カテゴリ:ベトナム政治・経済・社会観察
昨日までほぼ一週間、またまたベトナム北西部地域を回っていました。これでもう6回目でしょうか、これほどこの地域に縁ができるとは思ってもいませんでした。今回、特に地方政府の体制や農業普及システムについて気がついたことを少し、また写真も少し。
(1)地方政府部局の多様性 今回も仕事柄農業系の人と話したり、政府の関係者を訪れたりもしました。ベトナムの地方政府は人民委員会(UyBanNhanDan)が行政機能を果たしているのですが、その下にほぼ中央政府の省庁と相対する各部局(So)が配置されています。農業系では農業農村開発局があるのですが、その下にも当然様々な課(Phong)がある他、異なる支局(ChiCuc)、センター(TrungTam)があります。これらが複雑に共存して、地方政府機構を構成しています。
今回2つの農業農村開発局を訪れたのですが、ディエンビエン省では以下のような構成となっていました。
Phong:計画財政(TaiChinhKeHoach)、農業(NongNghiep)、監査(ThanhTra)、加工・政策(CheBien&ChinhSach、何故この2つが一緒か?)、組織人事(ToChuc)、総務(HanhChinh)
ChiCuc:植物保護(BaoBeThucVat)、獣医(ThuY)、水利(ThuyLoi)、農村開発(PhatTrienNongThon)、林業(LamNghiep)、森林保護(KiemLam)、
TrungTam:水産(ThuySan)、畜産(ChanNuoi)、農村給水(NuocSachNongThon)、普及(KhuyenNong)
ソンラ省ではPhongに農業が無く農業技術(KyThuat)があり、ChiCucには合作社&農業開発(HopTacXaPhatTrienNongThon)があり、TrungTamには水産ブリーディングセンター(GiongThuySan)があり、畜産はありませんでした。(全て農業農村開発局の口述による)。
それぞれPhong、ChiCuc、TrungTamが如何違うかと聞くと、Vuは農業政策への関与、ChiCucは個別事業や技術移転、TrungTamは公共サービスの提供を行っているとのこと。それぞれ微妙に呼び方が違い、独立性も微妙に違うようです。どういうルールに従ってこういうものが作られたり、廃止されたりしているかわかりませんが、無駄に作られているものもあるのじゃないのかなあとも。ともあれ、地方省の特徴もこういうところにも若干出ているのではないかと思います。
(2)地方における農業普及体制 その一方で、普及センターはディエンビエン省などではようやく郡レベルのセンターが設置されたところもあり(DienBien郡)、コミューン単位の普及員はようやく1名ずつが任命されたところと、農業普及システムはまだかなり改善の余地がありそうでした。
コミューンの普及員は月給300,000ドンと報酬は非常に低く、今年から上がったそうではありますが、人材の確保は難しい課題です。こういった人への再教育、OJTをどうしていくのかが、末端まで農業技術を伝えるための大きな鍵です。
農民の側も「お金を払わないと普及トレーニングに来ない」と郡普及センター長は嘆いていました。ベトナムではトレーニングや会議に出る人にお金が払われることが「文化」と化してしまっていますが、お金を払っているから出てきているという人に本当に必要な知識を伝えるのは至難の技だと、いつもベトナムで仕事をしていて感じます。「お金を払ってでも学びたい」という時に学習者の吸収力は最大限に高まるのとは、全く反対の状態です。こういった文化を変えるのには時間がかかるのでしょうが、南部ベトナムでは農業普及員がお金を取って普及サービスが行われているらしく、特にLongAn省などはそういった先駆けとして知られています。もちろん、やはり余裕のある農家からそれを受けるのでしょうが、そういった農家が篤農となって、自然な展示効果をコミューンに示すことで、農業技術が広がっていく(Farmers to Farmers)といったやり方もあります。
現在の行政サービスの「社会化」(=民営化)の流れからは、こういった農業技術普及サービスのあり方も、将来への持続性と効果が問われるかもしれません。特に北西部地域のような貧困地域では、簡単な農業についての情報を知っているか知らないかだけでも、情報へのアクセスがあると無いとだけでも、生計に大きな違いをもたらすことでしょう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年07月05日 18時30分12秒
コメント(0) | コメントを書く
[ベトナム政治・経済・社会観察] カテゴリの最新記事
|
|