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カテゴリ:社会問題
今回(30日)は、明日(31日)行われるイスタンブル選挙(統一地方選挙)の直前状況について紹介します。
ブログ更新のための励みにしていますので、クリックを是非よろしくお願いします。 先に結論を紹介すれば、トルコ3大都市(イスタンブル、アンカラ、イズミル)の大都市市長(=行政範囲は県と同じ)をはじめとして、CHPがいくつかの大都市の市長を維持・獲得する一方、野党協力が崩れた結果、CHPが市長職を失う都市も出てくる、そして、当初の予想にはなかったYRP(新福祉党)とZP(勝利党)の躍進により、両党による県庁所在地市長(含む大都市市長職)の獲得もあるかもしれないという状況です。ただし、これまで何度も指摘してきましたように、「選挙は水物」で、また、「アンケート調査結果がどの程度信じられるのか」についても疑問なしとしませんので、明日の夜、日本時間4月1日深夜の結果発表まで、どのような結果になるか予断を許しません。 前回、「一言で言えば、“エルドーアン大統領の悪あがき”とでも言えそうな状況になっています。昨年5月の大統領選挙の時よりもさらに余裕がなくなっているように見えます。」と紹介し、前回の最後には、「これまでアンカラはヤヴァシュ市長の勝利がほぼ確実ということを紹介してきましたが、新しいアンケート調査結果によれば、イスタンブルも調査の誤差をはるかに超える9%ポイントの差をつけて、イマムオール大イスタンブル市長がリードしているとのことでした。」と投票1週間以上前の状況(3月前半の調査結果)を紹介しました。 今日もメトロポ(-)ル社のアンケート調査結果(3月後半(先週から今週にかけての)調査結果)について紹介します。傾向は、前回紹介した状況がさらに加速しているようです。12月、1月、2月、3月前半、3月後半のイマムオール市長とクルムAKP候補の支持率の差を見た場合(未定を分散させ、候補者全員で100%に調整)、順番に、17.4(%ポイント)、4.0、3.3、10.7、11.6となっています。特に3月になって両候補の支持率の差が大きく開いてきた理由として、エルドーアン大統領をはじめ、高等選挙管理委員会(YSK)をはじめ、各地の選挙管理委員会を構成する判事の任命に絶対的な影響力のある法務大臣、投票所の警護や投票用紙の監視などの物理的な選挙の安全に責任を負う内務大臣、国内政治には基本的に無関係な外務大臣など、17人の大臣がクルムAKP候補の応援のためにイスタンブル入りし、知事、郡長、ジャンダルマ(内務省軍)地域司令官などが国家予算を湯水のごとく投入して、全政府・国家を挙げてクルム候補を応援したため、多くの国民は“たった一人でトルコ政府と戦うイマムオール市長”をかえって支持する(判官贔屓)結果になったこと、そして、クルム候補が余りにも軽量、知見・経験不足で、イマムオール市長とは比べものにならないことが指摘されています。特に法務大臣は応援演説で「イマムオール市長はすでに負けていることをまだ知らない」と発言し、また、内務大臣も応援演説で「(イマムオール市長やCHPを)我々は不安・疑心暗鬼にしている、今後もし続ける」と責任を負っている大臣としてするべき発言とは真逆の発言をするなど、エルドーアン教徒以外の普通のトルコ国民にとっては反感を煽るだけのような状況がしばしば見られていました。当然ながら、これだけが原因ではありません。多分、さらに大きな影響はトルコ経済の惨状、とりわけ年金生活者の大きな不満が原因と考えられます。年金生活者をはじめ、最低賃金労働者などの生活苦も大きく影響しています。5月の大統領選挙・国会議員選挙からの10ヶ月余りでドル/リラ相場、そしてガソリン価格などは100%の上昇(リラの価値は半分以下)が生じ、エルドーアン大統領の経済運営手腕に大きな不満が出ています。挙句の果てに、エルドーアン大統領は「高インフレ下のトルコ経済は底なし沼である。インフレ率が低下するまでは何をやっても無駄。そのため、7月に年金の見直しを検討する」と述べ、トルコ経済の惨状を認め、かつ、年金生活者に対しては「年金額引上げ」ではなく、「見直しの検討」を約束するだけにとどまっています。 追加:国家・政府の権力・予算の悪用ではありませんが、トルコで如何に広く(恒常的に?)イスラム(教)が悪用されているかが分かる例もありました。