カテゴリ:株式投資
日航が会社更生法申請:社債・株式や今後の手続きは-Q&A 1月19日(ブルームバーグ):企業再生支援機構の支援で再建を目指していた日本航空は、東京地裁に会社更生法の適用を申請して受理された。負債総額(グループ2社含む)は2兆3222億円と日本企業で4位、金融を除くと過去最大の破たんになった。 東証で19日開示した資料によると、航空会社アジア最大の日航については再生支援機構が直ちに支援に名乗りを上げた。機構は3000億円を出資、債権総額1兆1578億円のうち7300億円の放棄や100%減資なども発表された。 日航破たん処理は、関係者の利害を前もって調整する事前調整(プレパッケージ)型として政府や債務者などが話を進めた。最高経営責任者(CEO)には稲盛和夫京セラ名誉会長(77)が内定している。 東京商工リサーチの友田信男情報部上席部長は、日航の再生手続きについて「個人を対象として事業を手掛ける大企業が、資金繰りや信用・商権を維持しながら再生を目指すモデルケースになる意義深い例」と指摘した。 会社更生法、社債や株価の価値、今後の手続きについての一問一答は以下の通り(帝国データバンク、商工リサーチの資料、森・浜田松本法律事務所の井上愛朗弁護士の話を基に作成)。 (Q)会社更生法とは債務返済が不可能になったなどの経営に行き詰った株式会社を再建するための計画や手続きなどを定めた法律で、債権者や株主などとの利害を調整して会社の再生を目的としている。取締役会の決議事項で代表取締役が本社所在地を管轄する地方裁判所に申し立てる。生命保険などの相互会社の場合は更生特例法になる。 (Q)民事再生法との違いはともに再建目的型の法的整理だが、民事再生法は株式会社以外の法人や個人にも適用可能。1民事再生法では現経営陣が引き続き経営に当たることが可能だが、会社更生法では裁判所に選任されない限り現経営陣は残れない(旧会社更生法では総退陣)2再建期間が民事再生法は最長10年で会社更生法は同15年(特例で5年間延長可能)3担保権行使について民事再生法は可能だが会社更生法は不可能――という3点が大きな違い。 (Q)更生計画の成立要件は一般債権(更生債権=担保がない債権)部分については、議決権を行使した債権総額の2分の1超。民事再生法の再生計画は議決権行使数の2分の1以上かつ総額の2分の1以上。 (Q)他の破綻法は清算目的型の法律として破産法、会社法での特別清算がある。こうした法的整理以外に、債務調整の手段として「事業再生ADR手続き」(裁判外紛争解決手続き)などがある。米国の連邦破産法11条(Chapter11)は再建型法的整理(会社更生法と民事再生法)で、日本の民事再生法に近い。 (Q)事前調整(プレパッケージ)型再生とは事前にスポンサー(支援企業)や債務処理策をまとめた上で、会社更生法や民事再生法の適用を申請する方法。事業価値の減少を抑えながらの再建が可能で、過去に日本では産業再生機構がマツヤデンキで、米国ではゼネラル・モーターズ(GM)が活用した例がある。日航ではスポンサーに企業再生支援機構が内定、日本政策投資銀行や3メガバングなどが保有している債務処理策も固まっていた。年金債務の削減についても、従業員とOBそれぞれの3分の2以上が賛成して減額(従業員は平均5割超、OBは同3割)について12日までに合意している。 (Q)企業再生支援機構とはもともとは地域経済を支える企業の再生のための支援組織として2009年10月14日に発足、資本金200億円は政府と金融機関が100億円ずつ出資した。社長は金融業界出身の西沢宏繁氏。5年間の時限的な組織で、1案件については3年での支援完了を目指している。支援する企業に融資や出資をする際の資金は、借入金と社債発行で調達する。日航についてはスポンサーとなり、融資と出資をする。過去には産業再生と不良債権処理を目指して産業再生機構が設立されていた(2003年4月発足-2007年3月解散)。 (Q)社債の価値は会社更生法の申請・受理の段階で社債はデフォルト(債務不履行)になる。一般的には、無担保社債は一般債権と同じ扱いで、更生計画に盛り込まれるカット率に従って返済額が決まる。担保付社債は担保が時価評価された分が返済されて、残りは一般債権と同じ扱いになる。日航については一般債権のなかの一般商取引債権(マイレージ、航空券、優待券や燃料取引)は全額保護される。日航の社債が一般商取引債権に入っているかどうかは不明だが、一般債権の金融債権に入るならば返済率に従って返済額がカットされる。グループ会社を含めて日航は現時点で、無担保社債4銘柄計470億円、ユーロ円建保証付の転換社債型新株予約権付社債(CB)202億円が残存している。 (Q)株式の価値は会社更生法を申請した会社は一般的に100%減資をするので、普通株の価値は理論上ゼロになる。昨年9月末で日航株8043万株(2.9%)を保有して筆頭株主だった東京急行電鉄は14日、保有していた日航株を全株売却したと発表している。日航は2008年3月に優先株1500億円を発行した。みずほコーポレート銀行や日本政策投資銀行、三井物産が各200億円を引き受けた。ほかに金融機関や商社、石油会社、UBSセキュリティーズ・ジャパンの計14社が優先株を買っており、現在の保有株数と優先株の評価よって損失処理が必要になる。 (Q)公開企業の場合の株式上場は東京証券取引所や大阪証券取引所は会社更生法申請を株式上場廃止基準の1つに挙げている。会社更生法を申請した企業は基本的に上場廃止になり、整理銘柄として1カ月間だけ売買が可能。東証や大証は、再建型の法的整理をした会社については100%減資しないことや時価総額基準(東証では再建計画開示の翌日から1カ月間の時価総額平均が10億円以上かつ末日の時価総額が10億円以上)をクリアした会社については上場を維持する規則を2003年5月8日に導入している(適用例はなし)。 (Q)日航の今後の手続は会社の財産を管理する管財人として弁護士、事実上のスポンサーである事業家管財人を裁判所が選定する。日航は片山英二弁護士と企業再生支援機構を選定した。基本的に現経営陣は総退陣するが、裁判所が選任すれば残れる。プレパッケージ型で固まっていた再生機構の出資や金融機関の債権放棄なども詳細が示された。この再生計画を実施しながら、更生計画を作成して債権者の同意と裁判所の認可を得ていくことになる。 更新日時: 2010/01/19 18:14 Bloomberg http://www.bloomberg.co.jp お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010.01.20 00:00:09
[株式投資] カテゴリの最新記事
|
|