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カテゴリ:読書
白いハナミズキ
今渋沢栄一の「論語と算盤」を読んでいる。これは渋沢の膨大な講演の内容を編集者の梶山彬と言う人が10のテーマに分けて切り貼りして編集したもので「講演のエッセンス」と言う物であった。 渋沢は幼い時から論語を含む「四書五経」を学んでいてその教えの根底にある「自分の身を磨き良い統治者になり良い国を作る」を心肝に染めており、その教えを体現する為政者になり活動してみたいという気持ちを持っていた。彼の前半生の講演では「私は最初は尊王攘夷を論じて東西を走り回っていた。しかし後には一橋家の家来となって幕府の臣下に加わりその後は徳川昭武(徳川慶喜の弟)に随行してフランスに渡航した。2年後日本に帰ってみれば幕府は既に滅びて世は王政に変わっていた。社会の移り変わりや政治体制の刷新に直面すると自分の力ではどうすることも出来ず逆境の人になってしまった」と語っている。 その逆境に対する渋沢の考えは「逆境は自分の本分だと知り、自分の守備範囲を守り、天命と思うことにより平静を保つことが出来る」と述べている。「人が世の中を渡っていくには世の不正には敢然と立ち向かわなければならないが成り行きを広く眺めながら気長にチャンスを待つことも必要である。志の実現のために思いがけないチャンスが回ってくることもあるものだ」 論語には志に触れた言葉がある。子曰く「我15歳にして学に志し、30にして立ち、40にして惑わず、50にして天命を知る。60にして耳従う、70にして心の欲する所に従いて矩を超えず」である。 孔子は15で学問をしようと立志したが学問だけに注力したのではなく、自ら政治家になり中国を安定した国にしたいと弟子も育てた。 渋沢は志を立てたのは実業界に飛び込んだ30歳を過ぎてからだと語っている。「白状すると私の志は青年期においてはしばしば揺れ動いた。最後に実業界で身を立てようと志したのが明治4,5年の事でその時が私の立志だった。自分の性質や才能から考えても政界に身を投ずることは自分の向かない方向に突進するようなものだとこの時ようやく気がついた。」 この本の解説者の守屋淳さんは志と天命の違いについて解説している。この二つの違いは自分の可能性に目を向けるのが志で自分の限界に目を向けるのが天命だと述べている。若くて希望に胸を膨らませている時には何でもできるような気がして総理大臣になるというような大きな志を立てるが社会の荒波にもまれて酸いも甘いも経験して自分にできることと出来ないことが見えてきて、出来ることの中から自分はこの道で貢献していこうと決意することが天命を知るなので、渋沢が活動の場を実業界と決めたのは孔子のいう志ではなくて天命の方だったと述べている。 渋沢は「強く繁栄した国」を作ることを生涯の志としていてそのためにはあらゆる努力を惜しまず努力して成果を上げており、運にも恵まれた偉大な人物だったのだなと思った。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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