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『印度式』生活

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2006.10.02
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カテゴリ:槇原敬之さん
なんだか、このエントリーを書こうとしてしばし停止…。
パソコンも数日は編集画面を開いたまま完全に落とさず休止状態。
個人的には波はあるけれどそれなりに元気にしていた。

槇原敬之さんちのフレンチブルドッグのゆんぼくんが天国に旅立ってしばらく経つ。
テレビを観て笑っていたり、かと思うと眠り続けていたり、私の日常はそれほど変わっていないのだけれど、心のどこかで何かが引っかかり続けている。

我が家では、犬や猫を飼ったことがない。
カブトムシとかでんでんむしとかコオロギとかメダカとかアオムシとか、記憶にあるのはそういう小さな生き物たちだ。
私も両親もテレビで動物ものを観るのがとても好きだし、父方の祖母は猫や犬を飼っていたから、たまに里帰りしたときは可愛がっていたりもした。
今の家に引っ越してくるときに、私はリスが飼いたいと言っていた気がする。結局実現しなかったのは、私が花粉症になったことだったり、母方の祖父母の不調に伴う母の神経過敏だったり、受験期とか父の仕事の多忙とか、いろいろなことの積み重なりが原因だったのだろうと思う。
当時から母が言っていたのは
「生き物は、死んだら可哀相だから」
きっと一番生き物に惹かれる時期に、母は本当にナーバスだったから、刺激したくなかった。
祖父母を見送って数年を経た今でも、母の神経質だけは残ったから、うちの家族は増えないままだ。
だから、五匹の犬と暮らす槇原さんの生活は、逆立ちしても想像できなかった。

今回悲しいことがあって、それを悼む文章を読んでいると、自分に置き換えたらどんな悲しみなのかという部分で感情の行き詰まりを感じて、不意に淋しくなった。
別居していた祖父母を次々と見送ったこともあるし、死以外の別れもあったけれど、その時の涙は後悔に染まっていた。きっと、この想いではない。
気持ちを分かち合って自然に涙するひとに憧憬の念を抱いてしまった。

いないから失うことはないけれど、失わないから知ることが出来ないこともあるのだと知った。
彼自身のコメントとはある意味相反するこの発見が、私をしばらく支配していた。
そのかけがえのなさや、忘れられない温もりが、ひとを優しくする。
もう一度立ち上がり、残りの人生を歩いていく力をくれるのだと思う。

そんなことを考えながらテレビを観ていて、
「生きる価値のない人間なんていない」
「学校は勉強するためだけの場所じゃない」
という学園ものにありがちなシチュエーションを再現した「ベタ」ドラマの台詞で不覚にも涙が出てきた。録画が失敗して最後が切れていたのに、途中で泣けてしまって、自分で
「アホじゃなぁ、こんなとこで泣いとる場合じゃないのに…。しかもオチ分からんし。」
と呆れながら、こんな当たり前のことを見失って、自分を邪険に扱っていた頃のことをふと思い出した。

並べて話すのも変だけれど、当たり前のことに気付くのには時間がかかることもある。
会社の先輩が、飼っている犬が死んで突然仮病で会社をズル休みしたと聞いて、気の毒そうな顔をしながら心のどこかで眉をひそめていたワーカホリックの若い私。大概なんでも気さくに話してくれていた先輩が、そのことだけは私には打ち明けなかったことも今なら解る。
私の中の少しひんやりした暗い部分、いつかそこも暖められるように。不意に流れる涙の温かさに戸惑う日が来るように。

今は解らないことを誠実に受け止めて抱えていよう…。





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Last updated  2006.10.07 04:38:41
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