伝統的な西洋医学は如何にしてウエルネス拒否したか?(2)
その後、20世紀に入り、科学上の発見により、病気と老化が、食事と運動に関連づけられた。1908年、ポーランド生まれの生化学者カシミール・フランクは生命の維持に不可欠な、アンモニア主体の四つの物質を発見した。それは「バイタル(生命の)アミン(アンモニア化合物)」別名「ビタミン」と名付けられた。港湾労働者をはじめとす肉体労働者を対象とした研究では、運動が一般的な健康や慢性病に良いことが明らかになった。伝統的な西洋医学は如何にしてウエルネス拒否したか?しかし、多くの場合、こうした今では通説であるウエルネス上の発見は、西洋の医学界に拒絶された。19世紀より以前、医師達は数少ない薬を処方し、試行錯誤を通じてどの薬がどの病気に効くかを観察してきた。医学の知識はこうして長年にわたって蓄積され、時には文化の壁を超えて広まった。しかし、ある薬や治療法が効いても、医師達には、何故効くのかが判らなかった。感染を説明する基礎理論と、その理論に基づく予防接種や抗生物質の誕生は、複合光学顕微鏡の普及を待たなければならなかった。複合光学顕微鏡は17世紀初めに発明されたが、藤生舌のは19世紀後半になってからだった。複合光学顕微鏡によって、細胞と細菌と発見され、科学者たちはそれがどんな作用をするのかを実際に目で見ることが出来るようになったのである。この成功に力を得て、また、自分たちを呪術を使う偽医者と区別するため、西洋医学は大胆にも、当時の技術ではその作用が説明できなかった古来の治療法や薬を否定し始めた。ところで、生物学の基本単位である細胞は直径およそ10ミクロンである。一本の針先を覆うのにざっと10000個の細胞が必要な計算になる。光学顕微鏡は物理的な理由から、光の波長の半分より近い距離は解像できないのである。ところが、細菌細胞の直径は、可視光の波長の10分の一しかない。今日、運動・ビタミン・ミネラル・サプリメントによる重要な生化学作用は、細胞レベルでなく、分子レベルで起きることが判っている。しかし、各細胞は何兆個もの分子からなるため、これらの作用は光学顕微鏡でも見ることが出来ない。比較的最近になって電子顕微鏡が発明されるまで、科学者たちは細胞の分子構造もその動きも研究できなかった。とはいえ、現在でも電子顕微鏡はまだ、1800年代の光学顕微鏡ほど普及していない。そのため、次のようなことが起こっている。今日でも、西洋の医学教育の多くは、ビタミンやミネラル、天然のサプリメントの栄養や効能の重要性を事実上無視している。