カテゴリ:劇
日テレ開局55周年記念番組と銘打って放送された『阿久悠物語』は面白かった!
阿久悠さんのことは、以前「墨塗り教科書」のことで記事にしたことがある。 2000年に20世紀が終るにあたって世を挙げて20世紀の重大事件についてのアンケートが知名人に対してさかんに行われたんだよね。 そのときに阿久さんがいの一番にあげたのが「墨塗り教科書」だったんだ。 みんなが人が死ぬ事件(戦争とか災害)ばかりを挙げてたなかで阿久さんが「墨塗り教科書」といういわば精神が殺されるような出来事のことを挙げられたことがめちゃ印象に残ったんだよね。 1945年に日本が戦争に負けて、それまでの天皇中心の軍国主義から民主主義へと価値観が逆転してしまい、学校の教科書の内容の不都合な部分がすべて墨で塗りつぶされてしまったって出来事なんだ。 番組の冒頭で終戦のときに少年阿久悠さんが教科書に墨を塗るシーンが出てきた。 僕は阿久さんの小説やエッセイを読んだことがないんだけど、自身の本の中でも墨塗り教科書のことを書いてられるのかもしれないな。 このドラマを見て、大げさかもしれないけど阿久さんという人が1970年代1980年代の日本文化を一人で作ったみたいに感じたよ。 阿久さんは”空中に散らばっている言葉をかき集めただけだ”みたいなことを言ってたけど、僕は違うと思った。 あれは、やっぱり天才阿久悠が一人で何も無いところから作り上げた文化だと思った。 阿久さんは、その後の日本は、歌から詞の言葉の意味が重要でなくなっていったって嘆いてた。 ”意味の分からない英語をまぶした詩をアーティストが自分で書くから、時代を歌でとらえられなくなってるんだ”とも言ってた。 でもね、これも僕には違うように思ったんだ。 阿久さんが一人で作りあげ、阿久さんの向かう方向に日本人みんなが向いていったってことに終わりが来ただけじゃないのかと思った。 意味の分からない英語をまぶした詩こそが、その時代を映してたんじゃないか、なんて思った。 日本人が普通に受け入れてしまった墨塗り教科書を、20世紀の一番の事件だと子供の阿久さんは感じたんだよね。 ちょっと意地悪く考えたら、意味も分からなくまぶした英語を、今度は阿久さんが墨で塗りつぶしたかったんじゃないだろうか。 混沌の中から文化が生まれるときって、その前の世代の人には理解できない馬鹿馬鹿しいものに見えるかもしれない。 天才阿久さんでも、Jポップという日本の新しい文化を理解して認めることが出来なかったんじゃないだろうか、なんてふうに思った。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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