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カテゴリ:読書
ビオラ
資本主義は個人的資本所有者がそれを本にして営利目的に労働者を雇い商業や産業を市場で行うシステムで利潤を上げることが目的である。 渋沢栄一の合本(がっぽん)主義は公益を追求するという使命を達成するのに最も適した人材と資本を集めて事業を推進させる方式である。どちらも事業を行い利潤を追求するがその目的が資本主義は自分がもっと儲けて豊かになりたいだが合本主義は公益を追求するために事業を行なう。つまり一部の人に富が集中する仕組みでなく皆で人、物、金、知恵を持ち寄って事業を行いその収益を皆で分け合い皆が豊かになる方式である。 「いかに自分が苦労して築いた富だと言ってもその富が自分一人の富と思うのは間違いである。人間は自分一人では何もできない存在だ。国家社会の助けがあって初めて自分でも利益が上げられ安全に生きていくことが出来る。これを思えば富を手にすればするほど社会から助けてもらっていることを自覚すべきである」 明治時代前期の実業家で三菱財閥の基礎を築いた大金持ちの岩崎弥太郎に渋沢は「二人で手を組んでもっともっとお金を儲けようではないか」と誘われたがお断りした。岩崎は生粋の資本主義者で渋沢は合本主義者だったので相いれなかったのだと思われる。 渋沢の経済活動の基盤は論語と算盤だったがこの両者は相いれないもので、論語は道徳律を説いており、算盤は経済の象徴で、儲けるにはどうしたらよいかを考えていくもので対極にあるものである。真面目に道徳を守って商売しているが貧乏な人がいたとすると純粋に算盤側の価値観からみると商売下手で負け組になる。一方で道徳はあまり考えず私利私欲で商売をしているが結果的に社会の役に立っている場合、論語側から見ると金の亡者になってしまう。しかしそうした一元化の評価では社会は豊かになれない。「論語と算盤」の立場は片方の立場では価値ないとされてしまうことも片方の立場でカバーするのである。その意味で「論語と算盤」は全く純粋ではなく、二つの価値観を混ぜ合わせて不純にしているからより多く社会の人を抱え込むことが出来る。 きれいごとばかり言っていたら商売は出来ない。切磋琢磨して競争もしていくが最終的に社会の役にたてばよいのだ。鉄道や製紙業など直接社会に役立つことだけでなくその会社の従業員の幸せの生活を得るなどの間接的なことでも社会の役に立つことなら論語の精神に合致したものと渋沢は考えていた。 本書の解説者守屋淳さんは渋沢は自らの志を実現していく過程で論語と算盤のように対極の要素をうまく両立させて使うという作業をし続けた人だと述べていた。 最近ある立場をとると反対の立場の人を切り捨てたり非難したりする人が増えており特にSNSではそれが顕著で一つの価値観だけで世の中を割り切ってしまうと女子プロレスラー自殺事件なども起きて世の中をよくすることは出来ない。「論語と算盤」は対極の要素を両立して使う方法を我々に教えてくれた名著だと思う。一読をお勧めする。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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