カテゴリ:株式投資
財務相交代に市場は円高阻止・金融緩和の強化を予想-債券には逆風も 1月7日(ブルームバーグ): 藤井裕久氏の財務相辞任と菅直人副総理の後継就任を受け、東京市場では鳩山由紀夫内閣の円高・デフレ阻止の姿勢が明確化し、日本銀行への金融緩和圧力が強まるとの見方が出ている。来年度には、元大蔵官僚だった藤井氏と比べ、景気重視・財政規律の後退が意識される場面もあるかもしれないという。 鳩山首相は6日夜、体調不良を理由に辞意を表明していた藤井財務相の辞任を了承し、後任に菅副総理を充てるなどの人事を決めた。人事は7日付。一連の人事は首相自身が決めた後、民主党の小沢一郎幹事長に伝え、小沢氏も了承したという。 バークレイズ銀行の山本雅文チーフFXストラテジストは、菅副総理への財務相交代により、デフレの深刻化や支持率低下につながりかねない「行き過ぎた円高は阻止するという鳩山内閣の姿勢が一段と明確になる」と分析。海外発の金融危機や景気低迷などで円高が再燃し、日銀の追加金融緩和にもかかわらず1ドル=85円を再び突破する場合には円売り介入があると予想する。 山本氏は、円・ドル相場が今年85-100円で推移すると予測。年後半にかけて、円安が進むと見ている。 菅副総理は円の対ドル相場が1995年7月以来の高値をつけた11月下旬、鳩山首相や藤井財務相と足並みを揃え、円高進行への懸念を示した。12月4日には「もう少し円安が進んでくれると良い」、17日には「ある程度の円安は好ましい」などと述べた。 藤井財務相は9月の就任当初から度々、各国による通貨安競争は避けるべきだとの持論を披露。内需重視が民主党の基本方針とあって、市場では一時、円高容認と受け止められた。 日銀に金融緩和圧力も 円相場は11月27日に一時1ドル=84円83銭に上昇。ただ、米雇用情勢の持ち直しなどを受け、今月4日には93円22銭と約4カ月ぶり安値をつけるなど、足元では円高は一服している。戦後最高値は95年4月につけた79円75銭。財務省によると、政府・日銀は04年3月を最後に為替市場介入を実施していない。 菅副総理が財務相に就けば、デフレを強めかねない円高・株安が再燃した場合、日銀に対する金融緩和圧力がさらに強まるとの見方もある。 菅副総理は11月20日に経財相として、日本経済が「緩やかなデフレ状況にある」とした月例経済報告を関係閣僚会議に提出。政府が12月25日に示した2010年度の経済見通しでは、生活実感に近い名目経済成長率を0.4%程度と3年ぶりのプラスに設定した。 円が急騰した11月27日夜には、デフレは「為替の問題でもあり、金融政策と財政政策が一体となって対応しないといけない」と発言。12月1日午前には、量的緩和政策には一般的にデフレを緩和する効果があるとの見解を示した。 日銀は同日、臨時の金融政策決定会合を開き、政策金利の0.1%で3カ月物の資金10兆円を供給する追加緩和策を決定。白川方明総裁は記者会見で「広い意味での量的緩和だ」と同措置を説明した。 債券相場、懸念は来年度 ドイツ証券の安達誠司シニアエコノミストは、菅副総理は「円高がデフレを強める波及経路をかなり懸念している」と指摘。円高が再燃した場合には、日銀に対し、藤井財務相より「厳しい姿勢で臨む可能性がある」と読む。 政府は12月25日までに、09年度第2次補正予算案と10年度予算案をまとめた。このため債券市場では、大蔵省(現・財務省)主計局出身で財政規律重視派とされる藤井氏の辞任によって目先の債券相場が動揺するとの懸念は広がっていない。 みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは、藤井氏の辞意表明は「予算の季節が終わり、市場に影響が出にくいタイミングだった」と指摘。長期金利の指標とされる新発10年物国債利回りは今年1-1.5%を中心に推移すると予想している。 ただ、今後の景気次第では来年度入り後、7月の参院選前に10年度補正予算が組まれる可能性もあるため、菅副総理が財務相として与党からの歳出増要求を適切に抑えられるか、が市場の焦点となりかねないと市場関係者はみている。 シティグループ証券の佐野一彦チーフストラテジストは、藤井財務相と比べると「菅副総理の財政運営手腕は未知数の部分が多い」と指摘する。財政規律に関しては「やや景気重視」と見られ、債券市場には「幾分マイナス」と言う。 政府が12月25日決めた10年度の一般会計予算案の総額は92兆2992億円で、新規国債発行額は44兆3030億円。機関投資家などに入札方式で販売する国債の市中発行額は144兆3000億円で過去最大。国・地方の長期債務残高は国内総生産(GDP)の181%に当たる862兆円程度と過去最悪を更新した。 記事に関する記者への問い合わせ先:東京 野澤茂樹 Shigeki Nozawa snozawa1@bloomberg.net 更新日時: 2010/01/07 10:33 Bloomberg http://www.bloomberg.co.jp お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010.01.08 00:09:00
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