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テーマ:心の病(7246)
カテゴリ:メンタルヘルス
ここ数日PHSの調子が悪く、本日ようやく設定ドライバのCD-ROMが届いたので
どうにか設定をし直したのだけど、やっぱりよく切れる…。 そんなわけで、夏休みの絵日記みたいな後追いエントリーになっていますが、ご容赦下 さい。 先週末くらいから自宅に車のセールスマンがひっきりなしにやってきていた。 父の退職前の勤務先が自宅から遠く、海に近くて、車はとうに買い替え時期だったのを、 どうせ車が痛むし、退職するまではと引っ張って、15万km乗って車検まで半年切っ たところでやっと動き出したのだ。 母は腰が悪くて出不精で、神経質なので試乗なども嫌がるため、自分からは出かけない。 でも自宅に来た客の応対は母が玄関先ですることが多い。 何人か来た人の中で、入社したばかりで、今回初の商談で、決まれば第一号のお客様に なるのだというひとがいたのだが、母は彼をいたく気に入ったらしい。 サラリーマンにありがちなあつかましさがなくて、性格も服装の雰囲気もいいと言う。 惜しむらくは、母がそのメーカーがあまり好みでなくて(車にも詳しくはないのだが)、 父や私が取り回せる大きさや予算も限られているので、これという車種が見つからない ことだ。 何度も訪ねてきては、母とああだこうだと話しては帰っていく。 後日ポストに入れられていたパンフレットに、本人のプロフィールも付いていたらしく それがまた珍しく字が綺麗で、趣味が硬筆だとか、県北の出でバレーの大会に出たとか 誕生日が私の一日違いだとか、母の気に入りそうな要素がまた増えた様子。 結局それとこれとは別だということで、別のメーカーに決まったのだが、その後も一度 彼は訪ねてきた。私は寝ていたのだが、気配で目が覚めてなんとなく聞いていた。 「今回はねぇ、ちょっともう主人が決めた、言いよるから。何遍も悪いなぁ。 でもおたくは感じがええから、そのうちまたすぐ契約も取れるわ。」 「そうですか…。ありがとうございます。」 「おたく、O型?」(母は血液型性格診断の信者) 「いえ、A型です。」 「ああ、ほんとぉ」 「え、A型ってどういう感じなんですか?」 「いや、おたくいつもニコニコされよるから、A型みたいに思わんかったわ。まぁでも 感じがええし…彼女もおるんじゃろ?」 「…ええ、まぁ…」 「ほんならええが、いや、字も綺麗で、今時珍しいわ。○○○(メーカー名)に入るのも 今頃難しいじゃろ。特技でもないとなかなか通らんわねぇ。 あと、おたく○月○日生まれ言うて書いとられたでしょう?うちの子と一日違いなんよ」 「そうなんですか~!惜しいですね」 「こんなん言うたらあれじゃけど、○月~○月生まれは精神の病気になる確率が高いんよ」 「そうなんですか…」 「うちの子もA型で、ちょうどバブル崩壊で不景気で就職なかなか決まらんで、やっと 決まったら社長に近い部署で、まぁ朝は早いわ残業は多いわで、無理しよったら精神病 になってから。」 「……」(聞こえなかったが、「僕も社員研修で毎日吐いてました、と言ったらしい」) 「ほんまぁ。じゃから、まぁ、これから仕事し出したらいろいろあるわ。おたくまだ若い から。まあまだまだこれからよ。頑張って。頑張りすぎんように頑張ってぇよ。ほんならな」 会話の途中で父がトイレに立って、話の流れを察したのか、私の様子を窺った。 私は薄目を開けて横になっていた。 「いらんことちゃあちゃか大きな声で言うてから!」 と父は玄関のドアをガンガン!と家の中から叩いて牽制。 話を終えて母が帰ってきてこっちを覗いたので、寝たふりをしておいた。 父があれこれ小声で注意していたが、 「寝よるわ。近所も誰もおりゃあせんから。」 それからもしばらく 「あの子はほんまええ子じゃ。彼女もおる、言いよるわ。そりゃ感じがええのは女が放さん からなぁ」 などと母は言い続けていた。 私は正直言って非常に不愉快なのだが、世間付き合いの少ない母が自分で感じのいいと思え る若い人に出会えることは滅多にないので、舞い上がってしまったのだろうと思えば文句を 言う気力もなくなる。 私は年下とか同い年には興味が持てない体質(?)なので、母が盛り上がっていてもあまり何 とも思わなかったが、母にしてみれば何かちょっと期待するようなところもあったのだろう かと思うとなんとも言えず侘しくなる。 彼女の有無を訊いてから私の病気のことを話すあたり、嫌な打算も感じる。 そういう風に考えてしまう自分も、結局は寂しいだけなのかも知れない。 若き社会人を元気付けるのに私の病気ネタが役に立ったのならそれはそれでいいのだが。 私も彼くらいのときは毎日泣きはらした目で会社に通いつつ恋もしていた。 苦しいことも、楽しいことも、長くは続かないというけれど、なくしたり諦めたりしたこと 以上の何かを得て、前に進めるほど強くもなれない自分。 この苦しい経験を越えてきたから、今の僕があると言える人は、幸せだ。 病気や、結婚の問題で、両親との間に入った亀裂は、時々私を孤独にさせる。 死にはしないけれど、完全に治癒することのない病。 あの時無理をしなければ、私は今でも仕事を続けていただろうか。 そのうちなんだかんだ言いつつ親を説得して、彼と家庭を築いて、今頃は子供の手を引いて いたりして…。 きっと今の私は特別不幸じゃない。 それでも選べなかった道ばかり振り返ってしまうのは 届かない想いばかりに振り回されて勝手に傷ついてしまうのは 現実よりそちらの方が美しく見えてしまうからだ。 4年前 泣きたいのに笑ってある人を見送った直後 何かの回線がショートして 倒れた日が近付いてくる 自分が壊れ始めた夏が近付いてくる この痛みがいつか誰かを温める術になると 思える日が来るだろうか 槇原敬之/UNDERWEAR ↑「PAIN」収録アルバム お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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