華麗なる変身 -- 決断の時14
朝の通勤電車には、様々な風景がある。 それは、決断の時でもあるのだ。 時々朝の通勤ラッシュからかけ離れた時間に出勤する時の電車は、空いている。 あんまり前に人が立たないから、向かいの席の人がよく見える。 前にも、そういう時に短いスカートの女性が前に座っている時の出来事を書いたが、まあ、あれは、うとうとと寝てしまう人の場合である。ばっちり目を覚ましている女性が座っている・・・ばっちり目を覚まして何をやっているかと言うと・・お化粧なのである。(じつは、これも、「決断の時」であつかっているのだが、あのときは、別のテーマであった)いや、昔、若い頃は、あんまり化粧している女性は好みじゃなかったんだが、歳とってくるとどうでもよくなって、まあ、きれいならいいじゃん!という見方に変わってきた。ちょっと前までは、さすがに、少しは恥ずかしいのか、アイラインを引いてお終いにする光景はよく見られた。たぶん、基礎化粧をしてから時間がないから家を出てきて、電車の中で仕上げをしていたのだろう。しかし、いまの子は、ぎりぎりまで家で寝ていて、化粧をする時間も惜しいくらい寝てて、朝飯も食わずに、スッピンで飛び出して、電車に滑り込み、という感じなのである。かくして、電車の中は、フルコースのメークアップルームと化す。しかし、最初はすっぴんで、な、なんなんだあ!!??こいつは!!という女の子が、結構目元ぱっちり、唇うるうるみたいな女性に変身するさまは、飽きれるというより、むしろ賞賛に値する。もちろん、そのままでもこぎれいな人が、化粧して、それなりによりきれいになるケースもままある。しかし、本当は、女性は化粧するさまは、他人に見せないものだったはず。化けるところを人に見られては、化ける意味がない。まあ、電車の中、真ん前に見ず知らずのデブ・チビ・ハゲ・メガネのオッサンが座っていても、もう二度とそいつに会うことも無いだろうと、見せるべきではない化ける自分をさらけ出しても、気にしない気にしない!のノリなのである。まあ、たとえば、ワシが、ハゲを隠すために、アデランスを買って、朝、家で装着する時間がないから、電車に乗って、衆人環視の中、ぱちん!と、鬘を装着する・・向かいに座っているOLは大驚き。斜め前に座っている若いサラリーマンは、笑いをこらえている。などという、そんな光景が展開されそうな、瞬間である。しかし、それは、やはり、恥ずかしいことなのではないだろうか?もし、私が目撃したら、もちろん、この日記で笑いのネタにするしかない。通勤ではない、ある日のこと、ある日の昼下がり、ガラガラに電車は空いていた。と、途中の駅で、すらっとスタイルのいい人が電車に乗ってきた。ジーパンがぴっちり、お尻がぷりぷりである。しかし、顔はのべたん。小さい目で眉毛も薄く、鼻は高くもなく、特徴のない、顔立ちである。私の斜め前の席に座った。そして、肩に下げていたルイ・ヴイトンのバッグから、、なんと高級化粧道具ボックスを出した。おお!周りの人も驚く。ケースの蓋を開けると、鏡になっているのだろう、それを見ながら、おもむろに化粧を始めた!!こりゃ、見物だよ!まずはファンデーション。ぺたぺたと上手に塗っていく。ずいぶんと肌つやがさっきよりよくなってきた。感心する!そして、(順番はうる覚えなんだが)アイシャドウ、ノーズシャドウを入れていく。マスカラまで、ご丁寧にさらっと済ませていく。何と、驚くなかれ!!カラーコンタクトを入れた!!ここまでやるのか!!それも電車の中で!!最後は口紅。んぱ!んぱ!と唇を整えて、仕上がる。この間、およそ5分!私を含めて、まあ比較的空いている車内のお客も、唖然呆然としている。見事に変身した。まあ、美女の部類に入るくらいには仕上がっている。職人わざと言っても過言ではない!!しかし、その人、男なんだよね!!!!うあああーーーーーーー!!!おえーおえー!!