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2024.01.15
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カテゴリ:社会問題

 今回も、前回(7日)更新からあっという間に時間が経ってしまいました。今回はまたまた新しい状況が発生しています。先週の最大の事件は、再びトルコ軍兵士9人が殉職したというものです。統一地方選挙、そして民事刑事最高裁判所による憲法裁判所判決無視事件に関しても、多少の動きが出ています。 

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  前回、「地裁(イスタンブル第13重罪裁判所)、民事刑事最高裁判所、憲法裁判所の経路を2回巡っても、一向に進展が見られないため、エルドーアン大統領の圧力で、クルトゥルムシュ・トルコ国会議長がジャン・アタライ国会議員の議員資格はく奪(喪失)を宣言するのではないかという見方が多数派となっています。」と紹介しましたが、現時点までには動きはありません。ただし、それは国会が休会していたからで、来週中に動きがある可能性が高いと見られています。エルドーアン大統領はバフチェリMHP党首、クルトゥルムシュ国会議長と会いましたが、誰からも何の発言もなかったそうです。ここ何回か、「エルドーアン大統領、あるいは共和同盟の支配下にある民事刑事最高裁判所及び高等選挙委員会(法律上は、選挙に関する最終決定機関)が、このような明らかに非常識な行動(不合理な判断)を行っている以上、現在のトルコを『法の支配の理念を受け入れている民主主義国家』と認定することは完全に不可能になったと言わざるを得ない」という指摘があることを紹介しています。一方で、エルドーアン大統領がスウェーデンのNATO加盟を認めるかどうか(形式的には国会が批准するかどうか)は今週中に明らかになると思われますが、F16の購入、国際機関・金融機関からの融資、直接投資や観光客の呼び込みといった点で、欧米諸国、とりわけアメリカとの関係改善が必要となっていますが、トルコを巡る国際政治状況を見る限り、完全に逆行している状況のように思えます。

 今回は、個別の事件の解説をする前に、エルドーアン大統領の行動原理に関する考察を紹介します。これまででも別々の機会にで、何度か紹介した話のまとめですので、目新しいところは特にありません。とは言え、一度整理してから個別の事件の説明に戻ります。いつも紹介している解説者など、反政府系の学者やジャーナリストの多くは、21年間のAKP政権について、「2010年ころまではEU加盟に向けた動きが見られ、トルコの政治と経済は、非常に良い方向に進んでいた。しかし、2013121725日事件(収賄などの容疑で現役大臣4人を逮捕しようとした検察官、警察官を、FETO所属という口実で逮捕・収監した事件=エルドーアン大統領が検察、司法機関をほぼ完全に支配下に置いた事件)で、非民主的な強権政治に大きく舵を切り、逆戻りできない状態になった。そして、今回の(イスタンブル第13重罪裁判所及び)民事刑事最高裁判所による憲法裁判所判決無視事件によってトルコ憲法を執行停止状態に追い込み(=司法機関によるクーデター)、完全な独裁国家になった」というような評価を行っています。論理的には、少なくとも2010年から201312月までの間に、大きな不正(イスタンブルの不動産を巡る、何千億円、1兆円単位の不正)が行われていたはずです。いずれにしても2013年末に、「“形式的な民主的な政治”から“表面に見える形での強権政治”に転換した」ことになります。つまり、この時点以降は「エルドーアン大統領は、“ (どんな手段を使っても)選挙で勝ち続ける”、あるいは、“大統領であり続ける”以外の選択肢はない状態になった」ということになります。これが大きな流れ(背景説明)になります。そして、ここから112日及び昨年1220日のトルコ軍兵士の殉職事件発生に関するより具体的な状況説明(諸説の説明)になります。昨年5月の大統領選挙及び国会議員選挙は、クルチダルオール前CHP党首という協力者??がいましたが(当初は善戦したようにも見えました(管理者もほぼ完全に騙されていました)が、今から思えば、エルドーアン大統領を守るための口実だったとしか思えないような言動(例えば「3選禁止、立候補資格である大学卒業」に深刻な問題あったにもかかわらず、「それを口実に、判官贔屓がエルドーアン大統領によって誘発させられてしまう」と言って、憲法裁判所や高等選挙委員会訴えなかった)も多々ありました。一言で言い換えれば、「勝つことを怖がっている野党」、「エルドーアン大統領から批判されることを恐れている野党」ということになると、いろいろな解説者やジャーナリストが指摘しています。そして、15()に行うとしていた民事刑事最高裁判所の憲法裁判所判決無視に対する抗議集会をオゼルCHP党首がキャンセルしたのも、上記と同じ「CHP指導部・国会議員に染み付いた思考回路、あるいはDNA」から生じた結果ということだそうです。つまり、集会をキャンセルした理由は、「殉職事件に関するPKK(及びアメリカ)に対する抗議よりも国内政治を優先した(=トルコ軍兵士の殉職と国防問題を軽んじている)としてMHPAKPから批判されるのを避けること」でした。さすがにオゼルCHP党首もまずいと思ったのか、「AKP及びMHPと同じ行動をとらないことをもって、“非国民”として非難するのはおかしい」と発言しています。しかし、残念ながら、反政府系テレビ、新聞を含めて、「トルコ社会全体を、弔いや“テロ”非難が覆っている状態」となっています。つまり、集会を中止しなければ、共和同盟支持者だけではなく、DEM(クルド系政党)以外の全ての政党の支持者から非難される可能性が高いのが、今のトルコ社会の状況と言えます。(「なぜ3週間後にほぼ同じような殉職事件が起こったのか」、「そもそも軍事目的は何で、どんな成果が上がっているのか」、と言った基本的な情報開示を求めることですら、国防軽視、PKK・アメリカの手先と批判される状況です)。

