これから、この土地のこと、生き物や人々との関わりなど思い出深いことを書き続けていきます。
--オーストラリアの田舎の青空の下--
今住んでいるこの家を見つけたのは偶然だった。もう7年も前のことである。
家内と一緒にいつも、時間を見つけては
運動をかねてウォーキングをしていた最中のことだった。
とある田舎びた曲がりくねった道を突き当たるとそこに「家売ります」の看板が見えた。
道路は舗装はされていたが、上ったかと思えば下り、ところどころにはお馬ちゃんの落し物、
お世辞にも高級住宅街とはトーテイ縁のなさそうな町のはずれだった。
何十年も前に建てられたと見える電柱が、ずーっと一定の間隔で道の両脇に立っていた。
何が一番みすぼらしくしているかといえば、垂れ下がった電線である。
その電線に、ワライカワセミがとまっていたりするところが、オーストラリアなのだ。
ところでこの看板の家、どーみても高級そうな家に見えない。この家の概観を悪くしているのは、土地の前に立つ二本の古い電柱である。
何でこんなに電柱が傾いているんだろうかと首傾げたくなるほど、右にかしいでいる。
それが二本とも同じ方向に傾いているってわけだ。
おまけに、申し訳程度についている門のレンガから、雑草が伸びているのにはガッカリを通り過ぎて、ツイ微笑んでしまった。
この家の二軒手前と三軒手前にも不動産業者の家屋販売の看板が立っていて、それらはいずれも売却済みと、契約中の追加の張り紙が貼られていた。つい最近まで売りに出ていたに違いない。
ということは、同じ時期に同じエリアで売りに出てて、この物件にはまだ買い手がついてないということになる。
まず、買いに来た人たちは必ずどの家も一通りみて回るに決まっている。だから、これは
売れ残ったのだ!
高いのかァ?
どこか欠陥があるのか?
はたまた、交渉が決裂する原因がいくつかあったのだろうか?
と想像をたくましくして土地の中を覗き込んだのであった。
すると、子供のものとおぼしき自転車が段だらの芝生の斜面に横に倒してある。
その生活臭のする暖かい光景。
こんもりと自然の木立に囲まれた閑静な趣。
即決はしない主義だから、その日は帰った。
でも何か引っかかる、思い出す、思い詰める。
実は自分は恋をしてしまったらしかった。