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2024.09.15
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カテゴリ:社会問題

 今日(914)は、最新のトルコの状況について紹介します。

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 今日(9月14)も、前回 (8月14)からきっちり1ヶ月が経ってしまいました。前回も「せめて2週間に1度は更新しようと思っているのですが、このところ結構忙しくて手が回りませんでした。このブログを楽しみにしていただいている方には申し訳ありませんでした。一方、トルコの状況は1ヶ月前とある意味状況は変わりません。小さな変化はいくつも起こっているのですが、大勢には大きな変化が無いと言えそうな状況です。」と言い訳(?)をしたのですが、今回も同様に、大きな変化は見られないように思います。

 前回、「この1ヶ月で表面上は色々と変わりました。(中略)この口撃合戦の結果、あるいは目的は、エルドーアン大統領が、トルコ国民の関心を経済問題から逸らすために取ったものと考えています。つまり、親パレスチナ政策及びイスラエルとの戦争に危機を煽ることにより、高インフレ率、物価高・生活苦からトルコ国民の関心をそちらに向けようとしているものと考えます。トルコにおける高インフレ率、物価高・生活苦はひどくなることはあっても、少しも改善されないという状況がもう何年も続いています。これまで何度も紹介してきましたが、(1)エルドーアン大統領には、トルコ経済を立て直そうという意思が全く見られない、(2)シムシェキ国庫・財務大臣には、トルコ経済を回復させる政策を実施する能力(又は意思)が無い、という状況分析は、間違っている可能性が極めて低いことを示しています。」と紹介しましたが、この流れから大きく変わっていないと言えそうです。


  7月中旬から8月中旬に続き、8月中旬から9月中旬の1ヶ月でも、表面上の出来事は色々と変わりましたが、本質は変わっていないように思います。つまり、「インフレ率をはじめとするトルコ経済のマクロ状況を改善する能力も意思もないエルドーアン大統領が、高インフレ率、物価高・生活苦からトルコ国民の関心をそらそうとしている。しかし、トルコにおける高インフレ率、物価高・生活苦はひどくなることはあっても、少しも改善されていない。」という状況と言えそうです。

 具体的な話題は3つあります。1つは「8歳の少女がディヤルバクル県の小さな村で行方不明になり、19日後に遺体が発見されたが、その殺人にかかわったのは母親、叔父、兄など、親族である。さらには、その村はほとんどが親戚関係にある人で構成されている。この問題を契機に、今回亡くなった少女の姉が5歳の時に亡くなっていたが、その死亡原因にも疑義があることが判明した。」という事件です。こちらはトルコの歪んだ社会因習か、あるいは親族間のどろどろの人間関係か、その解明が待たれていますが、親族10人が逮捕・収監されても、真の殺人犯が特定されていない状況です。もう1つは、トルコ陸軍士官学校の卒業式で、首席卒業生の先導に続いて、卒業生が誓いの言葉を述べる場面で、「我々はケマル・アタテュルクの兵士である」という部分を一部の政治家が問題にし、卒業式から8日後に、エルドーアン大統領も「このような輩が軍の中に50人いようが、100人いようが、すべて排除されなければならない」と発言したことで、与野党の舌戦が激化しているというものです。管理者は、この2つの問題が解決せず、あるいは、わざわざ問題にされているのは、上で紹介しましたように、「トルコ国民の関心を経済問題からそらせるため」だと感じています。第1の問題は、事件の本質が「親族内のどろどろの人間関係」ではなく「トルコの歪んだ社会因習」であるとを匂わせることにより、人権団体や女性団体もこの問題に関心を集中させることになりますし、第2の問題は「アタテュルク主義者の若い軍人たちがクーデターを起こし、イスラム勢力(=エルドーアン大統領)を(軍事)力で排除しようとしている」というイメージを広げることにより、失われていたイスラム勢力(主義者)からの支持を回復できると考えていることは十分にあり得ます。野党が「今回と同様の宣誓は過去数年間続いている。なぜ今回が問題になるのか」と反論しているのに対して、国家防衛省は「発言は社会状況によって、異なった意味を持ち得る」と反論しています。国家防衛省の反論は言葉上は全く正論だと思いますが、その状況の変化が「エルドーアン大統領に対するトルコ国民の支持が完全に失われた」というものであり、「自分たちが墓穴を掘って、まさにその穴に落ちたために勝手に危機感を募らせている」という状況と言えそうです。もっと言えば、2023年の国会議員選挙と大統領選挙では国家権力を駆使(=総動員)して、選挙干渉を行うことで勝利することができましたが、20243月の統一地方選挙及びその後の経済状況の悪化により、エルドーアン大統領及びAKPへの支持率が30%を割る状況になっているため、「軍、ジャンダルマ(内務省軍)、警察などの治安組織が自分たちの言うこと(=違法な命令)を聞かなくなるのではないか」という危機感から出た騒動ではないかと考えられます。

