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カテゴリ:物語り
これから、不定期に「生き物たちの詩」を掲載していきます --生き物たちの詩--
この田舎のボロ家の庭にも、いろんな植物が生えていた。 それは、言ってみれば天からのプレゼント、景品みたいなものだ。
たとえば、暖炉にくべる薪を探しに荒れた土地を一回りすれば、枯れ枝の一抱えも手に入るといったおまけがついていたというわけだ。
もし、ワイルドな花が好きならば、その朝花瓶に挿す花の小枝のひとつも拝借してこられる。
意外なことに、日本の黒松よりもまだ大作りな松の木の大木がお隣の敷地にあって、高いところで枝が自分の土地の中に、境界線を越えて激しく伸びている。
そこから落ちる長めの松葉は、ひとかきもすればバケツ一杯にもなって、冬場の暖炉のたきつけにはもってこいである。 それよりも何よりも、その木が落とす松かさの大きさは日本の松の比ではなくクリスマスのデコレーションには最適だ。
子供がこれに銀色のスプレーを施して、さっそく室内オーナメントを作った。
この丘の頂上付近には高い背丈のユーカリの木が一本立っていた。何年前から生えているかは分からない。 30メートルいや40メートルはあるだろうか?
たぶんこの土地の中の何十年、いや何百年の出来事の一部始終を見てきたことだろう。 その樹上にはたくさんの鳥の巣だか何かがからまっているのが見える。 これまで多くの生命を宿しまたそのいく末までを見とどけ続けてきたのに違いない。
人はここに来て、境界線を引き、ここからは自分の土地だとか勝手に言っていただけなのだ。 そして、つかの間子育てをして、稼いだお金で家族養って、そして去って行ったのだ。
この地の主からすれば、境界線などお笑いぐさに違いない。
そんなこと、この大木にとっては、長い長い生涯のうちのほんの一瞬の出来事だっただろう。 ただ緑の葉っぱを四方に自由に茂らせ、この乾燥した土地に自信満々と長年生き続けてきたのだ。生命あるものに恵みの宿を与え、憩いの木陰を提供し続けてきたことだろう。
今日も多くの小鳥たちがそのすっくりと伸びた樹の枝から、にぎやかにさえずっている。
私たちに、 "こんにちわ、いらっしゃい"、と言ってくれているようでうれしかった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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