テーマ:楽器について♪(3648)
カテゴリ:ピアノ雑感
「僕はピアノの調律師です。」と言うと「調律師さんは耳がよくないといけないんでしょうね」と聞かれることが多い。
実際、調律師に良い耳は不可欠である。僕の調律学校時代はヘッドフォンで音楽を聴くことが禁じられていた。違反した同期生が実際罰として外出禁止をくらったこともあった。(今のアカデミーはそれほど厳しくないらしいが) だが一口に「耳の良さ」と言ってもいろいろある。 音楽的な音感には「絶対音感」と「相対音感」がある。簡単に言うと前者はある音を聞いてそれが音階上のどの音か(ド、レ、ミなど)識別できる能力、後者は音程の感覚である。例えばラの音を出せばレの音がわかる、また5度上の音が歌えるというのは相対音感である。 調律に必要なのはどちらの音感か。 実はどちらでもない。調律には絶対音感も相対音感も使わない。知覚心理学では音のピッチ変化の知覚閾値をおおよそΔf = 0,02fとしている。800Hzの音が801,6Hzまで上がってようやく音程が変わったと認識できるのというのである(演奏家はもっと細かい閾下知覚をしていると言えよう)。 これはだいたい半音の50分の1で約2セントになるが、ピアノの調律、特に中音域で2セントも誤差が出るようではいけない。調律師は音波の干渉を聞くので0,2セントの誤差でも聞き分ける。 調律に必要なのは倍音を聞き分ける能力である。ピアノの音にはいろいろな倍音、上音が含まれている。2つの音を同時に鳴らすと色々な唸りが聞こえてくる。調律を勉強したての頃はそれらに惑わされて聞くべき音が聞こえない。それが訓練されてやがて必要な倍音だけが聞き分けられるようになる。 「整音」はまた別の耳が必要である。端的に言えば「音色」への感受性が頼りなのだ。良い音色の基準は自分の主観であり、それでいて仕事には客観性を持たせないといけない。その辺が「整音」の難しさであり、また面白さでもある。 経過時間 1月 11日 6時間 34分経過 吸った煙草 0本 吸わなかった煙草 422本 浮いた煙草代 84ユーロ 延びた寿命 1日 11時間 10分 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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