カテゴリ:芝居
三浦洋一、風間杜夫以来、たくさんの木村伝兵衛を観てきましたが、初めてですなー、ひとりきりになった捜査室でお掃除していて輝く伝兵衛ってのは。
「熱海殺人事件」を今までに上演した劇団って、世の中にはたくさんあって、もろコピーっていうのでは飽き足らず、新しい解釈でやってみることもあるとは思うんだけど、でもそういうときにもきっと、このラインは崩せないよなーとかいうのがあるんじゃないかと思うのね。名作であるがゆえに変えちゃいかんだろ、ここは大事だろ、みたいなのが。 ところが本家はすごい。惜しげもなくスパっとなくなる場面もあれば、全然違う意味をもつ場面になってたりと、どこよりもアバンギャルド。 今回は水野が捜査室を出ていく場面がすごいスピード感。 パピヨンのテーマ短かっ。終わりの方の転調したところから流れて、すぐ止まり、伝兵衛が客席を舐めまわすようなシーンなどはなく、すぐに伝兵衛の後ろに照明がガーっと下りてきて、去り際に水野がさっと手を上げると照明がつく。この場面カンペキに水野が主役。硬質な黒谷さんの持ち味を生かし、凛々しくカッコよく見せていた。 そしてエンディング、ひとりになった石原伝兵衛は散らかったものを片づけ、机の上を拭き、ふと傍らの水野の机に目をやり、しばらく見つめたのち、席に座って、水野の真似なんかしながら、楽しかった日々を思い出す・・・およそありえない伝兵衛像ではありますが、しかしこの場面あってこその石原伝兵衛でありました。 バイオレンスやらエロやらを足すことで魅力的になる役者もいれば、片づけさせたりモップをもたせたり、そういう瑣末な日常生活の感じを足すことで輝きを増すってこともあるのだねぇ。人間味のある、本当は優しくていい人の伝兵衛ってのを見せてくれました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005.03.20 02:42:24
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