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カテゴリ:社会問題
今日(10月13日)は、前回(9月30日)から約2週間が経過しました。今回も、トルコの最新の状況について紹介します。 ブログ更新のための励みにしていますので、クリックを是非よろしくお願いします。 にほんブログ村
前回、「今回も、過去2、3ヶ月と同様に、トルコでは大きな変化は、少なくとも表面上はありません。それでも、少しずつ重要な変化の萌芽が見られ始めているようにも思います。」と要約し、その後で、「AKPからは『早期総選挙はない』という公式発表が繰り返し行われています。この発表からわかることは、『エルドーアン大統領は次の大統領選挙に出られないので、約3年半後に引退する、少なくとも大統領ではなくなる』ということです。あるいは、「これから約2年半の間で憲法改正を行い、次の大統領選挙に出られるようにすることを考えている」ということになります。」と紹介しました。今回はこの点に関する最新の情報を中心に紹介します。 と、ここまでは10月6日に書いていたのですが、そこから1週間以上たってしまいましたが、説明しようとしていた動きがより明確化し、より大きく動き出しました。10月3日だったと思いますが、突然、エルドーアン大統領がバフチェリMHP党首を訪問しました。エルドーアン大統領とバフチェリMHP党首が会談すると大きな動きが起こるといわれていましたが、今回もそれが証明されました。既に10月1日の大トルコ国民会議(国会)新年度の行事で、バフチェリ党首がDEM所属国会議員が着席しているところまで行き、握手を求めました。その理由を新聞記者から聞かれて、「世界で平和を求めているにもかかわらず、国内で平和がないのはおかしい。(だからそうなるように行動した)」という趣旨の発言を行いました。表面的には何の違和感もない発言ですが、つい先日まで、「DEMはPKKと一体であり、PKKの手先の政党は解党する必要がある。DEMと協力するCHPもPKKの手先である」という趣旨の発言を繰り返していたことを考えると、今回のバフチェリ党首の発言を額面どおりに受け取る人は誰もいない状況でした。10月6日の段階では、バフチェリ党首の行動の目的は明確化していませんでしたが、その後、「憲法改正を行い、エルドーアン大統領が4回目の任期に立候補できるようにすること」であることが明確化しました。少し解説が必要です。2017年に憲法改正のための国民投票が行われ、議院内閣制度も併存すると言える以前の政治体制から、現在のエルドーアン大統領一人が権力を掌握する形の大統領制度(首相職がなくなり、大臣も大統領からの任命のみ)に移行しました。しかし、旧憲法下でも、新憲法下でも、「大統領の任期は2回まで」との規定があります。エルドーアン大統領は2014年の選挙で国民から初めて選ばれ、2018年の新憲法下で2回目の当選を果たしましたが、2023年の大統領選挙では、エルドーアン大統領の事実上の支配下にある高等選挙員会(YSK)は、「新しい大統領制度が始まった新憲法下の2018年の選挙が1回目の任期であり、2023年の選挙は2回目に当たるので、エルドーアン大統領には立候補資格がある」と判断されました。この解釈は、エルドーアン大統領の指示に基づいて新憲法を作った憲法学者を含め、司法関係者のほとんどは「ありえない」としていた解釈でした。たとえ、この「ありえない解釈」を前例とするとしても、2018年以来、憲法改正が行われていないため、「(定数の5分の3(360票)以上の多数で、)国会が大統領選挙と国会議員選挙を行うという議決をして選挙を行わない限り、エルドーアン大統領が次の選挙に立候補することはできない」と解釈されています。国会の定数の5分の3(360票)以上3分の2(400票)未満で憲法改正が採択された場合には、国民投票によって国民に憲法改正是非を問う必要があります。一方、3分の2(400票)以上であれば、国民投票を行う必要はありません。現在、トルコ経済はボロボロで、エルドーアン大統領の人気も地に落ちた状態、AKP結党以来、最低の支持率で推移している状態ですので、少なくとも、「エルドーアン大統領のための憲法改正」を国民投票にかけても、国会の議決で早期総選挙を行う(2期目の任期中に国会が早期選挙を行うと議決した場合は、2期目任期がなかったこととなり、もう一度立候補できます)のと同様に、勝てる可能性が極めて低いと考えているものと思われます。いずれにせよ、早期総選挙にせよ、憲法改正にせよ、最低でも国会で360票が必要になりますが、共和同盟(AKP+MHP+その他弱小政党)だけでは到達することはできず、DEMの取り込みがエルドーアン大統領の生き残り(=最低5年間の大統領職の延長)のためには絶対必要な条件となっています。 技術的な説明ばかりになってしまいましたが、10月3日のエルドーアン大統領とバフチェリMHP党首の会談で、「DEMを取り込んだ憲法改正を実現させること」が決められたことはほぼ確実とみられています。そして、実際にその動きが明確化しています。 これ以外では、オゼルCHP党首の裏切り・AKP取り込まれの可能性ほか、CHP内の4分裂内紛、それに伴うCHPの支持率低下などについての説明を行うつもりでしたが、これは次回に譲りたいと思います。(AKPは低迷継続で、CHPが支持率を落としため、両党の支持率は30%前後で拮抗している状態です) それに替えて、「トルコ政府(トルコ統計庁(TUIK))発表の統計を信じてはいけない」という具体例を紹介します。これまでも時々紹介ましたし、前回も、「最後に、これまで何度も指摘しましたが、相変わらず報道機関や投資関連企業の報道・発表、あるいはソーシャルメディアでは『大本営発表』が垂れ流しになっているように感じます。(中略)『トルコ政府発表の数字を鵜吞みにすることは極めて危険である』と考えざるを得ませんので、あえて、『大本営発表を信じることなかれ』と再度指摘したいと思います。(スワップを期待してトルコ・リラを買っている場合でも、『ある日突然、リラ全面売りに回るための心の準備をしておくべし』という意味です)」と紹介しました。インフレ率については、毎月発表になっているイスタンブル商業会議所(ITO)と独立経済学者グループ(ENAG)の数字とあわて時々紹介していますが、今回は、TUIKが最近発表した「貧困層の減少」について紹介します。TUIKは、「トルコにおける貧困層の人口が、2023年の1,200万人から2024年には1,130万人に減少した」と発表しましたが、TURK-IS(テュルク・イシ。最大の国家公務員労働組合連合会。政府に近い)は、「月12,000リラ~20,000リラの収入で生活している人の数は約3,000万人」と発表しました。トルコの現在の最低賃金は月約17,000リラ、最低の年金額は12,000リラであり、かつ、この数字ではとても生活できないことが明らかになっています。つまり、「月2万リラしか収入がない労働者は貧困層」とほぼ断定できます。つまり、御用組合の発表でも、TUIKが発表した1,130万人の少なくとも2倍、3倍近い貧困層が存在していることになります。
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Last updated
2024.10.14 14:43:28
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