 背景説明が長くなってしまいましたので、各事件に関する個別説明は短くします。民事刑事最高裁判所による憲法裁判所判決無視事件については、既に紹介しましたが、クルトゥルムシュ国会議長が野党からの国会再開要求に対して、「国会で解決できる問題であれば直ぐにも臨時国会を開いたが、国会ではこの問題は解決できないので臨時国会は開催しない」と発言しました。来週早々にもジャン・アタライ議員の資格発脱宣言を採択する可能性も指摘されていますが、一方で、国会でアタライ議員の国会議員の資格剥奪を採択すれば、法律的には全く解決しないが、物理的にはとりあえず解決することになる(=賠償命令は残りますが、国会議員でなくなれば「釈放する・しない」の問題はなくなります)ため、この説もいろいろな人が指摘しています。「殉職した12人のトルコ軍兵士追悼」のためということを口実にしたのか、AKP及びCHPの統一地方選挙の候補者の発表が遅れています。党内では圧倒的な力を持っているエルドーアン大統領ですが、昨年5月の選挙の時もそうでしたが、今やAKP単独では、支持率・得票率は30%前後になっているほか、イスタンブルなどの接戦が予想される都市ではAKPMHPでも支持率は到底50%に至らず、新福祉党(YRP)をはじめ、Huda-parBBPなどの弱小政党の協力も必要となっています。ただし、5%前後の支持率に落ちた善良党が独自の候補者を立てるなど、イスタンブルをはじめ市長選挙で当選するためには、必ずしも50%以上の得票率が必要であるわけではありません(=1位の人が当選します。エルドーアン大統領が初めて大イスタンブル市長選挙に勝った時の得票率は約25%でした。これは、右派、左派などの世俗政党候補が乱立してお互いの票を食い合った結果です。いわゆる“漁夫の利”を得た例と言えます)。CHP内では、新体制派と旧体制派(クルチダルオール前党首支持派)の争いがあることは極めて明白です。一方のエルドーアン大統領も、前回紹介しましたように、基本は「大イスタンブル市長選挙に専念する」はずですが、上で紹介しましたように「新福祉党(YRP)をはじめ、Huda-parBBPなどの政党の協力が必要」という状態に陥っているため、簡単には候補者全員を発表できない状況のようです(コンヤやスィヴァスなどの市長職の立候補を譲る必要が生じる可能性があります)。なお、善良党は共和同盟に急接近しており、善良党とほぼ同じ支持率を集めるYRPは最終的にはエルドーアン大統領との妥協が成立するという見方が濃厚です。一方で、DEMは重要な意味を持つ、かつ、DEM支持者もかなりの割合で支持しているイマムオール大イスタンブル市長を応援するためか、イスタンブルでの独自の候補者擁立を見送る発言をしています(アンカラ、アンタリヤ、ボル、コンヤ、カイセリ、コジャエリ及びサムスンの7大都市でのみ、独自の大都市市長候補者を立てると発表しました)。長くなり過ぎましたので、「PKKによるトルコ軍兵士襲撃及びトルコ軍兵士の殉職が繰り返される理由・背景」については次回に譲りますが、3つの説を一言ずつで紹介しておきます。(1)PKK主導説(PKKの内部事情)、(2)イスラエル・アメリカ陰謀説、(3)エルドーアン大統領の自己都合説


 


 


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ここからはブレスレッドです。
















 






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Last updated  2024.01.15 08:18:38
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