穴から顔出すかわいいポッサム
これから、不定期に「生き物たちの詩」を掲載していきます
--生き物たちの詩--
この根拠のないポッサムではないかという自信の根拠は、何日か前の夕方の出来事にさかのぼる。
夕方学校から帰る子供を乗せて車を門から入れる途中のことだ。
「アッ、あれなんだ!?」
背中に小さな子供のせたリスよりもちょっと大き目の動物だ。
ドライブウェイをサッと走って横切って、リキッドアンバーの幹に駆け上がる。
瞬間だが、ほんの一瞬振り返った時に、大きな丸い二つの目がヘッドライトに照らされて、赤くキラリと反射するのがまぶたの裏に強く焼きついたのだった。
「アレ、ポッサムじゃない?」
そういうかいわないうちに、そのなぞの小動物はたそがれの林の中にさっと姿を消してしまったのだった。
「家にもポッサムがいる!」
それは我が家にとってはけっこうなビッグニュースだった。
だからである。
「ポッサムの赤ちゃんがいた!」
それだけで、我が家ではクジラが陸に上がったような大騒ぎ。
起き抜けの小学生の息子は目を見張る。
何あげたらいいの、何食べるの、と自分でも調べたりして何やら落ち着かない。
「おっぱいじゃないの、でもおっぱいって手に入らないし」
すったもんだの挙句、オレンジの果汁がいいのではないかとのことになった。
「だって、ミルクじゃ牛のお乳でしょ、そんなの飲ませちゃいけないって学校の先生言ってた」
なるほど、牛と有袋類じゃまるで遺伝子的には月とスッポンほど違うに決まっている。
それで結局、フルーツジュースがいいということになるにはなったが、どうやって飲ませるかどのくらい飲ませるかは結論出ず、一番興味を示した子供は学校へと出発してしまった。
それからである。人間の乳首になるような少しずつ出て口に含ませることのできるもの、ないかな?
哺乳瓶じゃあっても大きすぎるし…。やったことないことではあるが、自分は使命感に燃えて,あれやこれやと試してみたのだった。
もう、仕事どころではない。
ストローをスポイトのようにして一滴一滴口の中に滴らせる。
飲んでくれよ、元気出せよ!それは人間の子供救うのとまったく同じ気持だ。少し飲ませては静かに寝かせ、また少し口に入れてあげては、安静にと、何度も繰り返したのだった。 つづく