カニさん。
近くに住むおいっ子がカニさんを拾ってきた。裏のミカン山に近い田んぼの側溝でガサゴソしてたという。でかい~!足の先から先まで、30センチくらいあるんじゃなかろうか? これで海のカニじゃなく、山のカニ。お山の主かしら?こんなヤツがのしのし歩いていると思うと、このあたりもなかなか捨てたもんじゃないという感じだな~。不敵なツラ構え。写真ではよく見えないけど、口からぶくぶく、泡を出してる。その音が部屋に響く。お~、怒ってらっしゃる!豊かなツメ毛。両方のツメには、お父さんもうらやましい豊かな毛がふさふさ。母「これって毛ガニ?」 あんた、見たままじゃん。「なんやねん」いえ、なんにも・・・・。自宅のデジカメが壊れていたおいっ子は、写真を撮って欲しくて我が家までこのカニさんを持ってきたのだった。お袋もまじえた興奮の撮影会が終了したあと、おいっ子は母親とカニさんを山へ放しに行った。巣に帰った山の主は、この日の出来事を子々孫々まで伝えるであろう。「不遜な人間ヤカラが見せもんにしよった」と。カニさん、怒らないでね~。ぼくの住む町は、世帯数=35,549世帯、人口=94,825人(平成17年8月31日現在)という、決して小さな山奥の集落ではない。すぐ近くに鹿児島本線が走り、その向こうには車がひっきりなしに行き交う国道3号線がある。が、しかし、数年に一回は必ず、「野良仕事をしていた人がイノシシにはねられた」というニュースが流れる。それを聞くと友人たちは笑い転げるが、はねられた人は瀕死の重傷を負い、ときに亡くなる。笑い事ではない。でも、やっぱりどこかユーモラス。数年前はウリ坊を連れた母イノシシが住宅街を縦横無尽に駆け回り、鉄砲を持った猟師に追われるという騒ぎが起こった。その日、ちょうど某局で仕事をしていたぼくは、ニュースのカメラマンが撮ってきた「射殺されたイノシシ」の映像を見て、「なんとまぁ気の毒に、で、あとは鍋にしたのかな?」と思ってしまった。・・・・・ワシって、ひどいヤツ。この日、銃火をかいくぐり生き延びた残党は、国道を、JRを越え、ぼくの家の近くの山に逃げ込んだという。その山が、おいっ子がカニさんを捕獲した山らしい。今ごろ、カニさんは、傷跡を残したイノシシと、ぷんぷんぶくぶく、けんけんごうごう、人間を糾弾してるかもしれない。う~ん、自然って、エエなぁ。