ある有力なイスラム教団のトップが、「共和同盟(AKPとMHP)の候補者に投票しない人は、宗教上の罪を犯したことになる」と発言しました。そのほか、大統領選挙の時に、PKKとCHPが協力しているというでっち上げのビデオが効果を示したことに味を占め(?)、今度は先日紹介した「買収用の現金の計算ビデオ(本当は4年前にCHPイスタンブル県支部用の建物を購入する際に撮影された映像)」を、今度は「PKKへの貢ぎ物(?)を準備しているところ」と宣伝し始めました。いずれにしても国家元首(大統領)としての行動は全くなくなり、AKP総裁として、かつ、政治倫理は微塵もない、言動を繰り返している状況です。なお、「クルド問題を解決するのは、CHPではなくエルドーアン大統領である」を宗旨替えしてイマムオール市長ではなく、クルム候補を応援する声明を出していたセラハッティン・デミルタシュ元HDP(現DEM)党首は、29、30日に予定されていた“最後の声明”を出すのをやめたそうです(“AKP支持”から“中立”に立ち位置を変えた?)。 メトロポ(-)ル社のアンケート調査結果では、AKP・MHP支持者の約10%、DEM支持者の50%、善良党支持者の65%、YRPやZP支持者の15%はイマムオール市長を支持し、「誰が大イスタンブル市長選挙の当選者となると思うか」という質問では、50.3%がイマムオール大イスタンブル市長と答えています(クルム候補は31.5%、意見なし・無回答が16.9%)。更に、「今週末(日曜日)に国会議員選挙があれば、どの党に投票するか」という質問(イスタンブル県=市のみ)に対しては、CHP27.4(%)、AKP26.2、DEM7.0、MHP4.2、YRP4.2、善良党3.4、ZP3.4、TIP1.5、不明21.0(未定11.9、非投票4.9、無回答4.2)という結果になっています。あくまでもイスタンブル県だけの話で、トルコ全体の話ではありませんが、イマムオール市長人気のお陰で、イスタンブル県ではCHPが第1党となる勢いです。これはあくまでもアンケート調査結果であり、本当のトルコ国民の声は明日(31日)の投票結果で示されます。 最後に、“最も重要な点である”とほとんどの識者、新聞記者などが指摘している点を再度紹介します。それは、「投票の安全性確保」です。より具体的には、“投票(箱)の安全性確保”がどの程度できるかで、本当に当選できるかどうかが決まることになりそうです。勿論、“投票箱の安全性”には、開票作業、YSK(高等選挙委員会)における集計及び発表まで、全ての過程が含まれます。つまり、“有権者の意思表示(投票結果)が正しく発表されること”を意味します。それは、「トルコ国民(有権者)の投票結果が正しく反映されること」です。もう少し詳しく紹介すれば、「一切の妨害、強制などもなく、自由に投票することができること。そして、投票結果が正しく数えられ(すり替え、破棄、得票数のごまかしなどが無く)、全ての票が正しく集計され、その結果が、速やかに、そのまま発表される」ということです。異議申立てがあった場合には、それに対して正しい対応(票の数え直し、集計のやり直し、速やかな結果発表)が行われ、当選確定後には速やかに当選証明書が発行されることを意味します(本当は“選挙人名簿の正確性”も含まれますが、今回の選挙では、ほとんど報道はありませんでした)。市・区、県、全国(=高等選挙委員会(YSK))と異議申立てが上がって行く可能性があるため、投票用紙も少なくともYSKの決定が出るまではしっかり監視する必要があります。2019年に行われた前回の選挙では、投票用紙が入った大きな袋の上で寝ている(持っていかれたり、すり替えられたりしないようにするため)CHP選挙監視員の写真も出回りました。昨年5月の大統領選挙及び国会議員選挙では、クルチダルオールCHP党首(当時)とその執行部による故意か重大な過失かは不明ですが、選挙人名簿の正確性をはじめとする、選挙の安全性確保で全く不十分であったことが指摘されています(選挙結果が変わってしまった可能性は否定しきれません)。 次は、イスタンブル市長選挙をはじめとする統一地方選挙に関する速報をお知らせする予定です。
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2024.03.31 06:53:25
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