イチゴの季節のヤドカリ生活
ぼくの住むあたりには、イチゴを育てているビニールハウスがたくさんある。最近でこそイチゴは年中出回って旬がなくなり、一番消費されるのはクリスマスのころだとか。でもやっぱり、イチゴの季節は“今”である。ぼくは『小さな恋の物語』という漫画が好きで、確か第20集目くらいまでは発売即購入していた。『小さな恋のものがたり』第1集(みつはしちかこ)この主人公「チッチ」が大のイチゴ好きで、この時期になるとイチゴイチゴと騒ぎ出す。その相手を恋人らしき男の子「サリー」が「しょうがないなぁ」というカンジで相手をしてあげるのだ。「苺のように小さき人」という呼び方をしていたようにも思う(スミレだったかも?)。いまや“あまおう”という、オカのサザエかと思えるほどの巨大かつ激甘品種も登場しているから、イチゴが小ささの代名詞とはもう言えないのかもしれない。が、「あまおう」、ぼくはあまり好きじゃない。イチゴは「とよのか」または「さちのか」だ。ま、そんなことはどうでもいいけど。はるかに遠き高校時代、この『小さな恋の物語』を当時の最新刊までセットにして女の子に貸してあげたことがある。なんだか男性と女性の行動が逆のようにも思うのだが、ま、ぼくはそんなほんわかぼんやりした高校生だったわけだ。あの女の子も、いつの間にかしっかりばりばり、社会人となり、主婦となり。そして、今も元気に駆け回っているようだ。高校時代、3階の窓から見下ろしたグラウンドにも春の陽差しが降りそそいでいたっけ。明るい窓の外を見やりながら、そんなことを思う。「想ひ出は見えんで」繁忙期に入った今や入り口を閉じたヤドカリ如き生活。一歩も家を出ず、二階から降りるのも食事とトイレだけ。あぁ、自由になりたいっ!「チッチ」「サリー」・・・・・ネーミングに太古の昔を感じるが、たぶん、今も変わらず「のっぽ」と「おちび」の高校生として現役だと思う。久々に読んでみるかな。しかし、書店で買うのは、もう、ちょっと恥ずかしいかも。