カテゴリ:株式投資
日航だけじゃない年金不足、「日本株式会社」21兆円-会計基準も心配 1月21日(ブルームバーグ):19日破たんした日本航空の公的支援をめぐっては、OBなどへの企業年金減額が焦点となった。少子高齢化と相場低迷の中、年金問題は日航に限らず「日本株式会社」にとって、かねてからの難題。財務への影響も国際会計基準への移行で変わる可能性があり、退職債務の軽減や効率運用を図るケースが出てきている。 大和総研の集計によると、将来支払う年金や退職金の必要想定額から、企業側が運用する年金資産を差し引いた「積み立て不足」は昨年3月末時点、主要上場278社で計21兆4500億円。2008年秋のリーマン・ショックに伴う株安などによる運用難で年金資産が減少した結果、前年同期比50%増えた。 国内企業で最多の連結従業員40万人を抱える日立製作所の有価証券報告書によると、昨年3月末の連結ベースの積み立て不足は同29%増の1兆818億円。同時点での日航の不足額3315億円の3倍強にのぼる。日立に次いで32万人のグループ人員を抱えるトヨタ自動車は、同59%増の6538億円。 長期の年金における積み立て不足が毎年の財務に直接響くと断定できないため、現会計制度では、財務諸表にそのまま反映させる必要はない。大和総研によると、昨年3月末時点の不足額の4割に相当する計8兆5500億円が簿外債務として処理されている。 簿外債務が許される背景には不足額変動の大きさもある。米調査会社グリニッジ・アソシエーツによると、年金基金の積み立て比率は日本企業平均で昨年マイナス16%だったものの、07年はプラス3%と、「IT(情報技術)バブル崩壊」影響で悪化した03年のマイナス38%から4年でプラス圏まで浮上。大和総研の調べでも、02年3月末の主要企業の不足額合計37兆9600億円は昨年3月末の1.8倍にのぼっていた。 展望は厳しく ブルームバーグ・データによると、日本の総人口1億2600万人のうち、65歳以上の高齢者は今年、約23%を占める見込みで、米国の13%を大きく上回る。半面で15歳以下の若年層の比率は日本が12.5%に対し米19.4%。年金負担の支出はどうしても重くなる。 収入に当たる資産運用の面を見ると、日経平均株価は1989年末のピーク時から73%下落。10年物国債の金利も1.3%と、米国の3.7%を大きく下回る。日本企業には、市場動向に関わらず給付額を決める確定給付型の年金が依然多く、こうした点などから米タワーズ・ワトソンのコンサルタント、岡本洋一氏は日本企業が積み立て状況を今後改善させるのは「非常に難しくなるだろう」と語る。 また、01年の米エンロン破たん事件などと前後して欧米で浸透が進む「国際会計基準」では、年金運用の実態をバランスシートに強く反映させることを盛り込んでいる。日本企業でも今後導入が進むのは確実でその場合、財務面への影響は大きい。 NTT減額、ホンダ投資枠外し 米資産管理会社ステート・ストリート・グローバル・マーケッツ日本法人のジャスティン・バロー社長(東京駐在)は「今後数年間は会計制度変更が焦点になる」と指摘。財務悪化を回避するため日本企業が、年金支給の減額に動くだろうと予想している。 実際に国内通信最大手NTTは04年、現役の従業員が退職後に受け取る企業年金について、運用金利を国債利回りに連動させる形で実質減額。退職者向け年金についても減額を計画し退職者から必要な同意を取り付けた。しかし、厚生労働省がこれを認めない処分をしたため提訴。一審、二審で敗訴し、最高裁に上告中だ。 運用面では、ホンダが昨年4月に年金換算率を市場連動させたのに伴い投資戦略を柔軟化、日本株と海外株とに分けていた株式投資枠を外した。運用利回り改善を目指し、最適な配分を可能にした。 記事についての記者への問い合わせ先:東京 Jason Clenfield jclenfield@bloomberg.net 駅 義則 Yoshinori Eki yeki@bloomberg.net 更新日時: 2010/01/21 11:51 bloomberg http://www.bloomberg.co.jp お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010.01.24 15:00:45
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