 3つ目の話題ですが、こちらがようやく(?)早期総選挙に関するものです。以前もAKPCHP陰謀(結託説)を紹介し、特に「エルドーアン大統領・クルチダルオールCHP前党首間には結託があったと考えぜるを得ない」ということを説明したことがあります。そして、現在でも、エルドーアン大統領・オゼルCHP党首結託説が一部で強く主張されています。管理者は、「可能性は否定しないものの、オゼル党首本人はその気はない。ただし、取り巻きから操られている可能背は十分ある」と考えています。それでも、オゼルCHP党首は以前よりはもっと明確に「202511月までに早期選挙を行うことを発表すべし。そして、遅くとも20263月までに実施すべし。そうすれば、トルコ大国民会議(国会)で早期選挙の決議に賛成するので、エルドーアン大統領は最後の立候補資格を得ることができる(2期目の途中で議会が早期選挙を決めた場合は、大統領はもう一度立候補できるという規定が憲法にあります)。」と発言しています(しかし、読み方によっては、「死ぬまで大統領を続けることができる」という指摘・批判もあります)。いつも紹介している解説者は、「大統領立候補資格を取引材料としてエルドーアン大統領に早期総選挙をお願いするのではなく、国民の力(社会的圧力)を背景に早期総選挙を勝ち取るべきだ」と指摘しています。その理由の一つは、上でも紹介しましたが、エルドーアン大統領のコントロール下にあるYSK(高等選挙委員会)が「2期目の途中で議会が早期選挙を決定した場合」の解釈を捻じ曲げて、エルドーアン大統領が死ぬまで大統領となる可能性が生じることを懸念しているためと思われます。また、この問題からの派生なのか、再び「エルドーアン大統領の大卒資格問題」(トルコ大統領になるためには大学卒業資格が必要ですが、エルドーアン大統領が主張しているマルマラ大学卒業資格には、大きな疑問が指摘されています)も指摘され始めました。野党系テレビの解説者は、「イマムオール大イスタンブル市長に対する侮辱罪有罪確定(禁固3年以上)による被選挙権剥奪も、エルドーアン大統領に対する大学資格不足による立候補妨害も、いずれも本人又はその後継者(代理人?)への同情票につながる」と指摘していました。話が少しずれてしまいましたが、「“与野党ともに、初当選した国会議員が生涯議員年金資格を獲得できる2年間の議員実績を獲得できる20255月以降”での早期総選挙実施に向けて、オゼルCHP党首が重い腰を上げた」というのが、最後の、一番小さな(?)トルコにおける最近の話題ということになります(少なくとも、“トルコ国民の生活苦からの一刻も早い解放よりも、同党所属国会議員の年金資格獲得(=党内事情)を優先していること”は明らかです)。これ以外で、細々と“高インフレ率、とそれに関連する問題”が指摘されています。特にトルコ統計庁(TUIK)によるインフレ率の誤魔化し(現実には年率約100%にもかかわらず、約50%として発表)、年金・最低賃金の引き上げ要求、物価高・生活苦などについては、反政府系のニュースではほぼ毎回報道はあるものの、上で紹介した最初の2つの問題の後でようやく紹介されている程度です。


 


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Last updated  2024.09.16 04:52:32
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