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カテゴリ:社会問題
今回は、前回(17日)の更新から、いくつかの事件がありました。1つは少し前に明らかになっていたトルコ軍内の事件で、もう1つは予算審議中の国家教育大臣の発言についてです。共通しているのは、“トルコ政府(軍を含む)内のイスラム教団支配が再び進んでいる”ということになりそうです。また、統一地方選挙に向けても、時間とともに政党の動向が明らかになり始めたほか、国会議員に当選した後も収監され続けているアタライ議員に関する憲法裁判所の2回目の判決も出されました。今回は、より重要と思われる後半の2つに関して紹介します。
いきなり今回の結論?を紹介しておきます。その瞬間には何が起こっているのか分からなくても、時間が経つにしたがって良く見えて来ることがしばしばあります。2018年の大統領選挙、国会議員選挙ではまだ楽勝の雰囲気のあったエルドーアン大統領、AKPあるいは共和同盟でしたが、2019年の統一地方選挙でイスタンブルとアンカラをはじめとする大都市市長を何都市も失ったところから凋落傾向が明白化しました。その後は新型コロナ対応、大規模な森林火災や水害などにも見舞われたほか、止めは“金利が原因、インフレは結果”というエルドーアン理論(高インフレ率下での金利引下げ)とBOT方式を使った癒着企業への税金の垂れ流しによって、トルコ経済が滅茶苦茶になり、かつ、財政も逼迫し、トルコ国民の大窮乏化が2022年から2023年には生活レベルで明白に感じられるほど明らかになってきました。そして、首の回らなくなったエルドーアン大統領が、外交でも経済でも、“歴史的Uターンの連発”しました。流石に、エルドーアン教徒も減ってきたものと思われ、そのための対策として表れた状態が、今日紹介するような政治状況ということになりそうです。ただし、これはコインの表側の話で、裏側はここ数回連続で紹介している“トルコ人の倫理崩壊”、や“独裁酩酊状態(自分は権力者に近いと(思っている)人は何をやっても許されると信じ、そう行動している)”ということになりそうです。あるいは、少年から老人まで、些細な喧嘩で銃を使用し、死傷事件が多発していることや、DVが頻発し、かなり多数の女性が死傷し、そして更に多く自殺・不審死が発生している社会状況とも言えそうです。 ブログ更新のための励みにしていますので、クリックを是非よろしくお願いします。
前回、「エルドーアン大統領は12月15日から統一地方選挙におけるAKP候補者を発表し始めるとしていましたが、12月29日以降に延期になりました。その最大の理由は、選挙協力交渉が上手く行っていないからと考えられます。つまり、MHPやYRP(中略)の協力を求めざるを得ない状況で、どの大都市市長、市・区長をどこにどれだけ譲るかに関して、厳しい交渉が行われていると思われます。(中略)エルドーアン大統領はAKPの得票率が35%まで低下し、MHPやYRPの協力なしでは、CHPをはじめとする野党候補に、特に大都市では確実には勝てないことが分かっているため、どこまで譲歩しなければならないかを考えているところと思われます。特に、ブルサ、メルスィン、アダナの大市長候補がどの党になるか注目されています。」と紹介しましたが、今週はこの点で明確な進展が見られました。CHPはヤヴァシュ大アンカラ市長がかなり先行している状態(AKPの行ったアンケートでは、どの候補でもヤヴァシュ市長よりも10%ポイント以上低い数値が出たとされています)で、イマムオール大イスタンブル市長は条件によっては与党候補と拮抗しているものの、やや優勢という状況と考えられています。今日(23日)、AKPとMHPは県庁所在地の市長選挙に関して、30大都市(政令指定都市)のうち、マニサ市に加えてメルスィン市もMHP 候補が立候補することとなったそうです。イスタンブルとアンカラをはじめとする残り28都市ではAKPの候補が立候補するとのことです。30大都市以外では、29都市で協力を行い、協力ない都市は22都市に限られるとのことです。この結果、YRPはイスタンブルとコンヤなどで独自の候補を立てる可能性が高くなっています。一方、DEMの動きもまだ明確化していません。結局、国民同盟から善良党が離脱した影響は決して小さくありませんが、共和同盟の中でYRPが独自の動きをすることは、善良党離脱の影響をやや弱める結果となると考えられます。