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カテゴリ:物語り
これから、この土地のこと、生き物や人々との関わりなど思い出深いことを書き続けていきます。
家内と自分はうちの中に招き入れられた。
ん? どこーか古めかしい。 内装が暗いからか? 天井の電球が全部白熱球だからか?
家の中央部には、かなりの歴史ものの暖炉があって、不ぞろいのレンガが天井まで続いていた。
見るからに馬を飼ってた昔の家主が、ここでブーツを脱いで足を暖めたんじゃないかといった雰囲気である。 「ベッドルームは?」と聞くと、奥さんのアンナが案内してくれた。
むすめが3人もいるらしい。 年頃のむすめ3人いたら、もうちょっときれいに暮らしててもいいんじゃない? て言うのは日本人テキ発想だ。 オージーは違うものさし持ってるってことだ。 窓辺の桟にはほこりがたまりまくり、タイルの目地も薄汚れている。
日本のマンションのきれいな内装でも想像していたとしたら、とんでもないギャップにきっと心臓が止まったことだろう。 日本人はどこに住んでもきれいに掃除して、きちんと家具を置いて清潔に使うから借家人としても評判がいいという話を聞いたことがある。
ところがどうだ。アンナと来たら、自分はストライプのスーツ着ているのに、家の中はまるでゴタゴタだ。 掃除などたぶん数ヶ月はやってないというご様子。 このギャップに内心自分は状況が良く飲み込めないで、頭の中がぐるぐると空回りしているみたいだった。
つまり、家を見せてほしいといった人が来るので、自分はとりあえずよそ行きの格好して待っててくれたってわけ? 昼飯、まさかスーツ着て食うわきゃないもんな、とこりゃまたいろんな憶測だ。
ステンドグラスの飾り窓がついているではないか。この古めかしいボロ家に似つかわしくない。何代かに渡って増改築されたと見えて、片やすっごく古めかしいむき出しのレンガの壁があるかと思うと、モダンな飾り窓があったりするのだった。
ただひとつ、家内が目を留めた場所がキッチンだった。
厚さ5センチはあるかという磨いた御影石(グラナイト)のキッチンベンチトップだ。 自然石である証拠に、石の結晶がきらきらと光り、手で触れるとひんやりとして心地がいい。 これだけは本物だ。 それも会い向かいにこっちに3メートル、反対側にも3メートルの広々とした台所だ。
テリー親父は?と横目で見ると、こっちが気に入ったかどうか心配なご様子。
気に入ったとは口裂けてもいわないぞ! 拙者はそう内心固く誓うと風呂場に案内されたのだった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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