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いつか全て捨てようと思って暮らしてます

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2012年03月23日
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大学時代の先生の本。

大変優秀で頭のキレる方なんですが、いかんせんバリ左翼、ありがち夢想派共産主義マンセー戦後民主主義の申し子、

「日本は悪」

「権力は敵」

「近代は人間にとって不幸な時代」

というのを最高に小難しい言い回しで表現します。

(自分の中で)答えの出ている方程式に、とにかく露伴を当て嵌めて語るので、

ある意味斬新な露伴論が紡がれます。


ここでちょっと思い出話、てか、研究界の裏話。

近現代文学の研究者というのは、知識人の中でも最左翼(←笑)に位置する人種です。

常に自己批判を迫られ、かつ、生徒にもそれを求めます。

研究対象ひとつ決めるにも、“好きだから”では許して貰えない。

何故今その作家か?

今までされた評論を否定し、新たな像を構築出来るか?

そこに意味はあるのか?

連合赤軍かよ!と突っ込みたくなるくらいの総括を経て、研究対象の選択が行われます。

ぶっちゃけると、自分の思想信条を語るに最も都合の良い対象を大根かジャガ芋のようにチョイスするだけです。

そこに、愛も美学もありません。

政治的位置、立場、少しでも左なスタンスにいる作家が望ましい。ただし、プロレタリア作家のような、あからさまなのはいただけません。

時代に迎合した発言をしたり、戦時色の強い作品を残した作家も敬遠されます。

あくまで、一見ノンポリを装いつつ、その実、時の権力に批判的であった、戦っていたみたいな“物語”を持っている作家がおいしいし、カッコイイのです。

戦時中、政府に完全協力していた折口信夫なんかは偶像としてこてんぱんに否定されるべきだし、

天皇陛下の御前で直立不動で動け無かった内田百聞などは、語る価値が無いものとして扱われます。

取り上げられない作家は、消えて行きます。

左翼的な思想を持ち、左翼的な作品を書く作家だけが批評界で取り上げられ、持て囃され、

その専門家が研究界の中心を、担っていきます。


この著者の最大の美点は、“小説が読める人”だと言う事。

なので、ラストの『幻談』の読解などはやはり見事。

優秀な人なのです。

もったいないなと思う反面、余計なお世話でありました。





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最終更新日  2012年03月23日 14時57分51秒


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