なお、善良党の、あるいはアクシェネル善良党党首の御乱心?に関する分析をいつも紹介している解説者していました。これは非常に納得できるものでしたので紹介します。最初は管理者の意見ですが、「トルコ人の政治傾向は右派傾向が強く、自分は良いイスラム教徒であると感じている人は7割を超えている。かと言って、イスラム法による政治体制(シャーリア)を望んでいる人は2割以下」というのが大雑把のトルコ人の政治社会傾向と言えると思います。ここからは解説者の発言です。「90年代のトルコには、ANAPやDYPといった中道右派の中心となる政党がいくつかあったが、それがなくなった後、CHPなどの左派政党には行かないが、AKPなどのイスラム政党も支持しない層を誰が取り込むかといったときに、エルドーアン大統領はその役割を果たしそうな政党を吸収合併して、取り込みに成功した。しかし、善良党が結党してから5月の選挙直前までにある程度成功していたのは、政権獲得を目指す中道右派政党として、この層の取り込みに成功したからである。しかし、6本足のテーブルを蹴った後で支持率が急落し、更に選挙後に国民同盟を解消する決断をした後では、政権獲得を目指して加入していた人々が離党して民族主義者だけが残った。民族主義政党であれば、共和同盟の中にMHPがあるので、わざわざ野党の民族政党を支持する人はいないので、党勢の凋落が一層明確化した。党勢を取り戻そうとすれば、CHP支持者を取り組む必要があり、そのために来年3月の統一地方選挙で、イスタンブルやアンカラをはじめとしてCHPが大敗する必要があるので、それを目指して行動している」というものです。管理者もクルチダルオール前CHP党首には完全に騙されましたが、この説が正しければ、アクシェネル善良党首党もクルチダルオール氏と同じく、トルコ人のための政治を実現するではなく、自分が党首として心地良い政党を作ることだけを目指していた“程度の低い政治屋”ということになりそうです。なお、そのクルチダルオール前党首ですが、今でも5月の選挙後の復活を狙っているという話もあるそうです(この説が正しければ、(両者の主張によれば)短剣・匕首で背中や心臓を刺し合った?クルチダルオール氏とアクシェネル氏も協力できそうです!)。一方、CHP現執行部も、クルチダルオール前党首を支持していたイズミル、メルスィン及びアダナの各大市長、あるいはアンカラのチャンカヤ区長などを未だに候補者として公認していないとの指摘もありました。未だにCHPの内紛が続いているのであれば、来年3月選挙に悪影響があるという指摘もありました。執行部の口実は、現首長は市民や党員からの支持を得ているかどうかアンケートを行っているといものだそうですが、明らかに元クルチダルオール派の市・区長ばかりと言われており、大きな問題になりつつあるようです。 もう一つ大きな動きがありました。5月の国会議員選挙で当選しながら、継続していたテロ組織支援容疑裁判の有罪が当選後に確定して7ヶ月にわたり収監され続けているジャン・アタライ氏(トルコ労働者党(TIP))が“個人権利の侵害”で憲法裁判所に2回目の訴えを起こしていましたが、その判決が出されました。1回目の判決では9対5で権利侵害が認められました。この判決に対して、第1審のイスタンブル第13重罪裁判所は民事刑事最高裁判所に判断を回しました。民事刑事最高裁判所は、「憲法裁判所の判断は誤りであり、釈放すべしと判断した裁判官を権利乱用の罪で捜査すべし。国会は直ちにアタライ氏の国会議員資格を剥奪すべし」と憲法裁判所及び国会という、司法権及び立法権の最高機関に対して盾突く判決を出していました。2回目の判決では、「個人権利の侵害がある」と判断した判事の数は11に増え、侵害なしと判断した判事の数は3に減りました。そして、全会一致で「アタライ氏を直ちに釈放すべし。トルコ政府は賠償金としてアタライ氏に10万リラを支払うべし」と判示しました。今後、イスタンブル第13重罪裁判所と民事刑事最高裁判所が、より正確にはエルドーアン大統領がどう判断するかが注目されていますが、AKPにも情報ソースを持っている新聞記者によれば、“今回は釈放することになるだろう”とのことでした。
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Last updated
2023.12.24 13:03:54
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