これから、不定期に「生き物たちの詩」を掲載していきます
ちっちゃい命はどうなるでしょうか?
--生き物たちの詩--
「ポッサムは人なつっこいですぜ」
大工のジョンが言った。
「うちのむすめのローラが、ベランダに来るポッサムに毎日果物やってるんでさ、小学生ですがね」
ジョンは我が家よりももっと山奥に住んでいる。
「アサノラのバッキンガムプレイスの一番奥の家がおれっちでさ、3エーカーの庭がついてるんですぜ」
ジョンは、これがいつも自慢話だ。
「3エーカーたって、ほとんどがこんな急斜面ですがね」
彼が傾ける右手の肘の勾配は軽く45度を超えている。
つまり駆け下りるくらいの急斜面だってことだ。
でも彼にとってはこれがとっても自慢できる持ち物なのである。
なんてったって、その急斜面の奥にはクイーンズランド州の誇る亜熱帯の森がつづいて、どうも話によるとそこの一番低いとこには自然の滝つぼがあるらしいのだ。
閑静な住居と、背後に広がる他人には侵入できないプライベートの自然公園が3エーカー分ついているというのである。
「それでもって、おれっちの家の周囲にはこーんな高いガムトリーがあってな、その枝を伝ってベランダに毎日ポッサムがやってくるってわけでさ」
「それで、ローラは何をえさにあげるの?」
「フルーツでさ、オレンジとかスイカの切ったのとか。家中でローラだけに慣れているんでさ」
「クッキーとかパンはいけないんだってね、あげちゃ」
「そうでさ、イーストだかなんだかパンに入ってる成分が野生動物にゃよくねえっていいますで」
「ミルクって、もちろんいけないんだよね」
わかっていたけれど、今回の赤ちゃんポッサムの一件を話したついでに聞いてみたのだ。
「いけねえいけねえ、ミルクのたんぱく質があわねえんですぜ、死んじまいますぜ」
そしてこういうのだった。
「早く母親んとこに返してやるんが一番てことで、今晩あたり迎えに来るんじゃないですか」
そういうとジョンは持ち前のあったかい眼差しで赤ちゃんポッサムをちらりと覗き込むのであった。