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トルコとイスタンブール、ちょっと投資

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2024.03.18
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カテゴリ:社会問題

 今回(17)も、前回(10)からの進展、あるいは明らかになった点に関して紹介します。

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 前回、「ここ1ヶ月くらい同じことを紹介していますが、大きな変化はありません。それでも少しずつ状況が明らかになっているようです。」及び「これまで説明しましたように、大イスタンブル市長選挙には、イマムオール市長とクルムAKP候補のほか、DEMYRP及び善良党をはじめとする50人以上の候補者が立候補しています。勿論、当選争いをするのは、イマムオール市長とクルムAKP候補ですが、両候補の得票を左右する政党が3つ、とりわけ2つあります。前回も説明しましたが、DEM候補の得票が伸びればイマムオール市長の得票が減り、YRP候補の得票が伸びればクルムAKP候補の得票が減るという関係にあります。」と紹介しましたが、過去1週間でも状況はあまり変わっていません。

 この関係はイスタンブルではなく、極論すれば、残りの80県でも同じことになります。必ずしも当選を左右する水準に達していない()都市もありますが、もしも2019年選挙の時のように、「CHPと善良党が明示的に協力していれば」、あるいは「DEMが暗黙の了解で立候補を見送っていれば」、AKP候補に勝つことができると思われる都市がいくつか出てきているようです。今回の特徴はもう一つあり、「CHPでは党内闘争の結果、現職の市・区長が推薦を受けることができず、無所属、あるいは、他の政党から立候補したためにCHP候補が落選する可能性のある地域がいくつか存在している(例えば、ハタイ、アンタリヤ、エディルネ、アルトゥヴィンなど)」こと、これと構図は同じですが、理由は不明ですが「AKPから推薦を受けることができなかった現職・元職の市・区長がYRPから立候補した結果、YRP候補が当選する、あるいは漁夫の利を得た(?)CHP候補が当選するといった状況が生じる可能性(例えば、シャンルウルファ、ブルサなど)」が指摘されています。そのほか、エルドーアン大統領、あるいはAKPの社会保障政策(特に年金問題(額、資格獲得)、次いで最低賃金問題)に不満を持つ人が増えた結果、盤石な与党間(特にAKPMHP)協力があっても、CHPに議席を奪われる都市も出て来る可能性が指摘されています。しかしながら、「選挙は水もの」はトルコでも同じことが言え、蓋を開けてみるまでは結果は分かりませんが、与野党ともいくつかの都市で、「自滅」あるいは「同士討ち」という結果になる可能性があるようです。

 なお、これ以外では、過去数回の選挙では、特に昨年の大統領選挙の時に見られたのと同様に、「選挙戦では何でもあり」、より正確に言えば、「エルドーアン大統領は勝つためには、どんな手段でも使う」という状況がより一層鮮明になってきています。完全なるでっち上げの広報ビデを作って流したり、映像自体は事実(2019年に、CHP関連事務所で大量の現金を数えている様子)でも、明らかになっている事実を捻じ曲げて買収の証拠である(昨年のCHP党大会におけるイマムオール市長・オゼル党首の改革派による買収工作用、今回の大イスタンブル市長選挙における買収用)と主張したりする、ディスインフォメーションが活発に行われているそうです。なお、最後の買収用現金準備事件(?)に関しては、当時のカフタンジュオールCHPイスタンブル県支部長やクルチダルオールCHP党首が、ビデオに関する事実の説明(=イマムオール市長の擁護)を全く行っていないことから、悪意(動画を提供するなど、積極的に協力している)か不作為(誤解を解こうとしようとしない)か、いずれにしても、クルチダルオール派によるイマムオール市長に対する妨害(足を引っ張る行為)であることは間違いないと言われています。CHP支持者の内の5%ポイント程度はクルチダルオール派に同情的で、イマムオール市長をはじめ、CHP現執行部が責任を取って総辞職するしかない状況を作り出すために、積極的にAKKP候補に投票することがアンケート調査から明らかになっています。つまり、イマムオール市長はクルムAKP候補だけではなく、YRP以外のほとんど全ての政党(CHP内のクルチダルオール派、善良党、DEMなど)とも戦っていることになると指摘されていました。これは、ある意味で前回紹介した「エルドーアン後の時代=ポスト・エルドーアン」に向けた予備選挙という意味も出てきているようです。つまり、イマムオール大イスタンブル市長とエルバカンYRP党首は、真正面からエルドーアン大統領に挑戦し、一方、善良党などのその他の野党はポスト・エルドーアンの最有力候補であるイマムオール市長を潰しにかかっているということが言えそうです。

 もう一つ明らかになってきているのは、エルドーアン大統領は、何年も前から今日まで、「CHPは、テロ組織(=PKK)の延長の政党(=DEM)と協力している国家に対する裏切り者の政党である」という宣伝を行ってきていますが、AKPDEMと裏取引していることが、AKP及びDEMの双方の関係者の発言から事実上明らかになっています(=双方とも、公式には交渉・協力(=裏取引)があることは認めていません)。2019年の選挙の時は、オジャランPKK首領に書かせた手紙を公表したり、弟のオスマン・オジャランをTRT(トルコ国営放送)に出演させたり(インタビューを放送)という形で「PKK=HDP(DEMの前身政党)の政治利用」を行いましたが、その時は獄中のセラハッティン・デミルタシュ元HDP共同党首がイマムオール大イスタンブル市長を支持するように呼び掛けたため、この作戦は失敗しました。そのため、デミルタシュ元共同党首が今回はどのような発表を行うかが注目されています。「DEM候補への投票を呼び掛ける」のであれば“積極的にエルドーアン大統領に協力した”ことになり、「イマムオール市長への投票を呼びかけない」のであれば“消極的にエルドーアン大統領に協力した”ことに(少なくとも「結果として、協力したこと」に)なります。「DEM幹部がAKPと裏取引を行っていること」はほぼ確実と見られていますが、これに対するデミルタシュ元共同党首の反応と、そして何よりもDEM支持者の反応が、非常に注目されます。なお、裏取引の内容としては、「南東部でDEM所属市長が誕生しても、口実を見つけて逮捕・排除し、代理市長を任命することは、今回はしない」や「オジャラン首領やデミルタシュ元共同党首をはじめ、PKK構成員やDEM政治家の減刑、釈放」などの可能性が指摘されています。


 最後に、為替に関して少し紹介します。選挙を2週間後に控えた段階で既にリラ安が進んでいます。選挙後にIMFとの協力を行う可能性について、以前紹介しましたが、IMFの監視をエルドーアン大統領が受け入れるかどうかは、大いに疑問があると言わざるを得ません。が、そうせざるを得ないほど、トルコの財政・経済の状況が悪化していても、管理者は全く驚きません。ただし、「エルドーアン王国(王政)の樹立がエルドーアン大統領の目的」であるため、IMFの支援を受けるために“一時的な譲歩”を行ったとしても、“経済状況が改善した段階で強権政治に先祖返りする”ことは想像に難くありません。そのため、IMFの介入が成功するためには、「司法の独立と報道の自由の回復」が最優先される必要があると思われます(少なくとも“中央銀行の独立の回復”よりも優先されるべきです)


 

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Last updated  2024.03.18 13:20:49
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