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2006年11月06日
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昭和の激動、見せ物小屋の出し物は、ヘビ女のおミネおねいさんがヘビをかじって吐き出すという大技と、こびとのミーチャンがフラダンスの衣装で踊りながら切り紙細工をやって藤娘を演じるという変則曲芸技と、二つクビの牛の赤ちゃんの死骸を見せるというねじ込み技の3部構成で終わった。

のべ30分もあったのだろうか。子供にとっての30分というのは結構長い。
なんだかんだ言って、こびとのミーちゃんの盆踊りが一番ボリュームがあったようだった。
「お題は見てのお帰り」と言われて、なぜか払わなくてもいいだろうと甘い考えを持って小屋に入った私であったが、みんな入り口とは逆の出口(ま、出口は普通入り口の逆のことが多いが)から出ていきながら素直に30円払っていくのを見て、さすがの無知な子供であった私も不安のどん底に落ちる気分がしてきた。
たとえば、無銭飲食みたいなもんで、警察に突き出されてしまうのでは、という不安も覚えたものである。

テントのはじっこの布の壁を見ても地面とは石が置かれていて隙間ができないようにされていた。そこから逃げることはもはや不可能であった。
だんだんと人が減っていき、あと少しで「泣いてごまかそうか」という変な理屈をつけて、泣きたくなってきた情けない私を救ってくれたのは、まあ、想像がついただろうけど、例の浴衣姿の二人のお姉さんたちだった。
「帰らないの?」
「うーん・・・」
「まだ見るの?」
ちらっと、お金入れのかごを持って出口に立っている、こびとのミーちゃんがこちらに目線を向けた。
お姉さんたちは、すでに、2度目だということで、目をつけられていたのだろう。
ヘビ女おミネおねいさんはいつの間にか控えの方に消えていた。
「はーい、次のお客さんが待ってますからねー」とこびとのミーちゃんに、はっきり言われてしまった。もしかして、このままいて、次の公演が始まるとき飛び出せば、まだ見てないからお金いらないでしょ、と言えたかもしれないという悪知恵があったのだが、ダメそうであった。
「さあ、出よう!」お姉さんが私の手を握った。
「お金がないの・・」と、ボク。お姉さんに手を握られたこととお金がないことで顔は真っ赤になっていたに違いない。頭がかっと熱くなっていた。
「じゃ、いいよ!」と、お姉さんが財布から30円出してくれた。「はい、この子の分もね」
「ありがとーございまーす!」ミーちゃんが笑顔で、言ってくれた。
「さ、行くよ」お姉さんは私の手を引いてくれた。

お姉さんは天使だ!!
見ず知らずのガキに、まず入場したときから面倒を見てくれて、3部構成のイベントの度に、解説をしてくれた。切り紙細工はもらおうとしてくれたが、タッチの差だった。そして、帰るときにも、私のことを気にかけていてくれたのだった。実はもしかすると、同じ小学校で、私の顔を知っていたのかもしれないが、定かではない。
(えーとですね。考えてみると、私、ついこの間やせていた20代まではなぜか年上にはもてていたんですね。年上と言っても、田舎の方に仕事に行くと、「お兄ちゃん、いい男だねえ」てなノリでおばあさんにからかわれていただけなのだろうけど、まあ、相手にされないよりかはマシか・・(そうか?)。よく女の子にも間違われ、便所にはいると掃除のおばさんに、「女の子はあっちだよ」と言われたこともあります。今見ても、可愛い頃だったと思います。そんな子供だから、上級生のお姉さんは可愛い弟みたいだと思ってくれたのかもしれないと、今では勝手に解釈しているんですが、まあ、プロフィルの顔を見て、この場面を想像していただけばどんぴしゃりだと思います)

でも、照れ屋で決断力の鈍い当時のボクちゃんだから、はっきりと「ありがとう」とお姉さんに言えなかった。
なぜだろう。
お姉さんは鮮やかな浴衣姿だし、確か顔もきれいだったと思うんだけど、私の世代というのは、女の子と話をしていると「やーい、おまえ、女が好きなんだろう!」とからかわれる世界だった。
どうしようかと迷っていると、お姉さん二人は、なぜか私のほっぺたをつねっていた。
「柔らかいねえ」たぶん、お姉さんといっても小学生6年くらいだから、彼女ら自身のほっぺただって柔らかかったのだ。でも、赤ん坊みたいな私のほっぺたを触って、なんか満足したのだろうか、最後に私の頭をなでて「じゃあね!」といって、お祭りの喧噪の中にお姉さんたちは紛れ込んでいった。

小屋に入るときに夕暮れだった神社の空は、もう暗かった。しかし、地面では様々な出店の電灯がつき、昼間のように明るく見えた。お神楽堂の踊りが始まって境内はますますにぎやかさも増していた。

これで良かったのかな、と判断が付かずに、私は、呆然とお姉さんを見送り、彼女らの姿が見えなくなると、早く彼女らのいるところから離れたいと思い、かけだした。なぜそんな気持ちだったのかわからないが、きっと、お姉さんにまたほっぺたを触られるのが恥ずかしかったからかもしれない。「ありがとう」と言えなかった自分が恥ずかしかったのかもしれない。

見せ物小屋では、またおじさんの口上が始まっていた。
先ほどよりも、もっと入り口に集まった人の数は多かった。
帰り道で、浴衣姿のきれいなお姉さんと一緒に見せ物小屋を見たのが甘酸っぱい思い出に変わっていった。


ま、家に帰って、よそのお姉さんに見せ物小屋をおごってもらったことを話したら、こっぴどくしかられたのは、言うまでもない。

その夜、
親は、私に30円を渡した。
「明日、お姉さんに、返しなさい」

とは言っても、果たして、明日もお姉さんに会えるのだろうか!?


(つづくーーー!!)

続きは、Webで!!!

(って、当たり前だろう。そりゃ・・・)



衝撃の真実!!!


そして、現在・・・
21世紀、ヘビ女との再会が待っていた!!!!






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Last updated  2006年11月07日 10時47分36秒
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