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■■『メルヘン論』 11月15日、今年最後となる「東京ホリスティック教育研究会」が開催され、志賀くにみつ先生の「メルヘンの叡智」と題された発表がありました。 志賀くにみつ先生は、『はじめてのシュタイナー 人生のヒント』(小学館)の著者でもあり、各地でシュタイナーやメルヘンについての講演などをなさっています。 シュタイナー幼児教育現場ではおなじみのメルヘン。 目に見えない人生の基準…、つまり精神の世界のあれこれを伝えようと作られた物語がメルヘンの起源なのだとか。 ヨーロッパの場合、15、6世紀ごろまでは、吟遊詩人と呼ばれる人々が語っていたお話がメルヘンのもとになっており、後に、彼らから聞いた話が家庭の中で語り継がれていった、ということです。 言語学者であったグリム兄弟が19世紀に集めたものが、現在『グリム童話』として親しまれているわけですが、この兄弟は、何と4、50年もの長期にわたって童話の編集にあたっていたのだそうです。童話の数はちょうど200。これだけのお話を聞き取ってまとめ、さらに言語学者としての仕事もこなしていたとは…、おそるべしグリム兄弟! ちなみに、グリム兄弟の集めた200という童話の数には、特に意味はないそうです。何らかの意図があって200にしたのでは? と思われたのですが、先生いわく「たまたまでしょう(笑)」とのことでした。 * * * 大人は物語を、その文字に表現されるままに受け取ってしまいがちですが、子どもの場合にはそうしたことはありません。 子どもたちは、物語の背後に隠されたメッセージを無意識に感じ取っており、それにより、後の人生で数々訪れる危機を乗り越える基礎が作られていくのだそうです。メルヘンによって内面の力をつけていく、というわけですね。 たとえば大人は「玉の輿物語?」と誤解してしまいそうな『灰かぶり(シンデレラ)』も、次のような解釈が可能なのだとのご説明がありました。 ◇シンデレラ :ずっと持っていた純粋な自分 ◇実の母 :目に見えない世界の援助者 ◇まま母と姉たち:自分を生きていない状態 ◇王子 :理想を求める自分 注意しなければいけないのは、この解釈がすべてではない、ということです。 違った視点からの解釈も様々可能ですし、志賀先生ご自身も、この解釈が学問的に“正しい”かどうかは「わからない」とおっしゃっていました。* また、こうした解釈については、大人が自覚していればよいことで、子どもにその説明をする必要はまったくありません。 (*学問が違えばその解釈が異なるのも当然のことで、たとえばフェミニズムの視点から見ればどうか、とか、歴史学の観点からはどうか、などということはそれぞれまったく違った次元の議論になりますので、くれぐれもご注意くださいね。) それでも、大人の私たちがこの解釈を念頭に置きつつ、改めて『シンデレラ』を読み返してみますと、そこに様々な世界観が展開されるのが見えてきませんか。 さらに、自分なりの解釈を込めながら、新しい世界を想像・創造することもできそうです。 * * * 成長して困難に出合い、自殺という選択にまで追い詰められてしまった場合、子ども時代にメルヘンを聞いていた人は、その実行を思いとどまる場合が多い、という調査結果もあるのだそうです。 また、子ども時代にその恩恵にあずかることがなかったとしても、何歳になっていてもそれを聞く効果は得られるのではないか、とのこと。 具体的にあちらの世界のお話をするということではなく、メルヘンという形で無意識のうちに、魂の故郷と触れ合う機会を作ることができるのですね。 もちろん意識のはっきりしている大人には、あちらの世界の状況を具体的に語ってもいいのかもしれませんが…。 誰の心にも負の部分は存在するのもですが、そうであっても、目に見えない世界があると意識し始めたら、人をいじめたり、裏切ったり、あるいは、もろもろの犯罪行為をしようという気持ちはなくなるのではないか、と感じます。 そして、自分自身を殺そう、とも思わなくなるはず…。 * * * メルヘンが語りかける「叡智」に、私たちはもっともっと耳をかたむけなければならないのかもしれませんね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006/11/21 10:24:48 AM
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