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梨畑稲造日乗

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2010.04.22
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テーマ:Jazz(1977)
カテゴリ:Jazz


ジャズっぽい、ということだと、ピアノ、ウッドベース、ドラムスで構成されるピアノトリオだけれども、アルトサックス、エレクトリックベース、ドラムスのトリオだとどんな音、どんなインタープレイができるのか想像できますか?

ピアノトリオでは、なんといっても楽器の王様であるピアノの役割が重要です。まずピアノは12音が完全に鍵盤(キー)と一対一に対応しているのですから、無駄がありませんし、五線譜にもよくなじみます。作曲家がピアノで作曲するのもよくわかります。さらにメロディー、和音、リズムを、その楽器一台の機能性から導きだせます。クラシックの世界でも、ソロのために書かれた作品では、圧倒的にピアノ曲が多いのも、たいへん機能的で、多彩な表現が可能なこの万能楽器の完璧な機能性に負うところが大きいわけです。

しかし、別の見方をすれば、クラシックピアニストの中村紘子が`蛮族’と称してまで自嘲したピアノが、王様ではなく独裁者であったとするなら、あるいは何にでも口出ししてしまう、ある意味、ちょっと鬱陶しい存在であることも否めないよね、というのなら、ジャズのトリオのほかの形を考えたときに、まったく違う性質を持った音楽ができてくるのではないでしょうか? 

ピアノを除いてしまったら、ジャズっぽさ、`大人のおしゃれな音楽’の代表のようなピアノトリオは存在しなくなり、ピアノの代わりに、たとえば、この`Three Guys’のようにアルトサックスが入ったら、音楽でどういう言葉を交わすのでしょうか?

さて、理屈ではそうであっても、簡単にうまくいくわけではありません。ふつうの、楽器をうまく演奏できるだけの人なら、ピアノのように和音を豊かに響かせることのできる楽器の特長に拮抗しようと、自分の楽器の存在を強調したり、ほかの楽器もピアノだったら埋められるはずの隙間がすぐに空いてしまうので、何とか埋めようとついつい音をくりだそうとしたりするでしょう。

ところで、このトリオのアルトサックスはLee Konitz。クールジャズと言われるムーブメントで頭角を現した白人ジャズマンです。古くはMiles DavisのBirth of the Coolにも参加し、Gerry Mulliganがホーンアレンジメントを手がけた、テンションとシンコペーションでくらくらする`Israel’でも、マイナーブルースのコード進行なのに平行調のメジャー音階を使ってしらっと才気ばしったソロを聴かせています。

ドラムはPaul Motian。ピアノトリオの最高峰としていまでも信奉者の多いBill Evansトリオのドラマーです。なにしろBill Evansトリオの黄金期は、ジャズにおけるベース奏法と役割の常識を覆したScott LaFaroも在籍していた(自動車事故で不慮の死を遂げるまで)わけでして、そのふたりとともに新たなピアノトリオ像を作り上げてしまった類まれなドラマーなのです。
パイオニアというのは、後の世代に大きく花開く要素をすべて含んでいるものですが、このトリオがもたらしたインタープレイで、トリオのそれぞれの楽器の音が対等で、従来のピアノだけが引き立つピアノトリオとは異なる楽器どうしの会話とか対話とか議論とかの質が一気に高まったことは間違いありません。
とはいっても、三人がベストだと思います。

そして、ベースのSteve Swallow。ドラムのPaul Motianが`引き算するドラマー’と言われるように、ジャズの対話に音を加えていこうとする従来の考え方から、相手の音に耳を傾け、要らない音は何か、を追求したのであれば、Steve Swallowは、ベースラインの鉄則である絶えずコード進行とリズムをキープする役割に、和音楽器としての役割を加えました。また、時折リード楽器にハーモニーを添えるように歌ったりもします。Steve Swallowはセミアコースティックのベースギターをよく使いますから、ダブルベースの音よりも軽く、とはいえソリッドボディーのエレクトリックベースのように電気的な増幅だけで太った音でもありません。

いちど彼らの音を聞いてしまうと、ここにピアノを加えることはできないことがよくわかります。想像すらできないくらいです。そもそもピアノなど入れるつもりもなかったのですから、こんな仮定そのものがナンセンスなのですが、ジャズのトリオの緊密な音世界は弦楽クァルテットにも比されるくらい対話性が高いのですね。
つまりこれで十分な、充実した音楽であること、そしてまさしくジャズであることを見事に聴かせてくれます。
そしてそこに生まれた音は、隙間を聴かせる音楽、引き算の音楽になりました。





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最終更新日  2010.04.23 02:19:09
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