよかったが実際は単に息子を苛めてやろう、困らせてやろうと思っていた父親ならどうしょうもなかった。私なら3年も我慢しないで数週間で家を出ていたと思う。康平はよく我慢したと思う。 父親のタイプは色々ある、あれこれしつこいくらい世話を焼いて教えてくれる父親もいれば本書のように何年間も無視を続ける父親もいる。子供の時から一緒によく遊んでくれた父親もいれば殆ど遊んでくれなかった父親もいる。ビートたけしの父親のような人もいる。型はどうあれ愛情の深さで子供の将来が決まるような気がする。しかし実際には父親より母親の影響力の方がはるかに大きい。父親は最低限子供の成長の邪魔をしないで貰いたい。酒を飲んで妻や子供に暴力を振るうのはどうしょうもない。しらふの時によく考えて父親らしい態度が取れるように生活してもらいたいと心より願うものである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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